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飴ちゃん問題

ムーミンママは、片づけ台のそばに置いてあったバスケットに、サンドイッチをつめこみました。そして、缶からキャンディをひとつかみと、べつのかごからりんごを二つ取り出しました。

新版『ムーミン谷の彗星』

『ムーミン谷の彗星』1章で
ママが缶から取り出すのは旧版でも
キャンディだったが、実は一旦
キャラメルに修正をしていた。
(「片づけ台」も初版では「流し台」と
していたが、後に発覚した事実により変更)

理由はお恥ずかしながら私の思い込み。
下村隆一さん以外の訳者さんが、原語の
karamellerをキャラメルと訳していらして、
スウェーデンに住んでいらしたこともある
小野寺百合子さんもキャラメルとされているから…
と、あまり確認をせずにキャラメルに変更して
しまったのだ。怠慢!!

karamellerはキャラメルではない!と発覚したのは
『たのしいムーミン一家』旧版5章で登場する
「さとうがしの子ぶた」(これについては後述)
について調べていたときのこと。
Henrikaにもトーベ評伝の著者Boelにも
karamellerは日本でいうところのキャラメルではなく、

・硬くて
・(大抵は)一つずつ包装されていて
・色も茶色だけじゃない と判明。つまり
トーベが大好きだったというチョコ入りミント
キャンディ”Marianne” はkaramellerであり、

karamellerと聞くと、まず浮かぶのは
Fazerin Parhain/Fazers Bästaだというので、
現物を入手し、形状と断面を確認。


1袋に7種類入っています


KISS-KISS


Islanti


Suometar


Lakta


Tosca


Orange


Rex

見た目も、食感も間違いなくキャンディ。
(ちなみに、日本語のキャラメルにあたるものは
kolaやkolakaramellというのでした)

そんな訳で、新版『ムーミン谷の彗星』
2刷目から「キャラメル」を「キャンディ」に
修正しており…大変申し訳ございません。
ただ一人「キャンディ」としていた下村隆一さんは
ムーミン谷の夏まつり』8章冒頭の挿絵を見て
これはキャラメルじゃないぞ、と
判断されたのか……。ああもう、猛省。

そして、「さとうがしの子ぶた」問題。
旧版『たのしいムーミン一家』5章に登場する
Polkagrisについて。
grisは豚だけど、Polkagrisというのはこちら↓

縞々のミントキャンディのことで
棒状だったり杖の形をしたり、
色は赤白が基本だけど、色・
フレーバー共にバリエーションあり。

このPolkagrisはヘルシンキのお菓子屋では
あまり見かけない(Henrika談)らしく、
ムーミン全集にも『たのしいムーミン一家』に
登場するのみ。『一家』の洞窟お泊りはそれだけ
特別感のあるものだったのかもしれない。
(新版では「しましまのミントキャンディ」という
訳にした)

しかし、話はここで終わらない。
『ムーミンパパ海へいく』5章と7章に
登場するrandiga karamellerは
包装紙がrandiga(striped)なのか
それとも中身がストライプなのか?
karamellerで縞々といえばMarianneで

しかもMarianneはToveの好物。
しかし、『海』の挿絵を見ると……

キャンディそのものがrandigaじゃないのさ!!

Marianneは包装紙はrandigaだが
キャンディそのものは縞々ではない。しかし
文章にはどちらが縞々なのか言及されていない。
そしてPolkagrisにはバリエーションとして
こういうものもあり……

『海』に登場するのはPolkagrisなのだろうか?
HenrikaとBoelに再び訊いてみたものの、
はっきりとした結論は出ずだったが、
PolkagrisならPolkagrisと表現すると思われ……。
いずれにしても、キャンディであることに
変わりはないのだが。

たかが飴ちゃん、されど飴ちゃん。
思い込みの怖さを痛感した飴ちゃん問題だった。

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