基本的な触感は存在するのだろうか?
今日は『触楽入門 -はじめて世界に触れるときのように-』(著:テクタイル)から「色えんぴつを並べるように、触感を分類してみよう」を読みました。
昨日は「水の触感を生みだすものは何か?」という問いにふれました。まだヒトには「湿っている」と感知する感覚器官が見つかっていないそうです。そうだとすれば、水にふれたときの「しっとり」とした感触はどのように生み出されているのでしょうか。
指には指紋があります。指紋はすなわち凹凸ですが、たとえば硬いモノに触れているときは、正確には指先の凸の部分でふれています。一方、水には決まった形がありません。そのため、指先の凹(へこみ)の部分にも水は入り込むことができます。そして、指先の隅々まで浸透してゆくと「しっとり」とした感覚を覚えるようです。
これはすなわち「しっとり感」は「キメの細かさ」として言い換えることができそうです。水以外にも沢山の例があると思いますが、たとえば毛先が極めて細い布地に触れたときも「しっとり」とした感じを覚えます。
他にも水の特性には、水をなぞったときの「キュキュっと」する感じ、冷たさなどがあります。ヘレン・ケラーは水の「キュキュっとする感じ」から、「Water」を理解したそうです。
触れ方の違いは、力加減や方向、触れる時間(サッと触れるのか、じっくり触れるのか)に加えて、「身体のどの部分で触れるか?」も関わってくるという学びがありました。
さて、今回読んだ範囲では「触感はどのように分類できるだろう?」というテーマが展開されています。とても興味深いテーマです。
基本となる触感は存在するのだろうか?
著者は(様々ある)触感にも基本となるものがあるのだろうかと問いかけます。(ちなみに視覚も光の三原色(赤・緑・青)に還元できるとされます)
原触・基本触を日頃意識することがなかったので、興味深い問いかけです。
硬い・柔らかい、ザラザラ・サラサラなど、対極にある要素を原触・基本触として取り出すことができるとしたら、組み合わせにより触感を構成できることになります。未知の触感を作り出すこともできるのかもしれません。
では、原触・基本触をどのように分類していくのでしょうか?
物理的なしくみに基づく工学的な方法。これはどちらかといえば客観的なアプローチ。アンケート調査という心理学的な方法。これは主観的なアプローチ。どちらのアプローチが優れているということではなく、どちらのアプローチでも共通項が見えてくるとすれば、それは「もっともらしい分け方」と言っても良さそうです。
触感の80%は4つの因子で構成される
それぞれのアプローチでどのような結果が得られたのでしょうか。まず、工学的方法について紹介されています。
皮膚には、異なる触感を司る触覚センサーがあります。メルケル細胞は「押された感じ」つまり圧覚を司っています。マイスナー小体は「すべりの感覚」、パチニ小体はチリチリ・サラサラなどの「細かい振動」を司ります。
それらにつながる感覚神経を直接的に電気刺激を加える。実際に何かに触れているわけではないのに、刺激が加わると何かに触れている感じを覚えるとしたら、やはり「実体とは何だろう?」と思えてきます。
そして、もし「原触の合成」が実現したとすれば、バーチャルとリアルの間には明確な境界は存在しなくなるのだろう。そんな気がします。
次に、アンケートによるアプローチも紹介されています。
硬軟・冷温・乾湿、粗さの4つの因子が見つかった。このように言われると「たしかにそうかも」と思う一方、「他に何か軸が存在しないだろうか?」と考えたくなってしまいます。
4つの因子で説明できるのは触感の80%だとしたら、残りの20%は何なのでしょうか。これら4因子は「触れる素材(物質)の特性に還元できる」ものであり、測定が可能です。これらは空間的です。
触感・触れ方には「時間」も関係していることを踏まえると、この研究では「どれぐらいの時間をかけて触れたか?」という点も評価されていたのかが気になってきます。
いずれにしても、これら4つの因子で触感の80%が説明できると知ると、身の回りのものが4つの因子がどれぐらいの強さで組み合わさっているのかと気になってきてしまいました。
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