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「辛すぎたカレー」をイカします! #100日間連続投稿マラソン


 今日も個人的な感想さん からいただいたお題をイカします!個人的な感想さん、ありがとうございます(*´▽`*)



「辛すぎたカレー」

くコ:彡 くコ:彡 くコ:彡💦ピューン

 アパートの玄関を開けると、異臭が鼻をついた。

 もうこんな時間なのに、部屋の電気がついていなかった。同居人の名前を呼んだが、返事がない。私は深呼吸して鼻と口を押さえると、中に駆け込んで一番奥の掃き出し窓を開け放った。咳。咳。充分に息が吸えるようになるまでに五分はかかった。

 部屋の電気をつけると、普段通りの部屋が照らされた。古くて、狭くて、汚い。部屋を占領するように彼の機材が広げられている。テーブルには高そうなカメラ、中古のパソコン、銀色のマイク、照明機材、床に遺伝子みたいによじれてどこかに繋がっているコードたち、youtube用のカラフルなパネル、百均で買った金の蝶ネクタイ。そのとなりに、スプーンが落ちていた。

 近づいてみると、それは真っ赤に汚れている。転がった道筋を教えてくれるようにカーペットにも同じ染みをつけて、それを辿っていくと、テーブルの脇に料理をほとんど残した皿と開封された小さな箱が落ちていた。箱には『本場インドの料理人×世界最強の唐辛子職人』と書かれている。私は思わず顔をそむけた。異臭の原因はこれに違いなかった。

 うめき声が聞こえた。

 洗面所だ。

 

 彼が、倒れている。

 

 私は慌てて名前を呼んだ。頬を叩く。でも反応がない。彼の唇は見たことがないほどに腫れ、顔面がびしょびしょに濡れている。洗面台が真っ赤に染まっていた。

「ねえってば!」

 耳元で叫ぶと、彼はやっと気が付いた。

「どうしたの?これ血?血吐いたん?」

「ちがう」かすれた声。

「じゃあ何?」

「あれ、ゆ、ゆう、ちゅう」

「は?」

「ごめん、ねえ、あれ、止めて・・・生、配信してた、はず」

 彼はテーブルのほうを指さして、真っ赤な唇をぱくぱく動かした。

 私はパソコンに駆け寄った。

『そろそろやばいんじゃない?!』

『おーーーーーい』

『放送事故決定!!!』

『生きてろよーーー』

『馬鹿代表な』

『誰か助けてあげて』

『インドてそなやばいん』

『死んだな』

『おーーーーーーーーーーーーーーーい』

『あ、彼女帰宅?』

『おい同棲しとんのかい』

『彼女顔だし!!!』

『バカップル決定』

『彼女いるんかーーい』

『彼女さん助けてあげて!』

『カノジョ気づいてないんじゃね?』

『換気してるwwwwwwwww』

『せきこんでるwwwwwwww』

『そんなやつといないでおれと付き合え(笑)』

『そんなにかわいくねえ』

『うp主似てる』

『声はかわいいな』

『血吐いたって言ってる?』

『あいつ死んだん?』

『住所どこですか?』

『カノジョ発覚~!!!』

『ここおれ見覚えあるよ、東中野のボロアパートだと思う』

『救急車呼ぶか』

『よんじゃえよんじゃえ』

『俺と付き合ってくれーーー!』

『あほは放っておこう』

『見てるわれらもあほ』

『カノジョもアホ』

『救急車呼びました』

『マジ?!』

『いっそ死ねや迷惑ゆーちゅーばー』

『死んだほうがいいな』

『あ!カノジョ顔出ししてる!』

『コンバンハー』

『かわいくねえな』

『あいつ死にました?』

『どこで知り合ったんですかーー?』

『俺と付き合ってくれ頼む!!!』

『あいつ死んだん?』

 私はコードの束をまとめて引っこ抜いた。画面は一瞬にして真っ暗になった。指先が震え出した。

 遠くで、またうめき声が聞こえた。






 #100日間連続投稿マラソン 20日目でした!お付き合いいただきありがとうございました(*'ω'*)

 やっと20日まで来れました!

 いつも応援してくださってありがとうございます!

 では、また明日お会いしましょう(*´▽`*)/

サポートをお考えいただき本当にありがとうございます。