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エベン・アレグザンダー医師『プルーフ・オブ・ヘブン』

霊的知識がどうして社会に有用なのか?

それは死後の世界があるという前提が真だからだ。そこからの観点が社会の事象に新たな光を当ててくれて、意味のある考察を実現してくれるのではないだろうか。

死後の世界があることが確定したからといって、神秘主義(近代スピリチュアリズムが属する思想分野)における霊的知識をそのまま適用できるということにはならない。だが、なぜ現世に生を受け、生活せねばならないのか、ということを突き詰めると、どんなに臨死体験の報告が霊性進化を否定したとしても、どうしてもそこに戻って来ざるを得ない。

今回は、霊性進化のことは横に置いておいて、まずは死後の世界があることの証拠を提示しなければならない。

2013年邦訳された、エベンアレグザンダー医師の臨死体験『プルーフ・オブ・ヘブン』である。

著者は、アメリカの脳神経外科医。ノースカロライナ大学チャペルヒル校(化学専攻)を卒業後、1980年にデューク大学で医学の学位を取得。ハーバード・メディカル・スクールで15年間准教授を務める。医師として通算25年以上のキャリアを持ち、査読性の医学雑誌に単独または連名で150以上の論文を執筆、世界各国の医学会議などで200回を超えるプレゼンテーションを行っている(本書著者紹介より)。

世界的脳科学の権威で、元は死後の世界などないと言っていた。ところが臨死体験を自分がした後、

2008年11月、細菌性髄膜炎により1週間の昏睡状態を経験、その間の臨死体験をまとめたのが本書である。その後は医師としての活動のかたわら臨死体験の語り部となり、ダライ・ラマ14世との対話などを積極的に行っている(同上)。

死後の世界肯定派に変貌した。そのことが世界にセンセーションを巻き起こした。その内容は、まさに死後の世界の存在を確定させる信憑性の高いものだった。

著者は脳外科医として様々な難しい脳手術を成功させてきた。科学に自分を捧げて来た人間である。それが54歳で大腸菌性髄膜炎と言う稀有な病気にかかり、完全に大脳機能が停止する。それまで著者が耳にしていた臨死体験は、脳機能が完全に停止していない状態で、夢で片付けられる範囲のものだったが、著者の体験は完全に脳が存在しなく、持ち主(意識)が脳にいない状態だったことから、これは真の死後の世界であることを悟る(18ページ)。

世界的脳科学の権威が、自身の臨死体験を真の死後の世界と認めたのだ。

臨死体験の内容

最初は暗い空間にいた。泥のようなものの中で息苦しかった。心臓の鼓動のような、しかし機械的な音も聞こえた。自分の肉体はなかった。原始細菌に逆戻りしたような、知性とか感情の欠落した意識しかなかった。

徐々に管のようなものの存在に気付き始め、グロテスクな動物たちが登場しては退場するようになった。臭いにおいも感じた。覚醒するにしたがい、その場所に違和感を感じていると、上方から美しき何かの存在が現れた。

やがてあたりは明るくなり、この世のものではない美しい自然が広がる世界に移行した。それは夢ではなく、もっとリアルなものだった。その現実感は現実の1000倍である(57ページ)。

その世界を自由に飛び回っていると、自分が一人ではないことに気づいた。隣に美しい女性がいた。面識はなかった。二人は綺麗な蝶の羽根に乗っていた。女性は著者が永遠に深く愛されていること、恐れることは何もないこと、著者に間違いは何もないこと、いずれは帰ってもらうこと(おそらく現世に)を告げた。その女性はオーブ(光の玉)となったり人間の姿に戻ったりしながら、著者にずっと付き添っていた。

ダイナミックな大空を飛び回る見知らぬ生命体。荘厳な大音響。音と物体の区別がない(※ここでスピリチュアル・アナリシスすると、音も物質も波動であるから、全てが波動として捉えられるということなのではないだろうか。現世の肉体にそれを感じる感覚器官が存在しないので、それがどういった感覚なのか表現することはできない。)(64ページ)。

分離がなくすべてがつながっている、テレパシーでの会話(近代スピリチュアリズムと符合)。波動を上げていくと神の存在に気づく。著者はそれをオームと呼んだ。

神にこんなことを言われる。

邪悪が存在しなければ、自由意思を持つことができない。邪悪はそのためにこそ必要とされてきた。自由意思を持つことなしには、発展が得られない。進歩がなくなり、神が人類に対して願い続けてきたことを、人類には達成することができなくなる。世俗世界の邪悪は醜悪で強力でもあるが、全体から見れば愛が圧倒的に優勢であり、最終的に勝利を収めるのは愛である(67ページ)。

数限りない高次元がある。低次元からは知ることができない(近代スピリチュアリズムと符合)。現世と高次元の照応(スウェーデンボルグの概念である)。時間はない(尺度がない)。慣れると自分が回って来た階層には、自由に出入りできる。無私の愛が物事の本質であり究極、現世にそれを現す言葉がない。

霊界の真理は科学的真理と矛盾しなかった。しかし、一部の科学会が唯物論によって科学と霊的真理が矛盾していると主張して、大半の人間がそうだと思い込まされている。

一般的に臨死体験は、過去の自分を見つめ反省させられるエピソードが多いが、著者は肉体の機能が完全に停止していたためか、現世の自分に縛られることがなかった。現世の自分の記憶を失っていた。それが、臨死体験者としては稀有なほど高次元の階層を経験するに至った(ここは検討を要するところで、著者の霊性が元々高かったから高次元に行けたのでは?という、この分野に強い人間のごく自然な発想はどう処理されるか)(106ページ)。

宇宙は広大で素晴らしく、意思がある。霊性は無視できない言葉になった。地球は善悪混交した星で、自由意思を許すために悪が許容されている(善だけだと選択肢がない)。人間はこの世界で神に向かって成長する役割を担う(これは霊性進化論だが、私が臨死体験が霊性進化を否定していると言ったのは、もうひとつ根拠としているソースがあって、そっちのことだった。両方だと思っていたのは記憶違いであった。しかし、著者は次の本でカルマの存在は否定していたと思う。)(112ページ)。

本当の思索は脳ではない。物理次元以前の、脳や肉体を大きく超える存在。インスピレーションは霊界のもの。現世の思考は鈍重。死後の世界に似せた生活を心がける。神は無機質な存在ではなく、人間より人間味(愛)がある。

著者の経験したことは、近代スピリチュアリズムの教義と一致している。

臨死体験後の追究

著者は1週間生死の境をさ迷って、絶望的な状況を経た後、奇跡的に回復した。何らかの後遺症は残るだろうとされていたにも拘らず、賢明なリハビリの結果、元の正常な能力を取り戻した。親族によるとむしろ、存在感が神々しく変化した(162ページ)。

原子の構成要素には陽子、中性子、電子があるが、さらにその構成要素はよく分かっていない。だがそれは、この宇宙の中ですべてつながっている。あらゆる粒子が相互に連関し合っている。これは科学的にも正しいのであるが、著者はそれを臨死体験で感覚的に受容した(191ページ)。

意識の仕組みを解明する手掛かりは脳にはない(195ページ)。意識は現実を描き出す役を演じているが、それは量子力学の実験において表されたのであり、その研究者は神秘的世界に答えを求める方向に視点を転じた。

ヘミシンクによる瞑想によって、臨死体験で訪れた場所に近い位置に戻ることができた(202ページ)。

そういった体験を、祈りや瞑想を通じて誰もが出来る(203ページ)。神は全知全能で万物に偏在している。すべての人に内在し、無条件の愛を持っている。

臨死体験と現実が符合した決定的証拠

著者は養子だった。本当の父母は結婚するには若すぎたため、著者を児童養護センターに奪われた。そして、脳外科医の子供として引き取られ、自身も脳外科医になった。

臨死体験をする1年前、息子が学校の課題で家系図を調べたがった。そこで著者も自分のルーツを知るために児童養護センターに調べに行った。そこで、本当の肉親はその後結婚を果たし、3人の子供に恵まれていることを知った。母親は著者の事を忘れたことがなかった。母親は著者と再会し、妊娠中に著者を連れて星を見たなどの思い出話をした。

本当の父母が結婚後にもうけた3人の子供のうち、1人はすでに他界していると知らされた。その顔は見たことがなかった。

臨死体験をした4か月後、肉親の娘(つまり妹)から、亡くなった妹の写真が送られてきた。その時、著者は初めてその顔を知った。

著者は愕然とした。服が違っていたから気づくのが遅れたのだが、臨死体験で現れ、ずっと著者に寄りそっていた、あの見知らぬ女性その人だったのである。

本書と近代スピリチュアリズム

本書と、浅野和三郎が輸入し江原啓之が広めた近代スピリチュアリズムは、極めて似たものであった。相違点は次の本『マップ・オブ・ヘブン』で語られるのだが、カルマとか罪の償いの概念が存在しないことである。

しかし本書では、霊性進化の存在ははっきりと示されている。であれば、現世を生きる目的、生活の指標である霊性進化の哲学の根本的部分は、改める必要はないだろう。

死後の世界はあるということ

本書によって、死後の世界は存在するという部分は証明されたのではないだろうか。死後の世界を否定することは、本書から目、耳、口を閉じて拒絶している駄々っ子でいることに過ぎない。

これを突破口として、霊性進化の哲学は真実として通用することになる。本書の重要性はそこにある。私がスピリチュアル・アナリシスを行う価値はあるのだ。


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