詩「視線の有害性について」
視線の有害性について。
画面というフィルターを通してあなたを視ていた。
小学生だったあのころ、日蝕メガネを掛けた。ただでさえ薄れていく天の光に、黒いレンズで自らとどめを刺して、薄らいでしまった世界がこわくなって想像上の太陽でもう一枚覆いをかけた。せかいはとっくに元の眩さをとりもどしていたはずなのだが、もう二度とメガネを外すことはならなかった。
曖昧な記憶で、先生がこれからの人生で見ることはできないって言っていた。だからそうなんだって思った。世界にもう二度とこないなら、ぼくは一生日蝕でいいんだ。
見ることって無料だと思う? 無料であるべきだと思う? いいじゃん、美貌なんて減るもんじゃないんだし美人税――本当になにも減らないの? あなたの視線を浴びせることが誰を傷つけてるとも知らずに。あなたのためのメイクやファッションではない。
通勤電車で常識的に考えていると、目が合いました。運命です、トキメキました♪ じゃねーよ。冗談だよね、さすがに《私たち》にとってあなたが怖い、おかしいって気づいていてよね。視線ってレーザービームだと思う。《マジカルビーム》なんて可愛げのあるやつじゃない。ダミ声の大学のせんせーが振り回してて、赤くて、目に入ると危険らしいし、たぶん放射線物質とかてんぷら油とかカレー臭とか含んでるんじゃないの。視線を向けることでニホンジンは萎縮し、行動を制される。または、白目の面積がアップしたおトクなホモ・サピエンスの眼球は視線をジェネレートし、それはレーザービームで、興味感心や会話の意志をほのめかす。性欲を放射していることになる。もっと見てたい、お近づきになりたい、触りたい、もっともっとその先もってその視線がいってる。被爆したくねーわな。あなたの監視によってまっさらだった純白だった《モニタリングポスト》は異常値を示す。おぢさん構文は受け取らない。
がんばって生きようとしてる人の邪魔ですよ。放置自転車反対! あなたの、肥大した男の顔面と全身が怖いんです! って高らかに謳いたいよ。怖いから言えねーよ。繊細なおぢさんのハートを傷つけちゃうから言わねーよ。美しいものを見ていると、無意識下であなたが取り憑いていき、誰かの心をすり減らしている。さっさと自分で気づけ、そして地面かスマホを見てろ。大人しく子供部屋に直帰して、スカートの聖域をあなたが関わらないことで保持し、あとは自室を警備して会社と自宅を往復しろ。それともリンゴ持ちでしたか笑笑笑笑
いやさ、おぢさん以外も他人ごとじゃないんだよね。イケメンじゃない子は視線向けても嫌がられるだけだし、将来のおじさんなんだからさ、今のうちに慎ましくスマホか地面みて生きることに慣れておこうね。
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