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アメリカ人の「チュー チュー」は、日本人の「シュッポ シュッポ」

「汽車汽車 ポッポ ポッポ シュッポ シュッポ シュッポッポ 」と歌われる「シュッポ シュッポ」。日本では蒸気機関車が煙を吐きながら走る様子を描写する擬音語として知られている「シュッポ シュッポ」は、アメリカだと「チューチュー(Cho Cho)」だ。「チューチュー・トレイン」と言えば、それはディーゼル機関車でもなく、電気機関車でもなく、蒸気機関車を差すのだということを、かつて出向いた"やぎたこ"のライブのMCで知った。

そういえばそうだとボクが思い出したのが、ニール・セダカの「恋の片道切符」だった。この歌には、冒頭から「チューチュー・トレイン」が登場する。片道切符を手にする主人公が、見知らぬ町の"失恋ホテル(Heart Break Hotel)"に宿泊するために汽車に乗る、そんな歌だ。


本国アメリカでは「おお!キャロル」のB面として、1959年にリリースされた。日本ではこちらがA面扱いでリリースされ、1959年暮れから翌60年の4月に至る長期にわたるヒットとなり、当時のAM洋楽ラジオ番組チャートの上位を快走した。

「恋の片道切符」は、50年代アメリカのヒット曲の題名を歌詞に歌い込んだユニークなノヴェルティ・ソングだ。「バイ・バイ・ラヴ」(エヴァリー・ブラザース/1957年2位)、「ロンリー・ティアー・ドロップス」(ジャッキー・ウィルソン/1959年7位)、「ロンサム・タウン」(リッキー・ネルソン/1957年7位)、「ハートブレイク・ホテル」(エルヴィス・プレスリー/1956年1位)、「ア・フール・サッチ・アズ・アイ」(エルヴィス・プレスリー/1959年2位)、「アイ・クライド・ア・ティア」(ラヴァーン・ベイカー/1959年6位)などが、登場して来る。歌われるヒット曲を知っていれば、またなおさら楽しい。そういえば冒頭に登場する「チューチュー・トレイン」も、もしかして有名なヒット曲なのかなと思ったものの、そのような記憶はなかった。

いざ調べてみると、ドリス・ディの作品に、その名もズバリ「チューチュー・トレイン」という曲があった。1953年に最高20位を記録している。
汽車に乗車したカップルが、"汽車に乗れば天国よ、ハネムーン特急なんだから"と楽しげに歌う。"Ch-ch-poo, ch-ch-poo"という擬音が、キスをしている音のように響く。古き良き新婚旅行の様子を、ノスタルジックに描く歌なのかもしれない。


アメリカで蒸気機関車の退場が始まったのは1940年代。それから20年近く経ってのち、ニール・セダカというティーン・アイドルのシングル曲に、蒸気機関車=「チューチュー・トレイン」が題材として使われたことを、改めて面白いと思う。蒸気機関車の愛すべき勇姿が、ティーンネイジャーを含めた人々の記憶に、まだまだリアルに残っていたということなのだろう。

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