見出し画像

Diagnosis and Management of Hyponatremia: A review

JAMA 2022,328:280-291

INPORTANT

低Na血症は最も多い電解質異常であり、成人の約5%、入院患者の約35%で認められる。低Na血症は血清Na値が135mEq/Lより低い場合と定義され、水の保持の結果である場合が最も多い。軽度の低Na血症であっても入院期間の延長や死亡率の上昇に相関する。

OBSERVATIONS

低Na血症の症状や兆候は、軽度または非特異的なものから(脱力や吐き気)、重症または致死的なものまで幅がある(痙攣や昏睡)。症状の重症度は、低Na血症の出現速度、期間、数値により決まる。軽度の慢性低Na血症は、認知機能障害、歩行障害、転倒や骨折のリスク上昇と関連する。前向き研究で、低Na血症の患者は転倒の病歴が有意に多く(23.8% vs 16.4%=正常Naの患者)、7.4年のフォローアップ期間で新規骨折の発症率が有意に多かった(23.3% vs 17.3%)。低Na血症は2次性の骨粗鬆症の原因となる。低Na血症の患者を評価する際に、臨床医は彼らのfluid volume status(hypovolemic、euvolemic、hypervolemic)により分類すべきである。ほとんどの患者で、低Na血症への対応として、原因疾患を治療することが必要である。尿素やバプタンはSIADや心不全患者の低Na血症の治療に効果的である一方で、副作用もある(尿素は不味く、消化器症状がある、バプタンは低Na血症の過剰な補正のリスクや口渇)。重症症候性低Na血症は(傾眠、鈍麻、昏睡、痙攣、心肺の障害)、緊急疾患である。USとヨーロッパのガイドラインは重症症候性低Na血症の治療として、高張食塩水をボーラス投与し1-2時間以内に血清Na値を4-6mEq上昇させ、低Na血症による脳症を改善させることを推奨している(ただし最初の24時間で10mEq/Lを超えない)。この治療方法で、4.5%-28%の患者で、補正の限度を超えると報告されている。慢性低Na血症の過度に早い補正は、(稀で重症な神経合併症である)ODSを引き起こす可能性があり、ODSを起こした場合、パーキンソン症候群、四肢不全麻痺、死亡に至ることがある。

CONCLUSION AND RELAVANCE

低Na血症は成人の約5%、入院患者の約35%で認める電解質異常である。低Na血症への対応として、原因疾患を治療することが必要で、fluid volume status(hypovolemic、euvolemic、hypervolemic)により分類し対応を行う。尿素やバプタンはSIADや心不全患者の低Na血症の治療に効果的である。高張食塩水は重症症候性低Na血症の治療のために使用される(温存される)。低Na血症は、血清Na値が135mEq/Lより低い状態と定義され、成人の約5%で認める。65歳以上の成人では約20%で低Na血症を示し、入院患者の30%、心不全患者の35%、悪性腫瘍か肝硬変のある場合は50%の患者が低Na血症を合併する。低Na血症の病態は、複雑で不均一(heterogenous)であり、症状も様々である。たとえ軽度の低Na血症であっても入院期間を延長させ、資源の利用の増加につながり、死亡率も上昇する。このreviewでは低Na血症の病態、臨床所見、診断、治療について要約する。

Pathogenesis

Naとそのアニオン(大部分がClとHCO3)は血清に溶解する分子のほとんどを構成し、残りはグルコースと尿素からなる。典型的には、低Na血症は水の保持により起こる(水は血清Naや浸透圧(<275mOsm/kg)を薄める効果がある)。有効浸透圧(=張度=tonicity)は、細胞膜透過性の低い溶質(Na、そのアニオン、グルコース)による浸透圧への寄与のことを示し、細胞膜間の水の移動を引き起こす。張度はNaと血糖から計算される。高血糖のない患者では、張度は血清Na値の2倍で概算される。正常の張度は、270-280mOsm/kgである。一般的に(血糖値や尿素の値は正常とすると)、低Na血症は浸透圧も張度も低い(<270mOsm/kg)。低張性の低Na血症は脳浮腫を引き起こす。

  Naやグルコールとは対照的に、尿素は(細胞膜間の透過性が高いので)浸透圧には寄与するが、張度はあげない。この現象はアルコールでも同様である。尿毒症や重度のアルコール中毒を合併した低Na血症の患者では、高浸透圧だが、張度は低く、それゆえ脳浮腫のリスクは上昇する。

  低Na血症は正常または高い張度と関連する。高血糖の場合、細胞内から細胞外に水が移動し、高張度の低Na血症を引き起こす。血糖値が100mg/dL上昇する毎に、血清Na値は2mEq/L低下する。Naの含まれないマンニトールやirrigant solution(何のことでしょうか)は等張性または高張性高Na血症を引き起こす。偽性低Na血症は、重度の高蛋白血症(hyperproteinemia)や高脂血症のある患者で起こる検査異常(laboratory artifact)である。

  水の恒常性は、第三脳室の前壁(anteroir wall)にある受容体により調整される[血清の張度やアンジオテンシンⅡに応答し、水の摂取(口渇)と水の排泄(バソプレシンの放出)を調節する]。バソプレシン(抗利尿ホルモン)は、「張度の上昇(浸透圧刺激)または有効動脈血液量=有効循環血液量の低下(非浸透圧刺激)」に反応し、視床下部ニューロンから放出される。バソプレシンは、ネフロンの集合間でバソプレシンレセプター2を活性化することで水の保持を促進する(これにより、集合間細胞の尿細管側=apical membraneに水チャネルを挿入し、水の透過性が上昇する=水を吸収する)。バソプレシンは有効動脈血液量の減少以外の非浸透圧刺激によっても放出され、たとえば、嘔気、痛み、急性のストレス、術後、薬剤(麻薬や三環系抗うつ薬)などである。

  Edelmanの公式により、血清Na値は、体内の交換可能なNaとKを体内の水分量で割った数値として概算される:[Na+] ≈ Na + + K +/total body water。交換可能なNaとKとは、浸透圧的な活性のある部分を示し、それぞれNa=70%、K=85%である。交換不可能なNaの多くは骨に存在する。Edelmanの公式は、低Na血症とは交換可能なNaとK値に対して水が過剰になっている状態であることを示している。

  原発性多飲症は体内の水分量が増えた状態である。Hypovolemicな低Na血症(下痢)は体内の水分量の減少に対して、交換可能なNaとKが多く減った場合である。Hypervolemic hyponatremia(心不全)は交換可能なNa、Kも増えているが、体内の水分がそれ以上に増えている状態である。SIADは軽度交換可能なNaとKが減少していて、体内水分量が増えている状態である。低張性低Na血症の患者で、水が保持されるとは、水の排泄が減少するか水の摂取が増えることを意味する(Figure 1)。水の排泄が減るとは、典型的にはバソプレシンが上昇するか、GFRが低下するか、溶質の摂取が少ないか、に関連する。バソプレシンの放出の上昇は、SIADの患者と有効動脈血液量が減少した患者で起こる一般的な異常である。SIADの患者では、浸透圧刺激や有効動脈血液量の減少の刺激とは無関係に、バソプレシンの放出が不適切(inappropriate)に起こる。15%の有効動脈血液量の低下があると、バソプレシンの放出が起こると言われており、それはhypovolemicな低Na血症でも、hypervolemicな低Na血症でも起こる現象である。

  Hypervolemicな低Na血症患者では、有効動脈血液量の低下は、ポンプ異常(心不全)、血管抵抗の減少(肝硬変)、arterial underfilling=動脈容量低下(ネフローゼ症候群)により引き起こされる。副腎不全は、下垂体を刺激すること、低血圧や血管抵抗を減弱させることで、vasoplesia(血管麻痺?)を引き起こすことでバソプレシン放出を促進する。バソプレシンレセプター2のgain-of-function variant(機能獲得型の変異)により、糸球体性のSIADが起こることもある。急性腎障害やCKD(stage3、4、5)の患者では,GFRが低下し尿浸透圧200-250mOsm/kg以下にすることができなくなると、水排泄が制限される。溶質摂取が200mOsm/dに低下する場合(peer potomaniaなど)(正常の食事では600-900mOsm/d)、可能な水排泄量が4L/d(最大希釈尿50mOsm/kgでも)に減少する。低Na血症は、水の摂取が腎臓または他の部位からの水排泄を上回らなければ一般的に起きないとされる。

  低Na血症の入院患者のうち、40-75%は入院後に発症し、薬剤(麻薬、バソプレシン、オキシトシン)、痛み、嘔気、臓器不全、術後などで水排泄が減少した状況に、低張性の輸液が投与された複合的な要因で起こることが多い。サイアザイドによる低Na血症は入院する低Na血症の約7%を占め、SIADに似たhypovolemicかeuvolemicな低Na血症である。サイアザイドでSIADのように低Na血症を発症する患者は、低Na血症を起こしやすい素因を有している可能性があり、遠位ネフロンのプロスタグランジン輸送体の機能低下により、水吸収が増加するという機序が考えられている。サイアザイドによる低Na血症の患者では、K欠乏が低Na血症の発症に寄与しているかもしれない(Edelmanの公式の通り、交換可能なKが減少することで交換可能なNaも影響を受ける)。

  低Na血症患者の4%は、水分過多の原因は過剰な水摂取による。正常な腎臓は、1L/hまで水の排泄を増量できる。しかし、原発性多飲症の患者の中には、バソプレシンが最大まで抑制されない(精神疾患やある種の薬剤の内服で):よって患者の水分摂取の中央値は8L/日である。運動に関連する低Na血症の場合、低張な水分の過剰な摂取と、非浸透圧性のバソプレシンの分泌の組み合わせが疾患の主病態である。汗によるNaの喪失の影響は軽微である。


Symptoms of Hyponatremia

ここから先は

10,801字 / 3画像

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?