見出し画像

電波法からの航空無線入門

職場で、HW製品づくりに関わる法律について、少し教えることとなった。電波法、電気通信事業法、電気用品安全法、VCCI 規制等々。何十年かぶりに電波法を読んだりし、資料を作ったり youtube を見たりしていて、段々と話は趣味の方に。

電波法は、思えばちょっと変わった法律です。国際的に共通な資産である「電波」の公共の利益を維持することが、目的となる。また、通信用途で使うこともあるので、秘密についても守る必要がある。元々大気中を飛び交っている電波に対して、秘密を守ると言われても、これはなかなか難しい。なので「傍受」は違法ではないが、それを窃用した時には罰せられるという、面白い解釈になっている。自分が大昔、中学生の頃アマチュア無線の免許を取るために勉強した電波法と、あまり変わってないのが面白いと言えば、面白い。これだけ日常的に電波を使う様になっているのに、基本的な法律は変わらなくても大丈夫な様です。

製品を作った時に電波法を気にするとなると、主に混信とかで重要な通信を妨害することが気になります。で、今の世の中、何が一番重要なのか?と言えば、電波放送(テレビやラジオ)であり、通信は携帯電話となるのでしょう。この領域は今更教えるまでもないので、もう少し違った切り口を考えたい。普通、通信は仕事で使うなら信頼性の面から有線となるので、それでも無線通信を使う場合は何か。これは、船や飛行機、列車、車など動くものとなります。

身近な例はタクシー無線でしょうが、最近はデジタル化。確かに車内でうるさい無線の音を聞いてない、気がする。外にも警察無線があるが、これは暗号化がようやく進んでいるようですが、復号している民間人もいたりして、これはこれで面白い。が、まあこのジャンルはセキュリティ枠として、今日は触れないでおく。すると社会の役に立つ無線通信は、鉄道無線、船舶無線、航空無線となる。

無線傍受マニア(傍受は違法ではないことを思い出してほしい)の間で人気なのは、やはり飛行機となる。空港の近くに行けば、簡単な受信機で様々なチャンネルが聞ける。ということで、ここ数日 航空無線の門を叩いてみた。

まず、驚いたのはあまりデジタル化が進んでいない、ということ。未だに空港の管制と旅客機の間は、VHFによる音声通信である。もちろん暗号化もされてないし、変調はAMラジオと同じ形式(音声の通信として最も古い)である。一応、機体毎に自分の位置情報などをテレメトリする仕組みが普及中であり、それを復号するという遊びもあるようだが、意外と原始的。逆に、遊びの方は進歩していて、色々驚くようなことが。

すでに世界中の空港の航空無線は、それを受信してネットに流されており、受信機など一切なくても 大体のもの は聞けてしまう。リンクを張ったページに行けば、羽田空港の通信は世界中どこにいても聞ける。うーーん。こういうの、昔は「傍受」の範囲を超えているから駄目、と習ったような気もするが、ユーザとして聞くのは「傍受」だからなあ。

更に、世界中の物好きが、上記テレメトリも受信して、サーバに集めているので、 フライトレーダー というページが出来ている。リンクを踏めば、あなたのパソコンは管制室です。世界中の旅客機が、今どこを飛んでいるのか?が確認できます。事件や事故があると、マスコミもこの仕組みをみて取材をするそうな。

受信機買って、アンテナ張って、空港に行って周波数調べて... という、古風な趣味を再度始めようかと思っていたのですが、すっかり挫けてしまいました。良くも悪くも、デジタル側の進歩が凄すぎです。電波法(=総務省)も、のんびりしている場合ではない、様な気がします。もちろん、色々活動している訳ですが、今日も管制室は VHF の AM変調の無線機で、飛行機のパイロットと 話をしながら の仕事なのです。このリンクが、羽田空港の航空路管制のチャネルです。ほとんど数字を言うだけの簡単な英語です。

色々無くなったもの(タクシー無線とか、灯台放送とか)もありますが、地味に仕事で使っているものもあるのだなあ、という話でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?