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タイムベースコレクター⑤Betacam

県民オペラで音楽界やイベント界に名を響かせたW商会にはその後も様々な撮影記録の仕事が舞い込みました。太鼓で世界に名を響かせた「鼓童」PCM録音は太鼓の様な大音響にも対応出来ました。「読谷山城祭り」町おこしの走りであった大規模なイベントを記録しました。那覇商業高等学校プロモーション当時流行っていた音楽を使って軽快なPVが好評でした。新聞社主催古典芸能競技会、Kam‘s House のJazz Liveなどなど。
社長も私も調子に乗ってイケイケだったある日の事、出入り業者としてイベント記録を担当していた恩納村のリゾートホテルでプロモーション撮影が行われたと聞いて「言ってくれれば私達が作ったのに」なんて思って出来た物を見た私は膝を折られた気分でした。
圧倒的な表現力、美しいアングルと発色、構成の流れる様な作り。私に無い画角で作られた完成度の高さに天狗になりかけた鼻を折られた気分でした。
さらに気になるニュースが・・・。ご近所に出来た新しいビルに沖縄で初めての芸能人を養成するアクターズスクールが出来てそこのプロモーションを当時最新鋭だったBetacamという新しいフォーマットのVTR一体型カメラで撮るという。

AIさん作画、惜しいかな間違っています。後ろにVTRが無い

噂では沖縄AVセンターには札束を見せ金にして全額ローンで買っただの、カメラはあるけど再生機や編集機は無いだの、同業他社を含めて戦々恐々といったた様相でした。
その時私は沖縄に住み始めて7年目、W商会はバイトから数えて3年が過ぎていてテレビでは相変わらずドローカルのCMやへたくそなニュースが流れていました。
「私はここで埋もれていくのか?それは嫌だ東京へ行って競争社会で勝負したい」恩あるW社長の元を離れて東京へと向かうことにしました。

用語説明
Betacam
それまでVTRの画質や美しさは記録するテープの幅と比例していました。1インチが最高で、続いて3/4インチ、家庭用の1/2インチと。
Betacamは家庭用の1/2インチBetamaxと同じカセットテープを3倍の速度で走らせ、記録面積を拡大し高画質を得る、という技術でした。

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