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焼額山に身も心も凍る(TBC29)

これから盛夏を迎えようという時に冬の話で失礼します。
Wikipediaによると1991〜92のシーズンあるいは98〜99という事になりますが98は長野五輪の年なのでそれは無さそうです。
フリースタイルスキーのW杯が長野県の焼額山で開催されるというのでテレビ朝日もモーグルとエアリアルを中継する事になりました。

AIさん作画、色々違うけど15回試してお手上げです

ゲレンデの中腹にプレハブ小屋を建て中継スタジオにしました。私達もprofileとレインボーを持ち込みました。いつものゴルフ場なら会社のハイエースに積み込んで私が運転して行くのですが南国生まれで雪道は経験無いし、制作技術のTDさんが一緒に載せて行って下さるというのでトラックに委ねました。
ホテルのある駐車場からプレハブまではヒトは歩きかスノーモービル、機材はブルドーザーで運びました。4トンワイドロングのトラックに3台分の重い機材達を、はじめは雪上車で上げる計画だったようですが、キリがないというのでブルドーザーの出番だったようです。
さて私達の仕事は、profileはいつも通り仕込みVTR出しとハイライト作成ですがレインボーはモーグル選手の膝の動きの軌跡を描く計画です。
機材を設置して宿に帰り、翌朝プレハブに行ってみると、設定していたデータが全部飛んでいました。「ブルドーザーなんて荒い扱いするから壊れたんじゃないの?」という事で東京に連絡したらメーカーが代わりのHDDやボードを近くまで持って来るので私は山を降りて下で受け取る事になりました。
スキー場は基本的にどこでもそうでしょうが山の上にあり、そこに行くには切り立った崖っぷちの道を行く事になります。雪道に脚を取られて途中で動けなくなったハイラックスやパジェロやランクルを見ながら地元タクシーの運転手さんが笑います「4WDに限ってこうなるんだよね。私らなんか慣れてるからスノータイヤだけで平気だよ」

見事なカウンター走行

崖っぷちのカチンコチンに凍結した道をカーブの度に後輪をドラフトさせて前輪カウンター当てながら下って行くのです。
「あ、あの、運転手さん、私急いでないので、ゆっくりやって下さい」
「大丈夫だぁ〜遅いとかえって傍に滑るからこの方がいいんだぁ〜」
志村けんさんを彷彿とさせる喋りでザザーッザザーッっと滑り降りて行きます。
当時はまだシートベルトの規制はありませんでしたが、私は自主的にシートベルトを締めドア上の取っ手にしがみついて凍っていました。
無事に麓まで降りて、あまりの恐怖に記憶が飛んでいますが、変わった電車に乗って、機材を受け取って、登りは全然怖くなくて、プレハブに帰りました。
profileを開けて基板とHDDを交換し、中継用VTRからコピーし直して何回かテストしてOK。翌朝起動するとまた初期状態に戻ってしまっていました。タダゴットデハナイ。
制作技術さんの中にも初期化の被害を受けた方が何人かおられて、検討した結果低温過ぎてデータが飛んだのではないか?

AIさん雪だるまはいらないよ

とういう結論に至りました。
その夜から電源を全落としせず、温めた状態で保つ事にした結果、翌日は大丈夫でした。
モーグルの膝の軌跡は、想定以上に動きが激しく、スカッドミサイルよりも変化に富んだ動きだったのでパトリオットシステムは解析が追いつかず綺麗に作画できませんでした。最近流行りの北◯◯のミサイルみたいです。

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