詩「潜在する加害性について」
潜在する加害性について。
感情にまかせてハンドルのストライクゾーンを力一杯殴りつけ、甲高く耳に障る音を寝静まった街一帯に響かせる。みっともない放屁。ただカタルシスを得るために。そんなの、後悔するくせに。
一方的に相手の行動を批判し、平穏を奪う機構が全ての自動車に組み込まれている。オーライ、7番バッター。会社お疲れ、そろそろへばった?
何が許せないの。何にキレてんの。クラクションがもっと日々を彩る、もっと愉快な音だったらよかったのに。クラクションで世界平和くらい目指せたらいいのに、あなたは兵器としてクラクションを行使する。
よくも自分の脳みその正しさを過信し、知に溺れて、積み立てるべき言論をたった一文字のクラクションで振りかざせたものだな。相手に押しつけた論理の裏にある傷に気づかないで。エアバックのうらではヘッドランプもボンネットもぐちゃぐちゃで、事故相手の人たぶん顔真っ青。
それを、エアバックに顔を埋めて自分がかわいそうって周りは見ないふりだもんね。あなたが良いなら良いんじゃない、誰も彼もあなたのことが怖くて、否定してくれないもんね。暴走自動車に近づく間抜けはいないよ。追い立てられてる前の車もこれっきりさよならだよ。でもさ、ほら、ハンドル掴んでるあなたの背中、後部座席の人が怯えてるよ。あなたの都合で車酔いだよ、100回嘔吐してるよ、苦くて苦くてなんか甘い胃液の味おぼえちゃってるよ。早くこのときが終わりますようにとも祈れずに、この環境を絶対で普遍だと思い、親に人生を委ねるしかない可哀想な子。はやく温かいお家で冷蔵庫に安置しないと、あんたのリンゴが腐っちまうよ。もう遅いか(笑)
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