見出し画像

ビッグラブ奄美 その3

3日目:11月25日(土)

 よく寝た。また仕事の夢を見たが、よく寝たので許す。そもそもの予定として寝坊を視野に入れていたので、ギリギリまで寝てシャワーを浴びる……浴びようとするが、シャンプーや石鹸がないことに気づく。フロントに電話すると案の定大浴場に忘れていた。取りに行く。

サウナ忘れ物
シャンプーミニ、じしゃく?
洗顔石鹸

 これはマジで私の勘違いであって欲しいんやけど、忘れ物として「じしゃく」って書かれてない……? この黒い丸い洗顔石鹸が磁石やと思われてる……? いやいやまさか、そんな天然なわけないよな。解読できた人こっそり教えてください。

 今日はのんびりバス旅である。
 なんとなくバスで行ける範囲から、(下記地図参照)①ハートロックやジェラート屋さんがあるバス停で降りる→②30分ほど歩いた先にあるカフェを目指して、海岸沿いを散歩する→③バスに乗って大島紬村にいく というざっくりした予定を立てた。

Googleマップ。赤い四角で囲った5キロくらいの範囲をちまちま楽しむ予定
拡大するとこんな感じ。①ハートロックとジェラート②カフェ③大島紬村

 ハートロックは波打ち際で海水が区切られて小さい池みたいになっているところで、そのうちの一箇所がハート型♡になっているためにパワースポットとされている。が、ここは干潮の前後1時間にしかハートにならない。行けそうなら行きたいなと思い、干潮時刻を調べると11時。30分で準備してバスに飛び乗ったらちょうど着く時間!神!絶対行く!ということで、バタバタと出発。

  最寄りのバス停で降りる。南国の住宅地という感じで、ほのぼのしていて歩くだけで気持ち良い。良い天気だ!

ハイビスカス?
ただの道が美しい
ここを曲がるとハートロックだ!
急に道がジャングルめく。何?
歩くだけで楽しい道。冒険!
急に視界が開けたと思ったら、海!!!


 海!!!
 砂浜が柔らかく、めちゃくちゃ足を取られる。スニーカーごとずぼずぼと埋まりながら、海沿いを必死で歩いていると、声をかけられた。
 なんと、昨日の社員旅行夫婦(夫婦ではない)! 再会を喜んでひとしきり盛り上がる私たち。昨日は一緒に写真を撮っていなかったので、お得意の後ろ姿でツーショを撮ってもらった。良い写真!

また会えて嬉しかった!私の着ているこれが、昨日買ったカヌー柄のTシャツです


 向こうは向こうでバスか何かに乗り込むところで、慌ただしく別れの挨拶をした。

 「またどこかで!」と手を振られた。
 またどこかで。良い言葉だ。



 ハートロックはすぐ見つかった。

海の端っこにぼこぼことある
これだ!ハート型!けっこうきれい。
こっちのが形がわかりやすいかな?近づいて撮った。この後寄せて来た波で死ぬほど濡れた
ハートとか以前に、綺麗すぎる。水が綺麗で小魚とか見える。


 今回奄美に来て初めてのビーチ。海に来るたびに波の周期的な動きに神秘を感じる。波が寄せては返す中、ずっとハートロックを眺めていた。何度か逃げ遅れて海水を被った。


ぺろんと捲れそうな波
逆に、かなり激しい波
童心に戻りすぎて、貝殻拾って遊んだよ


 気の済むまで海でぼーっとしたあと、またジャングルを通って道に出る。前で親子が木を熱心に眺めていた。こちらを見て、教えてくれた。
 「キツツキいますよ、キツツキ」

わかるかな? 耳をすませば、鳥が木をつつく、コツコツという音が聴こえた
行きがジャングルということは、帰りも当然ジャングル


 この近くには有名なジェラート屋さん「ラフォンテ」がある。食べログ百名店にもなっている。

素敵なお店!かわいい!この左のテラス席で食べるよ
種類ありすぎで迷う
黒砂糖ミルクと、たんかんシャーベットにしました


 わたしはアイス等冷たくて甘いものがそんなに得意ではないのだが、あまりにも美味しくてペロリと食べてしまった。感動した。トリプルでもよかった……
 テラス席もまた格別で、車や人通りを見ながらのんびり過ごした。予定は未定で、時間はいくらでもあるのだ。

ラフォンテいい店すぎて、うっかり転職しそうになった


 ここからは、のんびりと道沿いに歩く。
 基本的にずっと右手に海があるので、降りられるようになっているところでは全部降りた。どの砂浜もそれぞれに美しかった。

この道を降りると
海!!
また道に戻る
この道を降りて、海!
海!
海すぎる!!!


 何度も何度も海に出る。海に出るたびに毎回新鮮に、心が目の前の海に溶けていく感じがする。私という人間は理性が弱くできているため、欲求に負けて砂浜に寝転がってしまった。砂だらけになった。気持ち良い……。

 海の写真ってどうしてこう上手く撮れないんだろう。肉眼だともっと厚みというか、視界の中の縦向きに占める範囲が広いのに、レンズ越しだと薄くなる。レンズの曲率?
 この日は晴れ〜曇りという感じで、雲ひとつない青空!という感じではなかったが、写真ではなく肉眼で見る場合、その方が美しかった。というか、私の飛蚊症やばすぎるので、その場合多分何も見えないレベルだったから助かった。

 この後もいくつか美しい海があったが、私有地ばかりになり降りられなくなる。そうこうしているうちにカフェにたどり着く!!
 「奄美きょら海工房」、オーシャンビューすぎるカフェです。併設の設備で黒糖も作っている。

右端に見えているのが、サトウキビ作るための木?みたいなやつ
テラス席あまりにも贅沢。さとうきびジュースと、もずくクリームパスタを注文


 テラス席でもずくクリームパスタ(美味しい)を食べていると、横の席の女の子たちの会話が聞こえた。
 「えーおめでとう!いつわかったん?」
 「つい最近!だから、まだ全然いちごくらいの大きさで」
 妊娠報告だと思われる。苺くらいっていう表現が可愛い。

じわじわ読み進めてた「センセイと鞄」。センセイと主人公も島に行ってるじゃん!!と興奮した。偶然の神選書


 カフェ併設の工場?で黒糖を作っている様子を覗いてみると、「今日は塩作ってるけど舐めてみる?」と声を掛けられた。連日、観光客に優しい島だ。塩を舐めさせられた。辛い。
 塩が溶けている水のところが“にがり”だよ、と言われ、お兄さんの手のひらの上で塩水を振って塩と液体に分離させる。この液体舐めてみ、と手にうつしてもらい、何も考えずにそのまままあまあの量を口に入れてしまい死ぬかと思った。よく考えたら(よく考えなくても)飽和食塩水。この世で最も塩辛い水。最密充填構造なんて言葉忘れても構わないので、こんなことくらいすぐにわかるようになりたかった(化学科卒)。今日の夜は島バナナを食べてカリウムを摂取、塩分を排出しよう……。

 バスに乗って大島紬村に向かう。ここは当初予定に入れておらず、急遽調べて「まあ行けそうだし行ってみるか〜」としたところ。結論から言うと、感動したので見逃さなくてよかった。

大島紬村
ここでガイドさんを待つ。屋根が大島紬柄なのちょっとウケる


 単に大島紬の作り方や成り立ちを説明するためだけの施設ではなく、実際にここで職人さんたちが働いて大島紬を作っている。その様子を解放し、ガイドが説明する形で見て回らせることで観光名所にもなっている。という一挙両得の施設なのである。16時ガイド回は私1人だった。1人のために恐れ入ります。
 言われたら、大島紬って奄美大島だよね!くらいの認識だったが、世界三大織物の一角を担っているらしい。すごい。

 大島紬って皆さん知ってます? 私は、クラシカルな何パターンかの柄のめっちゃ高い着物、としか思っていなかった。

こういうやつね。(https://story.nakagawa-masashichi.jp/craft_post/115675)


 大島紬は、糸から染めているのが特徴らしい。そして織ったあとは染めない。
 ざっくりと言うとつまり、完成系の柄を先に決めておいて、その柄になるように縦糸と横糸をそれぞれ染めるのだ。「縦横交互に織って外内外内ってなって折り返して次の1ミリをまた外内外内ってなるから……花柄にするにはここを何センチ黒、何ミリ白にして……」という設計をして、その通りに糸を染める。そして後は「その柄用」に染められた糸を交互に織っていくだけで柄が浮かび上がるようにする。だから大島紬は裏から見ても同じ柄に仕上がる。
 感動。感動というか、魔法みたいじゃない!? そんなこと人間に可能なのかと思う。だから決まった柄が多いんだな。あと、高い大島紬は質がいいというわけではなく、この柄の複雑さで工数が大きく変わるからそれが価格に跳ねているらしい。なるほど! 何も知らなかった。

吊り下げられているのが泥で黒に染めた糸。設計もややこしいが、この泥染めも何度染めもする必要があり、普通に数週間数ヶ月かかる
実際に泥染めをする場所。ここに糸をつけて染める。
横にある木は昨日の復習のやつ!
普通に説明と関係ない道も自然豊かすぎた。流石奄美
この辺りは貴重な鳥もいるから、奄美関係なく鳥を目当てに来る人もいるらしい

 独特の黒に染める泥染めそのものも毎日毎日何週間何ヶ月もかかるし、まずは一次的に染まった糸を今度は「織った時に上手くいく用」に厳密に染め、そしてそれをルール通りに織っていってようやくできる……ので、何ヶ月とか、場合によっては一年とかかかる。何百万円もするのも頷ける。
 同じ柄の布を作るもっと簡単な方法はいくらでもあると思うが、この針の穴を通すような方法を取り続けている美学、職人技、そういったものに私は心から感動し、大島紬の筆箱を買いました(服は流石に無理だった)。

 ついでに地図で見ると近そうな「2つの海が見える丘」に寄って帰ろうと経路検索をして絶望した。トラップすぎる。

高々数百メートルだと高をくくっていました


 バス停に向かう。バス停で大島紬の余韻に浸る。余韻に浸れすぎている。……バス来なさすぎじゃない?
 時計を見ると大きく時間を過ぎている。救急車が2台、パトカーも2台、空港の方に走っていった。ドップラー効果が耳に残る。どんどん不安になる。これを逃すともうヒッチハイクかタクシーしかない。
 と、そこにバスが来た。よかったー!
 「事故があって遅れちゃってね!ごめんごめん!」とやたら陽気な運転手だった。
 薄暗い道路に、観光バスは月みたいに明るい。

 大冒険を終え、ホテルニュー奄美♪に荷物を置く。今日は疲れたのでサクッとご飯を食べよう。
 ホテル徒歩30秒の「わとわ 奄美店」に行く。ここはパッと明るい可愛い店だった。店員さんが次々に話しかけてくれる。

黒糖いちじくバターとクラッカー
甘めの黒糖焼酎。確かに匂いがバニラみたいだった
黒豚餃子
和牛寿司
何だっけ名前、、練り物にチーズ乗せて焼いたやつ


 とにかく全部美味しかった。途中、石焼き芋の屋台が通る。常連らしきお姉さんと店員さんが、あの焼き芋本当に美味しいのよ!と教えてくれる。そうなんだ。今度チャンスがあったら買おうかな、と思った瞬間、今日が奄美最終日だと気づく。石焼き芋はドップラー効果で去っていく。

 あれっ思ったより値段いったな、と思い、明細を見ようとしたらそういうことじゃなくてメッセージが書かれていた。可愛いからいっか!!!

お姉さんの手書きメッセージ。嬉しい


 123マートという、お土産をたくさん売っているコンビニで爆買い。ずっと気になっていた島バナナも買った。夕方取り過ぎた塩分をKClにして排出するためである。
 私はバナナがあまり好きではないのだが、島バナナは全然味が違った。あのバナナ特有のもったり感がほとんどない。甘酸っぱい。甘酸っぱくて味がかなり濃い。いくらでも食べられた。

島バナナ。まず短くて可愛い。

 ベッドの上で、読書ではなく、YouTubeを見始めた。M-1の3回戦面白い。日常がじんわりと主導権を取り戻し始めるのを感じる。明日は帰るだけだ。最高の1日だった。



まだ苺くらいの胎児引き連れて光差す朝食バイキング /冴

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?