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ルイサダ マスタークラス (5/3.5/4)



ルイサダ先生初登場のラ・フォル・ジュルネTOKYO2024はマスタークラスから始まりました。
マスタークラスは初日(5/3)と2日目(5/4)の2回ありましたが感想をまとめて書いてみます。

5月3日 ラヴェル『夜のガスパール』より ”オンディーヌ”/生徒:朴沙彩

まずこれをお読みくださる方にお断りしておかなくてはならないのは、この日の私がポンコツで『夜のガズパール』の楽譜をバッグに入れたはずがバッグに入っていたのが『クープランの墓』で、結果、楽譜に書き込んで細部をどう弾くかを記録するということができまぜんでした。そのため割とざっくりとした感想的な記録となってしまうと思いますがご容赦くださいませ🙇

生徒さんが弾き終わり、まず最初に仰ったのが次の二つのことでした。

「音の美しさ こういうジャンルの音楽を弾くのにはとても大事なこと」
「現実的な地球の音楽みたいにしないこと」

この”地球の音楽”という表現がちょっと面白かった。�美しさについてはその後も

「特別に美しくないといけない」
「オンディーヌは紗のようなものをかぶっていて顔が見えないと楽譜に書いてある。特別に美しくないといけない」
「ミキモト真珠の輝きがある響き」
「ショパンのオンディーヌにも似ている。現実離れした魅了の力」

などさまざまな言葉で繰り返し仰っていました。

もう一つ何度も仰っていたのが速さのことです。

「若い人は速く弾きすぎる」
「ラヴェルの指遣いはラヴェルが認めた弾きにくさ。でもそれが大事」
「速く弾く方が弾きやすい。遅く弾くのは難しい」

テクニックについても手の使い方や指遣いなどについて盛りだくさんな内容でしたが私が一番印象に残ったのは
「弾き方で種を見せない」
という言葉でした。
レッスンが30分以上延長したのもあり、

ルイサダ先生の手品みたいな演奏にはどれほどの種が隠されているのかしら…と、美しい音楽への執着が非現実的な美しい音楽を生み出すのだと納得しました。

5月4日 ラヴェル『夜のガスパール』より ”スカルボ”/生徒:鶴原壮一郎

ルイサダ先生はこの作品を『映画的表現の頂点』と位置付けられていらっしゃいました。
フランスの近代作品はそういうものを感じていたのでいきなり納得しました。

そしてずっと”スカルボ”って何なのか、半分ぼんやりとしか理解していなかったのですが、このマスタークラスを聴講して初めて私の中でスカルボが像を結びました。
スカルボは半陰陽でとても怖いものであること。

曲の中にもそれが現れている。
3小節の休符の後、左手にカルメンの旋律がテンポを変えて出てくるところからが女性なのだそうです。

うん、すごく納得しました、」
日本語でのいろんな説明を読むと”夜に出てくる滑稽な妖精”なんていう説明があって全くイメージがわかなくて謎だったのです。

中盤、1小節の休符の後からは、悪魔の毒の霧がかかった世界が始まり、オクターブを中心とした旋律のクライマックスでは悪魔が翼を広げる。
私の頭の中ではバットマンのゴッサムシティが浮かびました(なぜ?)
悪魔的表現はリストのソナタのファウストの悪魔的表現にも通じるとのこと。
この段階で私的にはもう”スカルボ”が映像の世界のように思えていました。
すごい!

私はルイサダ先生のマスタークラスは何度も聴講してきて、自分でも何回かオーガナイズさせていただいたことがありますが、ここまで楽曲に対して臨場感を感じたのは初めてで、終わったらものすごく感動していました。

この曲のイメージの参考には無声映画の『ファウスト』と黒澤明監督の『蜘蛛巣城』(音楽:武満徹)をお勧めされていらっしゃいました。
怖いのが苦手でない方はきっと参考になると思います!

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