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ドードー巡りになる復活か保護か

 半世紀前の1970代初頭、日本はアリスブームだった。今年没後40年の寺山修司をはじめ著述家から、宇野亜喜良、金子國義ら画家まで「不思議の国のアリス」をテーマにした作品を次々に発表した。ディズニーアニメまでも再上映された。

 そのブームは私の本棚にも。原作を読んだことがなかったので角川の文庫本を買った。夢の中の話しという「落ち」は知っていたが、突拍子もないキャラクターが奇事怪事を起こすのが楽しく読み進んだ。しかし、いくつも出てくる洒落や言葉遊びの文章に手こずった。初版の19世紀の英国人ならすんなり読めたのだろうが、翻訳した岩崎民平の「注」を見てもぴんとこない個所が多かった。岩崎自身も「解説」で「(洒落の)訳がめんどうで、はなはだ不手際なものがある」と書くほど。

 こんなことを思い出したのは、新聞に「アリス」の作中に出てくるドードーのことが載っていたから。全国紙に「絶滅したドードーを米バイオ企業が復活を狙っている」との科学記事。

 ドードーはインド洋のモーリシャス島にいた空を飛べない大きな鳥。「不思議の国」のジョン・テニエルの挿絵でも有名だ。16世紀末から同島に上陸したオランダ探検隊などの食料にされ、17世紀に絶滅した。

 バイオ企業は現代の近縁動物を利用して、映画「ジュラシック・パーク」のように現代版ドードーを「復活」させるらしい。一方で「復活より、絶滅を防ぐための環境保護に力を入れるべき」との批判も。この対立はドードー巡りになるが、生物を絶滅、絶滅危惧にしたのは人間の営みによることはほぼ間違いない。

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