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日本人が日本に密航した時代が

 NHK総合でドラマ「やさしい猫」が6月下旬から放映された。直木賞作家の中島京子さんの同名小説が原作。主人公のシングルマザーと娘が、スリランカ人の男性と家族になったことで、国を相手どった裁判に挑んでいく話だ。

 ドラマの第3話から、家族の裁判を支える恵耕一郎弁護士が登場した。名バイプレイヤーとして知られる滝藤賢一さんが演じていた。恵弁護士にはモデルがいる。入管問題、外国人技能実習生問題に長年取り組んでいる指宿昭一弁護士だ。

 私が原作本を読んだきっかけは、奄美群島内の役場職員がSNSに投稿した「知人の奄美2世の指宿弁護士をモデルにした登場人物が描かれる小説が出版された」を見たから。奄美では、県外に出て暮らす人を1世、その子、孫を2世、3世と呼ぶ。独自の歴史や文化を持っていることに由来すると思われる。

 その一つが戦後、北緯30度付近に国境線が引かれ、沖縄とともに米軍統治下に置かれたこと。暮らしのため日本本土への「密航」もあった。大相撲の3代目朝潮も、奄美の徳之島から密航した。こうした歴史から、本土への転居を「移民」と感じたのだろうか。

 今年は奄美の国境が消えてから70年。7月末に奄美から330㌔離れた鹿児島市まで、7日間かけてカヌーで渡った若者らがいた。日本復帰を訴えた「密航陳情団」の航路をたどった。メンバーは「命がけの苦難を実感した」と語っていた。

 今の在留外国人の暮らしにくさと、かつて日本人が日本に密航しなければならなかった、国境とはなにかも教えてくれた「やさしい猫」だった。

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