見出し画像

NTSC(TBC14)

映像の世紀の技術的な発展を書くつもりだったのに、どんどん脇道へそれてばかりで申し訳ありません。今回は真面目な技術的話です。
古い写真がカラーではなく白黒である様に、テレビも生まれた時は白黒でした。
テレビは向かって画面の左上から右上へ一本の細い光の線を描きその中に強弱を加えて描画します。そして一本分下に行って一本描き、また一本分下に行って描き・・・
そういう線を沢山重ねる事で平面の絵を描いたのです。
その線の本数がアメリカでは525本毎秒30枚、ヨーロッパでは625本毎秒25枚でした。
やがてカラーテレビが開発されますが、高価だった白黒テレビを買い替えずにカラー放送を白黒テレビで見られるように色の情報は福搬送波という波に乗せて送る事になりました。
このアメリカ式はNTSCと呼ばれ世界的には少数派で北アメリカと中南米の一部、アジアでは日本、韓国、フィリピン、ミャンマーくらいのものです。

Wikipediaさんからいただきました


NHKの番組「映像の世紀バタフライエフェクト」で見られる様に、フィルムの時代はリマスターされて綺麗なのにテレビが登場するとたちまち汚い映像になってしまうのは、一枚の映像を描くのに525本の線しかないからで、しかも記録媒体の磁気テープは経年劣化が激しく、安定して再生することさえかなりな困難を伴います。リマスターも何も元のデータが無ければ加工できないためテレビ登場の時代は映像が残念というわけです。
記録媒体の磁気テープは技術の進歩とともに2インチ→1インチ→3/4インチ→1/2インチと小型化しながら磁性体の密着度を上げ、録画性能は向上し、解像度は上がりましたが、磁気テープに記録されるのはアナログの電気信号なので時間が経てば弱まる事に変わりはありませんでした。
そこで登場したのがデジタルVTRです。
デジタルVTRには大きく分けて2つの種類があり、コンポジットとコンポーネントです。
コンポジットはこれまでのアナログの情報をそのままデジタルに変えて記録する方法で、コンポーネントは映像データ自体を輝度・-赤・-青(4:2:2)に分解してデジタル化する手法です。
テレビ業界的には編集室もMAルームもアナログでできていたので当初は互換性の良いコンポジットを選びましたが、完全デジタル化され、更に現在一般的なHD(2K)はコンポーネントが標準になりました。

この4:2:2はSONYが開発した規格で、機器がリリースされるとすぐに業界向け説明会が行われ、私も参加しました。感想しては「頭の良いやつがいるもんだ」です。
本来なら、いや、デジタル化が進んだ現代なら光の信号は3元色RGBで作れば良いのです。ところが、あの時代はそこまで高速で大容量のデータは伝送も記録も難しかった。
なので圧縮するために輝度と輝度から赤を引いた物と輝度から青を引いた物に分けて記録、輝度100%すなわち真っ白は赤と緑と青を一定割合で作られる事から公式が成り立ちそこから緑のデータを送らなくても機械側で緑を合成できる、という理論です。

そんなデジタルの始まり頃のお話はまた別の機会に・・・

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?