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触れること・思い出

今日は『触楽入門 -はじめて世界に触れるときのように-』(著:テクタイル)から「「触れる」を知ってみませんか」を読みました。

今回は著者の研究概要やモチベーションが語られています。

 人間にとって必要不可欠な感覚。気持ちに直接作用する感覚。与えることも受けることもできる感覚。私はこんな触覚の魅力に憑りつかれ、研究を続けてきました。

「触覚ってどんな感覚?」と問われたらどのように答えるでしょうか。

ふわふわ。ゴツゴツ。ツルツルスベスベ。ぬるぬる。ザクザク。シャリシャリ。ひんやり。

これらは触覚そのものではなく、何かに触れたときの感触や質感の表現です。一括りにしてみると「何かとつながっている感覚・重なりあっている感覚」と言えるような気がします。

もしつながっていないとしたら、こうした感触や質感の表現は「想像」の中で閉じてしまうからです。

握手。手と手が重なりあうとき、相手の手を握っている感覚と、自分の手が握られている感覚が同時にやってくる。

日常生活の中で握手をする機会がそれほど多いわけではありませんが、握手した瞬間の力のぐあいや、手と手が重なる瞬間の接触の速さなど、相手の人となりが伝わってくるような気がするのは気のせいでしょうか。

著者は全国の美術館や大学でワークショップを開催し、不思議な触覚の錯覚を体験したり、さまざまな素材を使った触感の「しりとりゲーム」を行い、触感への興味を深めてもらっているそうです。

 こうしたワークショップを行ってみると、うれしいことが起きました。参加者が各々の個人的な触感体験を語り始めたのです。飼っているウサギの額のちょっとへこんだところの触感が好き。アイスの棒を舐めたときの、ザラッとする舌触りが嫌だ。だれでも程度の差こそあれ、日常生活の中で触覚にまつわる印象深い体験を持っている。ただそれを意識して語る場がなかっただけなのだということに気づかされました。

触覚と日常の体験は深く結びついているけれど、それを意識して語る場がない。たしかにそうかもしれません。日常の中で触れることをに共有する。誰かと話をしてみようかな。

みなさんは何かに触れたときのことを想像したとき、どのような記憶がよみがえってきますか?

私は幼い頃に白樺の森に入って遊んでいたときの様子が思い浮かんできます。白樺の木の生命力あふれるツルツルゴツゴツした触感と、森の爽やかな香りが今でもありありとよみがえってきます。

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