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『たのしいムーミン一家』旧版・新版比較_第2章②
旧版と新版とでは大きく改訂されている
『たのしいムーミン一家』の比較
第2章①はこちら↓
さて、今回は
![](https://assets.st-note.com/img/1719629504303-tyCxF0VwJJ.jpg?width=800)
ムーミントロールが何ともグロテスクな
「カルフォルニアの王さま」
に変身してしまった原因はやっぱり
シルクハットではないかと、検証を試みる
スノークとムーミントロールとの会話から。
【旧版】
「そうだな、だれかをおだてて、あの中へはいらせることができるかもしれないよ。」
こういう案を、スノークがだしました。
「だけど、そりゃいやしいペテンだよ。二どともとへもどれるかどうか、わからないものね。」
と、ムーミントロールはいいました。
「にくらしいやつなら、かまわないんじゃないか。」
と、スノークがいいだしました。
「ふむ。」とムーミントロールは考えこんでいましたが、やがていいました。
「心あたりがあるの?」
「たとえばぶたさ。」
ムーミントロールは頭をふりました。
「あいつは大きすぎるよ。」
【新版】
「そうだね、だれかをそそのかして、入れられないかな」
「そうしたいところだけど、元へもどれるかどうか、わからないんだよ!」
「にくらしいやつなら、かまわないんじゃないか」
と、スノークが提案しました。
「ふむ。心あたりはあるの?」
「大ねずみは?ぐちゃぐちゃのぬかるみにいるやつ」
スノークのことばに、ムーミントロールは頭をふりました。
「あれは手ごわいよ」
「豚」で「大き過ぎる」のか?
「大鼠」で「手強い」のか?
まずは原書を参照してみよう。
![](https://assets.st-note.com/img/1719716228466-M6mIYlzGS5.jpg?width=800)
1948年版を見ると候補者(①)は
Piggsvinetとある。piggsvinetとは
ヤマアラシのこと。
![](https://assets.st-note.com/img/1719716610189-PIcT20wwKC.png?width=800)
piggsvin(et)という語はノルウェー語だと
ハリネズミの意になるらしい(!)
(スウェーデン語でハリネズミはigelkott)
ヤマアラシは草食の齧歯目
ハリネズミは雑食の食虫目だそう。
更に、旧版の元になっているであろう
英語版を見てみると……
![](https://assets.st-note.com/img/1719717910885-mC95n6EuGH.png?width=800)
あらまPig-Swineになっている。
そのため旧版は「ぶた」になっているのだろう。
そして1968年版原書を見てみると
候補者(①)は
Stora råttan på slaskhögen
となっていて、直訳すると
「ぬかるみ(雪解け)の山の上の
大きなネズミ」といったところ。
そのため新版では
「大ねずみは?ぐちゃぐちゃのぬかるみにいるやつ」
とした。
そして①の生きものは②
大き過ぎるのか手強いのか。
![](https://assets.st-note.com/img/1719716228466-M6mIYlzGS5.jpg?width=800)
1948年版原書は
"Han är för stor." で
英語訳版のとおり
"He's too big"なので旧版訳は
「あいつは大きすぎる」
一方1968年版原書は
"Henne går inte att lura."で
「騙すなんて無理ゲーだろう」
といったところ。
そのため「てごわい」としたのだが。
ちなみに
訳語には反映させていないが、
1948年版原書では
【Han=彼(男性)】は大き過ぎる
となっているのに対し、
1968年版原書では
【Henne=sheの目的格】になっているので
大ネズミは女性という……!
![](https://assets.st-note.com/img/1719719967628-ewawqpJCLQ.jpg?width=800)
Han=Heと描写されております
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