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「今日を生きる」をイカします! #100日間連続投稿マラソン
イカっていえばソフトさきいか派ですねという方は、まずこちらからお読みいただけると嬉しいです(*'ω'*)
今日はおもちさんからいただいたお題をイカします!(*´▽`*)
「今日を生きる」
くコ:彡 くコ:彡 くコ:彡💦ピューン
『お世話になります。ご返信いただきありがとうございます。では、資料につきましてはこちらで用意します。明日午前十一時までには提出させていただきます』
『Bパターンのデータください。資料作成こっちもちになった。なるべく早くもらえたら嬉しいです』
右手の箸でコロッケの半分をつかみながら、左手でキーボードを打ちつける。行儀がなっていないと思いつつ、繁忙期なのだからしかたないと誰ともなく言い訳をする。許してくれているのだろう、妻は何も言わなかったし、ここ一ヵ月はデスクまで夕飯を運んでくれるようになった。
メールを送信し、コロッケに一口噛みつくと、次はパワーポイントのアイコンをクリックする。カーソルの流転。見上げると、時計は二十三時半を指している。
白無垢のスライドがやっと出現したとき、妻が部屋に入ってきた。
「おいしい?」
「うん。ありがとう」
「明日の準備?」
「そうだね。明日だよ、会議」
「ああ、前から言ってた、あれ?」
「そう。明日なんだ」
「じゃあ、忙しい?」
僕は振り返った。
「ちょっとだけ時間もらえない?」
妻はドアにもたれかかって、こちらを見つめていた。
「ほら、今日誕生日だから。あなたの」
「そうだったか」
「そう」
「でも、もう終わってしまうな」
僕は時計を指さした。
長い針が『11』に納まっている。これでまた画面に目をやってしまえば、今日というものは瞬の音を出して、気づかないうちに消えてしまう。次に時計を見るときは、もう数字が変わっているだろう。
「誕生日はもう終わりだ」
「大丈夫」妻は手招きして言った。「あと五分あるじゃない」
妻は僕の腕をとってリビングまで連れて行き、食卓につかせた。
小さな白い箱が冷蔵庫から出され、僕の前に置かれる。駅前のル・クレールの箱だ。妻の指が封を解く。白と黄色と、赤、やわらかな色がじわりと僕の目を温めた。甘い香り。
二人は銀色のフォークでケーキをつついた。
妻がおまけだと言って、自分のてっぺんのイチゴを僕の皿に乗せた。お礼を言うと、彼女は頬を赤くして笑った。この表情を見るのは久しぶりだ。夜のリビングも、懐かしいにおいがする。
時計が音楽を鳴らした。
「五分間を、ありがとう」僕は妻を見つめた。
「おめでとうございました。また今日、頑張ってね」
妻は微笑んで言った。そして僕の左の口元を指さした。舌を出してみると、かすかに甘いかけらがくっついて、ゆっくりと染み込んできた。
#100日間連続投稿マラソン 30日目でした!お付き合いいただきありがとうございました(*'ω'*)
うおおおお1か月(/・ω・)/(/・ω・)/できました!
みなさんが読んで下さること、またくださるスキやコメントが日々の小川の栄養です。本当にありがとうございます!!
それでは、また明日お会いしましょう(*´▽`*)/
サポートをお考えいただき本当にありがとうございます。