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ひだまり

4月。桜も散り終わった晴れた日の午後。べランピングをする。
べランピングと言っても、ベランダにレジャーシートを敷き、コーヒーを飲みながら読書をするだけだ。

山の上の方の家でご近所さんと目が合うことも無いので、ダボダボのパジャマ姿でよい。
その上洗濯物を干したままなので風情は皆無。
遠くからは犬の鳴き声、子供の声、建設工事の音、バスが走り去る音が聞こえてくる。犬の声色からなんとなく自分が吠えられているような気もしたが、申し訳なさそうにしたら鳴き止んでくれた。

頭上になびくバスタオルを眺める。
遊びに来た母親に「マコちゃんの家のタオルは全部薄汚れているね」と言われたタオル達だ。白かったはずのタオルは確かに全てくすんでいる。
実家のタオルは色物と分けて洗っているらしい。長年一緒に住んでいたのに知らなかった。
何でもまとめて一緒に洗っていると言ったら驚かれた。息子が小さかった時は、おねしょをしたパンツもそのまま入れていたし。

身の回りのことがあまり気にならないタチなのかもしれない。それは自分にとっても少し悩みの種で、例えば10年以上使っている玄関マットをそろそろ買い替えようと思っていても、外に出ると忘れている。インテリアの会社で働いていたのに、自分の家にはさっぱり興味がなかった。美味しいパンとコーヒーがあればそれで良いと思ってしまう。お洒落な家に憧れていない訳ではないが、それよりもめんどくささが勝る。

そんなこんなでインテリアの会社を退職した。何度か占いに行った時には、「あなたはお洒落だから辞めないほうがいいわよ」と言われたが、1週間同じパジャマを着続ける人間は到底お洒落とは言えないと思う。

そうだそうだと罵るように、耳元でブンブンと虫が飛んでいる。

日差しが思いのほか強い。ホットコーヒーにしたことを後悔した。眩しくて本も読めないので、所在なく部屋に戻る。

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