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回転職(短編作品)


 

 まどかは転職を考えている。今の会社とはおさらばして、別の道を歩みたいと思っているが、どうも二の足を踏んでいる。頭が回らない。だが、今すぐにも転職をしたい。だから、大学で仲の良かった、みことめいを回転寿司に誘って相談することにした。
みこはフリーター2年目。めいは工場で働いている。私は営業職だ。
みこが言った。私もう会社員無理かも。ずっとフリーターでいたい。世の中にみんなこき下ろし合戦じゃん。ちょっとした仕事のミスが、更迭の原因になる世の中って最悪だよ。やる気失せちゃうよ。
そうだそうだ・・・・・・。世の中には、一泡吹かせようと、虎視眈々と待ち受けている輩もいる。

めいも言った。
「恣意的に振る舞う奴もいるよね。困っちゃう。
こっちの都合をまるで考えないで、勝手に持ち場を離れる奴とか、マジで嫌っ」
いるいる・・・・・・・。自己中で相手の立場を考えない奴。
文句を言っても、誠意なくして謝り、案の定翌日から、同じような行動を取る。ストレスが溜まる一方だ。

みことめいの話を聞いていたら、結局どこに行っても同じ様な嫌な奴が点在しているのだ。同じようにまた悩むことになる。一度リセットされて、またぐるぐる悩む羽目になるのかぁ

みこが言う。
「回転寿司みたいに、自分で好きなネタだけ選べたら苦労しないのにね」
そう。選べないのだ。職場の人間は。
めいも言う
「心を無にして、ひたすら回るしかないベルトコンベアの如く」
それしかないのかぁ 仕事とは。私はうまく回れそうにない。

それ位しても、二人とも上手く回転寿司に掛けている。私も上手くいってこの流れに乗らないといけない。急げ!乗り遅れるな!急げ!

「あ、じゃぁ、私っ 回転寿司に回転職する!」

それ、いいねっ!
二人が口を揃えて肯定した。

あ、そうだっ ここでいいじゃん!ってかここで働きたいかも!根拠はない。
でも、考え過ぎても同じ考えがくるくる回っているだけ。堂々巡りなんだ。
「とにかく履歴書出してみようっ」

何か頭の歯車が回りだして、気持ちも前向きになってきた。
それから、私たちは大学時代の楽しい思い出話を沢山した。
その分、沢山の寿司も平らげた。

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