見出し画像

荒れ果てた庭

確かフランスの詩人がこんなことを書いていた
俺はいまや壮年期に差しかかり
周囲の人々は生活を作り上げ実りを得る時分
なのに俺の庭はまだ草ぼうぼうに荒れ果てていて
家の土台さえ造ることができない
俺は今まで何をやっていたのか
バカな自分がみじめで
このまま何も為し得ず老いていくのかという恐怖に
おかしくなりそうなのを堪えながら
草を刈っていると

つい先日ある人がわたしに
「時間はあります」
とふいに言ってくれたことがあった
自分のやりたいことをやる時間は誰にでもあります
その人の言ったジカンハアリマス
詩人に言うべきジカンハアリマス
この二重の意味を考えた
無駄にした青春期はもう返って来ないのに
いや、わたしに時間はあると教えてくれた人だって
どんな青春期を送ったのかは分からない
その人だって
時間はあります
わたしには十分に時間があります
そうつぶやきながら何かに耐えているのかもしれない
おかしくなりそうなのを堪えながら
荒れ果てた庭で
詩人の草を刈る手が見える



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?