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物を拡大すると触覚の感度が高まる

今日は『触楽入門 -はじめて世界に触れるときのように-』(著:テクタイル)から「虫眼鏡で拡大しながら触ってみよう」を読みました。

昨日は「視覚情報を遮断すると触覚はどのように変化するか?」という問いにふれました。暗闇など視覚情報を取得できない状況下では、自分を取り巻く環境を知覚する上で触覚が重要な役割をはたします。実際に触れてみて、自分の頭の中でそれが何かをイメージしていくわけです。

視覚情報は「全体から部分」へと意識が移るのに対して、触覚情報は「部分から全体」へと意識が移っていく。物事の細部を解像度高く捉える上で触覚が果たす役割は大きいということです。

さて、今回読んだ範囲では「物を拡大すると触覚はどのように変化するか?」というテーマが展開されています。

著者は「物を拡大しながら触れると、触覚の感度が上がる」と述べます。

 物を拡大してみせるレンズの発明は、人間の感性の歴史において革命的な出来事でした。人の目を超える、鮮烈な視界が発見されたのです。そのクローズアップされたイメージは、私たちの目が捉えたものよりリアルで正しいものとして、人間の知覚世界を塗り替えてしまいました。(中略) 目で見ながら触れること、しかもクローズアップされたものを見ながら触れることは、触覚の感度を上げる効果を持っています。

レンズ、虫眼鏡、顕微鏡。微細な物を拡大する技術の発明により、それまで捉えることのできなかった世界をありありと捉えることができるようになりました。一度でも解像度高く細部まで見えてしまうと、それ以前の状態には戻れなくなってしまうように思います。

 イチゴには無数の「毛」が生えている - 私は子供の頃に虫眼鏡でイチゴを観察してこのことを知って、しばらくの間、イチゴが食べられなくなりました。口の中に含んだ瞬間に、その毛深さが想像されて、どうにも妙な気分になったからです。結局、イチゴのおいしさには勝てなかったのですが。

著者のエピソードも然りですが、それまでは目をつぶっていた、想像力で補っていた部分が生々しく見えてしまうのは、必ずしも良いことばかりではないのかもしれません。

今回の話は「物事の解像度をどこまで高めるべきか?」という問いを考えるきっかけにもなりました。

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