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「自然界きびしすぎ,ヒトに生まれて良かった」と思った本

『「協力」の生命全史: 進化と淘汰がもたらした集団の力学』という本を読んだ.協力という言葉に対しポジティブなイメージを持っており,気持ちの良い読書体験を期待して読んだが,大いに裏切られた.この有限な地球で生存・繁殖をする以上,競争は避けられないことを数々の事例により徹底的に提示された.

本書は,様々な生物(ヒトも含む)における協力のかたちを紹介している.そして,その協力という形態が,生存・繁殖にどのように有利に働き,時の試練に打ち勝ってきたのかを分析・解釈している.この分析・解釈は「利己的な遺伝子」という観点でなされている.この観点には,不愉快さを感じたが,とても説得力があり,納得するしかなかった.「生存・繁殖」してきた遺伝子は利己的に振る舞っているようにしか見えない.

協力するか,しないのか.「山分け」か「総取り」か.これらの判断に関わる要素として,以下の項目がとりあげられており参考になった.
・「見返り」への期待(一度に少し与え,相手の見返りをもらってから,次へが,生物たちの定番)
・「相互依存」の関係(友人関係のように,見返りを期待していない行動を生む)
・「ただ乗り」と罰(罰でただ乗りは減るが,当事者どうしで裁くと報復行動を生む危険あり)
・「評判」と社会的比較(評判には,気前の良さが大事だが,自分でアピールすると逆効果.また,気前が良すぎると迫害される危険あり)
・協力を有益とみるか,有害とみるかは,どの立場で見るかによる.

泥臭い調査研究の苦労話もあり,おおいに楽しめた.ポピュラーサイエンスの本が好きな人にはおすすめ.

おわりに

本書を読んで,ヒトってものすごい平和的な生き物なんだと思った.他の生き物たちが,ここまで利己的で暴力的だとは思っていなかった.もう少し利他性があるものかと.

本書には,ヒトがどのように利他性を取得したのかについては書かれていなかった.またイヌとかウマとか,利他性がありそうな生き物も,取り扱われていなかった.ここらへんは,「家畜化」に関する本に書いてありそうなので,読んでみようかな.オオカミがイヌになったように,利己的な生き物でも利他的にすることができるのだとしたら,利他的なヒトも利己的なチンパンジーに戻すこともできちゃうんだろうな.

以上です.最後まで読んでくれてありがとう.

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