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瞠目 (短編作品)

瞠目すべき瞬間と瞠目すべき展開
 製品の棚卸しを済ませ、レジカウンターから戻ると瞠目すべき光景がそこにあった。アルバイトの福田が胸ぐらを掴まれている。
「貴様っ 客に向かってレシートを投げ捨てるとは何事だっ!」
福田は、驚いてはいたが態度のデカさは衰えていない。
福田には、実は前々から悩まされていた。いつもグレたような態度で、業務も適当。
福田がレジカウンターに立つとお客様の顔が明らかに曇るのがわかった。注意はしていたが、私の指導ではどうにもならない。いつか機会があったら、なめるなよっと
店長らしくガツンと行ってやろうとドギマギしていた矢先、お役様にこの機会を奪われてしまった。ら、ラッキー・・・・・・。
 しかし、胸ぐらをつかんいるお客様、年は福田と同じくらい。 吐いている言葉は、年長の貴族のようだが、私と同じくヒョロくて、体も大きくない。。
福田は、半笑いで、「すんませぇーん。レシート渡し直しまぁーす。」
全く反省していない。
私と同様、舐められているようだ。・・・・・・
「貴様っ な、なんだ!舐め腐った態度っ!」
 お客様の怒りの出力が上がる。勢いよく、福田の顔に、お客様の顔をさらに近づけた。
「てんちょー 今、こんな状況ー。なんとかぁーしてぇー。」
私の方へ、ギロっと顔が向けれられる。
や、やばい。どうしよう。
「あなたが、店長さんっ!」
お役様がこちらによってくる。あぁ、言われるだろうなぁお決まりのセリフ
「いったいどんな教育をされているんですかぁ!」あぁ、やっぱり言われた。私は動揺するしかない。
「申し訳、あ、すみません。そのぉ あの、い、いつもぉ 言ってはいるのですがぁ」ベタベタのセリフも吐いてしまう。
「言って、これですかぁ?」
「いやぁ その、、、」
「てんちょーが、しっかり躾けてくれないからですよぉー てんちょーの責任」
福田が面白そうに、追い打ちをかけて来る。
「もっとちゃんとしないとぉ 舐められているんですよぉ!」
いやーそれは、お互い様。
福田が後ろで、悪い顔で笑っている。

 私は、どうしていいかわからない。
「いやー。そのぉ あのぉ ああ、ちょっと一緒に頑張って躾けましょうよ。お客様ぁ」
口をついた言葉がそれだった。え、何を言っているんだ。わ、私は・・・・・・。

「もちろんっ そうしましょうよぉ」
え? あれ?そうするの いいの?
福田もまさかの展開に、今度は福田が瞠目を開く。
二人でなら、大丈夫そうだ。よしよし、みきみきと力が湧いてくる。
怒りも沸々と沸いてくる。
「福田くん!!ここへ、シッッダウン!!」

福田が席に座る。
その表情は怖気ついている。

瞠目・・・・・・驚いたり関心したりして、目を見張ること

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