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警告!この記事を読んではいけない52「銃」について19<魚雷の炸薬>

前回の記事で、魚雷の基本構造をお話ししました。今回はまず、弾頭の炸薬について、お話ししたいと思います。魚雷の先端は、爆発して敵をやっつけるための火薬が詰まっています。これ、炸薬と言います。強力な爆薬です。いろいろな種類がありますが、今日はその炸薬のお話しです。

魚雷の炸薬

魚雷は、水中から発射され、水中で敵艦に激突し、水中で爆発して相手、つまり敵艦の舷側を破壊し、それによって敵艦の舷側に穴をあけ、そこから海水が流入するように仕向け、結果として敵艦を撃沈する、という攻撃方法の為の兵器です。

従って、水中で効率よく爆発する炸薬を弾頭に詰めてあります。この炸薬は各国とも、魚雷用に開発された、特別な爆薬が使用されていました。つまり普通の爆薬ではないという事です。何故普通ではいけないのかというと、目標を破壊するのは、水中爆発で発生するバブルパルスというものです。

このバブルパルスを強力に発生させる、特別な爆薬を、各国とも独自に開発していたんです。なので、単純にTNT火薬を詰めただけ、というものではなかったのです。TNT火薬は魚雷炸薬の材料ではありましたが、炸薬そのものではありませんでした。あ、TNT火薬って知ってますか??

TNT火薬とは

TNT火薬とは、トリ・ニトロ・トルエンの略です。強力な爆薬です。現在の製造方法は、私にも判りません。子供の頃に、TNT火薬は、ニトログリセリンを珪藻土に染み込ませて作る、というのを本で読んだ事はありますが、そのような単純な作り方ではないようです。

ちなみに、昔は少しの衝撃で爆発してしまうニトログリセリンを、そのまま使用することもあったようですが、あまりに危険なので、何とかこれを爆発しにくい、使いやすいものにしようと研究が重ねられました。そしてこれを達成したのが、ノーベルという人です。

ノーベルは、取り扱いの難しいニトログリセリンを加工して、ちょっとやそっとの衝撃では爆発しないTNT火薬を開発したんです。そしてこれを元に「ダイナマイト」という製品を作ったんです。ダイナマイトは売れました。めっちゃくちゃに売れました。

取り扱いのしやすい、強力な爆薬だったからです。鉱山や建設の掘削現場、戦争やちょっとした紛争、あらゆる場面で便利に使える爆薬だったのです。そしてノーベルは、巨万の富を築きました。この資金を元に設立されたのがノーベル賞です。すべてはダイナマイトが売れた収益金だったのです。

ダイナマイトだけではなく、その後もTNT火薬は、様々な場面で使われました。爆薬の威力の単位は爆速と言いますが、爆薬の威力を判りやすく解説するには「爆速はTNTの・・倍」という言い方をします。核爆弾の爆発力を示すにも「・・・メガトン」とか言いますが、これもTNTの何倍の威力かを示す表現です。

ちなみに現在、各国空軍で使用されている空対空ミサイル、空対地ミサイルの弾頭に使用されている爆薬は、まあいろいろあるようですが、その1例として、オクトーゲンという爆薬があります。これの爆速は、TNT火薬の、なんと40倍だそうです。ミサイルの弾頭は小さいので、少しの量で大きな威力を持たせないといけないので、TNTの威力では足りないからです。

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お話を、魚雷の炸薬に戻しましょう。初期の魚雷の弾頭は、起爆させるのに相手に衝突、つまり命中させることが必要でした。今の魚雷も基本はそうですが、近接信管と言って、近付いただけで爆発して相手にダメージを与える種類の魚雷もあります。

初期の魚雷の基本的な撃ち方は、数本の魚雷を同時に目標に向けて発射し、そのうちのどれかが当たればよい、という考え方でした。というのも、初期の魚雷には誘導装置がなく、ただまっすぐ進むだけの兵器であったためと、とにかく航走速度が遅いため、なかなか当たらないのが実情でした。

なので、「一発でも当たればラッキー!」みたいな感覚もあって、基本的に1発で敵艦を確実に撃沈するだけのダメージを負わせる必要がありました。そして、それに必要な炸薬量を、ちゃんと積んでいたんです。船って基本的に、舷側の材料である鋼板が厚いんです。戦闘艦でなくても厚いんです。

これは何かに衝突しても、そうそう簡単に船が沈まないために、厚くしてあるんです。戦闘艦ともなれば、舷側は装甲板となり、分厚い鋼板で作られています。中にはその分厚い装甲板を2重にして、更に丈夫にしてある船もあります。これを1発でぶち破ろうというのです。大きな爆発力が必要です。

第2次大戦末期、世界最大の戦艦、大和は、舷側の装甲版が約42センチもあったようですが、装甲版の設置方法の根本的なミスも重なって、当初予定していた防御力を十全には発揮できず、米軍の攻撃を受けて沈没しました。攻撃は、魚雷と爆弾とロケット弾と機銃弾で行われました。

つまり、全て航空機からの攻撃でした。爆弾とロケット弾と機銃弾は、主に甲板上の武器の破壊と、甲板に火災を起こさせるのに、有効に作用しました。そしてその混乱の中、数十本の魚雷が、左舷に集中的に命中し、装甲板も破壊され、大和は浸水し、大きく傾きました。

被害があまりに大きく、艦を立て直すことができないまま、大和は沈没しました。魚雷は、効果的に大和を沈没に追い込んだのでした。水上艦は、装甲がいくら分厚くても、最終的には魚雷が命中すれば、ただでは済みません。ほぼ、一貫の終りになってしまいます。

魚雷は威力が大きく、命中すれば、一撃必殺の兵器なのです。なんかこれ、ガンダムの1年戦争初期の状況と、どうしても似ている気がします。結局、戦艦はモビルスーツに勝てなかったんです。戦艦大和も、航空機に勝てなかったんです。

今日はここまでにします。次回は、魚雷の誘導方法や発射方法などを、お話ししたいと思います。

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