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朝起きない

朝起きない

わたしは今日起きない
全存在をかけておきない
全存在ってナニそれ
永久に起きない
永久にって今日だけのくせして
とにかく起きない
もしわたしが三十代独身女だとしたら
会社では課長が
ニシタニさんが来てないようだけど誰か連絡もらってる?
A村さんちょっと電話してみて
A村さんがしぶしぶ電話するけどつながらない
ニシタニさん電話に出ませーん
もしわたしが既婚で幼児一人の母だとしたら
おまえいいかげん起きろよ
夫が大声を出そうと
保育園に行きたくない子供が
ここぞとばかりに自分も寝たふりをしようと
わたしは全存在をかけると決意したのだから絶対起きない
崩壊しろ家庭生活なんか
営業課の小っさな社会なんか
わたしは昨晩
高校の先生と女生徒が恋に落ちる妄想に耽った
先生も女生徒も架空の人物で
わたしとは何の関わりもない
ってその妄想楽しいの?
あぁでも、先生はまだ若いのに老け顔で
わたしは先生ってめっちゃおもしろいと思うのに
他の生徒はそうではないらしい
(あ、ここからの〝わたし〟とは女生徒のことね)
卒業するとき先生好きって冗談ぽく言ったら
でもおまえ東京の大学行くんやろ?
ってさらっとかわされ
わたしが夏休みに帰省したとき
ご飯でも食べようよ、ってメール送ったら
卒業したばっかりの女生徒と飯なんか食ってたら目立つわ、
無理やな、と返事が来た
でも冬休みのある夜
バイトから帰って来て部屋で一人でチューハイ飲んでて
酔った勢いで先生に電話した
そしたら先生、今東京の友達に会いに来てるって
そこどこですか、わたしも行く、会いたい
って言ったら先生がタクシーでここまで来てくれた
わたしと先生はやっぱり笑いのつぼが似てる
わたしは先生が好き、もしやっぱりつき合えないっていうなら
それでもいいから今ここでわたしを抱いてくださいと言った
あほ、そんなことができるわけないやろ
わたしはこのとき気がつかなかったけど
先生はまだ十代で東京に住むわたしとつき合うのが怖かったのだ
いつか鳥のように飛んで行ってしまうんじゃないかと
先生、わたし、はじめてじゃないよ
高三のとき先生がうちの高校に赴任して来る前
つき合ってた子がおってん
つき合って、だんだんセックスするようになって
べつに彼が体が目的ってわけじゃないことは分かってたけど
なんかつらくなって別れてん
先生の顔がちょっと歪んだ
やっぱりイヤや
今セックスするだけとかイヤ
先生わたしの彼氏になって
先生がわたしを抱きしめた
……やったね!!
って、朝起きない話はどうなったん
わたしは会社を無断欠勤して
次の日何事もなかったような顔で出勤できるほどの強心臓も持ってなければ
子供にたった一日保育園を休ませる度胸もない
結局起き出して
シャワーをし化粧をする
あるいは家族のために朝食の準備をする
テーブルの上に陰毛が一本載っていた
うわ、やだと思ったけど
夫の陰毛ではなく
わたしの陰毛かもしれない



この詩もわたしの第二詩集『LAST SAY OF SUMMER』の一篇です^^ はっはっはー、まじめに書いてはいるけど、どんな詩(笑)

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