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「オプション性」は反脆さの仲介役

今日は『反脆弱性』(著:ナシーム・ニコラス・タレブ)から「アリストテレスの「高度な」誤解」「オプションと非対称性」を読みました。

反脆くあるためには「ダウンサイドリスクを抑えること」と「ダウンサイドとアップサイドが極端に低いもの、高いものを組み合わせること」が重要なのでした。後者は、バーベル戦略(二峰性戦略)とも呼ばれます。リスクが両極端なものを組み合わせることで、ダウンサイドを限定しながら、将来のアップサイドを享受することができます。これはいわゆる「オプション」に通じています。

ソクラテス以前の哲学者であり数学者のタレスは、オリーブ搾油機を収穫シーズンに利用できるよう、前もって低賃料でひとつ残らず借り占めていたそうです。豊作になるとオリーブ搾油機の需要が高まり、タレスは好条件で貸すことで富を築いたとのこと。

つまり、買い手には権利はあるが義務はなく、もう一方の売り手には義務はあるが権利はない。タレスには、オリーブ搾油機の需要が高まった場合には機械を使う権利はあったが、義務はなかった。貸し手側には、貸す義務はあったが、権利はなかった。(中略)このオプションこそ、反脆さの仲介役なのだ。

「オリーブ搾油機の需要が高まった場合には機械を使う権利はあったが、義務はなかった」

将来的に豊作になるかどうかわからない。そのような時にどうするか。豊作ではない場合のダウンサイドは限定的にしつつ、豊作時の潜在的利益を最大限に享受する。そのようなことが実現できるならば、将来の不確実性は歓迎すべきものに変わる。

自分事に置き換えてみても、将来何が起こるか分からない場合に「どちらに転んでも得るものがある」ならば、それは「反脆さ」の表れであり歓迎してよい。

重要なのは、オプションを安く買う場合、つまり非対称性が有利に働いている場合には、何がどうなっているかを理解する必要などないという点だ。だが、この性質は安く買う場合だけに限らない。一定の強みさえあれば、物事を理解する必要などないのだ。

何がどうなっているかを理解する必要はない。一定の強みさえあれば、物事を理解する必要はない。

これは精緻な予測を追求する態度とは正反対のように思います。将来予測の精度を上げる営みとは、将来起きる可能性のある物事について理解を深め、シナリオの穴埋めをしていくことに他なりません。

日常生活の中で「オプション」を意識したことはほとんどないように思いますが、オプションを獲得することで、自由が広がっていくわけです。

そして、オプション性の強みとは、正しかった場合に巨大なペイオフを得られるという点にある。だから、そう頻繁に正しい判断をする必要はないのだ。

「頻繁に正しい判断をする必要はない」

時に人は「正しい判断」を求められる。そこには「責任」が伴います。正しい判断とは「失敗しない判断」「必ず成功する判断」とも言い換えることができるかもしれません。

システムが複雑になればなるほど「因果の不透明性」が高まり、将来を予測することが難しくなりますので「必ず成功する」ということは全く保証されません。

「オプション性を考える」

日常的に、リスクの低いものと高いものの組み合わせを考えてみたいと思います。

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