『たのしいムーミン一家』旧版・新版比較_第1章①
『たのしいムーミン一家』の原書
TROLLKARLENS HATTは1948年版・
1956年版・1968年版があり、
旧版日本語版は1948年版(の英語版)を
新版日本語版は1968年版を原書としている。
そして、英語版は意訳が結構多いことが
Tove評伝でも言及されている。
旧版から大きく改訂している新版ムーミン全集
1巻~8巻の中でも、『たのしいムーミン一家』は
語句の表現だけでなくプロットも一部異なるが
その理由は:
・原書の改訂によるもの
・英語版の意訳によるもの
・英語版から翻訳された際の訳によるもの
この3つに分かれている。
そして英語版は今でも1948年版準拠のままなので
英語版と日本語新版とをつき合わせて読むと、
何でこうなってるの?な箇所のオンパレードとなる。
では具体的に何が違うのか。
1章から順番に例を挙げて解説をば。
※序章は原書改訂なし
弓じゃないんですか?とよく訊かれるのだが
原書表現は
»Alla små djur slår rosett på sin svans»で
rosettとはbow/rosette/bow tieのこと。
英語版は
"All small beasts should have bows in their tails"
bowには弓の意味もあるが、ここは
リボンなどの蝶結びと解釈するのがよいだろう。
【原書】
de flyttade bara in nya sängar och gjorde matbordet större.
直訳すると「食卓を大きくした;拡げた」
【英語版】
just adding another bed and putting another leaf in the dining-room table.
英語版、葉っぱを出してる……。
恐らくここは
序章で描写されている、冬眠の前には
「おなかにどっさりもみの葉をつめこんでおく」
からの発想と思われる。
【原書】
När Snusmumriken kommit till sista versen av sin vårvisa stoppade han munharmonikan i fickan och sa:
munharmonika(n)とはmouth organつまりハーモニカのこと。
【英語版】
When Snufkin came to the last verse of his spring song he put his mouth-organ in his pocket and said:
英語版でもハーモニカとなっているのだが……。
訳語が横笛になった理由は不明だが、絵本
『さびしがりやのクニット』にはこんな場面がある。
横笛を吹くスナフキンがここに。
但し、記述はSnusmumrikenではなく
en mumrik(ひとりのムムリク)
となっているので、スナフキンとは
別人なのかも……?
(この項、まだまだ続く……)
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