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[美術]坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア


まずこのスピード感で展覧会を開催できたことに恐れ入る。それほど氏とICCの関係は密着だったということだろう。
本展はトリビュート展であり、本人の作品が並ぶ展覧会ではないが、展覧会タイトルにある3つのキーワードが本人を表すものとしてぴったりだと感じる。

DAY1 展覧会
私的な目玉は李禹煥によるアルバム「12」のドローイング、及びその前に坂本龍一個人に贈ったと言われる作品だ。
アルバムに使われた作品タイトルは「遥かなるサウンド」と初めて知る。そしてアルバム使用時には13度傾けたそうで、オリジナルはほぼ水平なに近い線となっている。水平に近いと五線譜や波形のようにも思えてくる。

本人に贈ったとされる作品タイトルは「祈り」。こちらは円形で、レコード盤やCD盤を思わせる。キャプションには本人による坂本龍一へのメッセージが記されている。

DumbTypeの個展で展示されていた世界中の音をフィールドレコーディングしたレコードには録音者のコメントがあり興味深かった。タイのチェンマイで音を録ったのはなんとアピチャッポン・ウィーラセタクンだった。

DAY2 映像作品
■alva noto + ryuichi sakamoto insen live (short) 2009
ポルトガルとスペインでのライヴ映像。ワンカメ固定なので表情は読み取れないが、緊張感は少なく淡々と進行していく。
アルヴァ・ノトのデジタルノイズ的なサウンドが単調なリズムを刻み、生ピアノが重ねられていく。メロディは強調されず不協和音も多用され、アンビエントより偶発性・即興性のある音。

■Alva Noto & Ryuichi Sakamoto Glass 2016
アメリカのモダン建築で草間彌生のインスタレーションのオープニング記念の際のパフォーマンス。
音響装置の他はいろいろな「もの」を触ったり擦ったり叩いたりして「音」を出す。そこにはリズムもメロディもハーモニーもなく、ただ「音」がある。

このとんでもなくイカした建築「The Glass House」を作ったのはフィリップ・ジョンソンという人で、ハーバードでヴァルター・グロピウス(バウハウス初代校長)から学んだそうだ。

■カミーユ・ノーメント,坂本龍一 After The Echo 2017
札幌市立大学でのインスタレーション展示にあわせて行われたパフォーマンス。
こちらもまず建築のカッコよさに衝撃を受ける。ドローン撮影と思われる映像にドキドキしてしまった。設計したのは同大学の初代校長だった清家 清だそうで、調べてみると彼の作品をグロピウスが絶賛したというエピソードが。またもやグロピウス。
石元泰博・丹下健三・グロピウス3人による「桂離宮」が好きだから、自分の好きなものって一貫してるなって思った。

■坂本龍一 with 高谷史郎|設置音楽2 IS YOUR TIME コンサート(2017)
即興演奏によるライヴ映像。有名な「津波ピアノ」が使われる。
シンセやガラスを擦る音、ピアノ弦を弾く音など楽曲演奏ではなくジョン・ケージ的な世界。(もちろんヒット曲などは一切やらない!)

DAY3 映像作品
■野村萬斎+坂本龍一+高谷史郎 LIFE - WELL(2013)
山口情報芸術センター [YCAM] で行われた舞台公演の映像。狂言師・野村萬斎による能楽、戯曲が演じられる。
能など全く見たことがない私は、まず何を言っているのかがほぼ聞き取れない笑 語尾の「候」くらい…。なので音として聴いてみた。というよりそう聴くしかなかった。この音程がたらしめている効果と、楽器と合いの手が作る世界をストーリーを求めずにしばし聴く。
能楽の笛・太鼓・合いの手(イヨーッとか)とピアノのセッションは見どころだった。かつて武満徹が和楽器を使ったことを批判したエピソードが可愛らしく思えてくる。

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