M子の物語<準備>

↑前回までのストーリー


こうして、M子はプレイバックシアター・ラボ主催の
アーツベースド・ファシリテーター養成講座に参加することになった。

講師の八螺子とユーリーは、道なき道を自分で開拓してきた方々で、
M子が人生で接したことのない大阪・西成区の生活保護のおっちゃんや、
アルコール依存症の方たちにワークショップを長年やられてきたという。

M子は、急に不安になる。
自分の器の小ささ、経験の無さ。
急に自分が小さな鳥かごの中で、同質の人たちだけに囲まれて育ったやわな存在に感じた。

・ ・ ・

受講生は様々なバックグラウンド、
経験を持ったメンバーが集まっていた。

M子と同様、ドラマセラピストを目指す宇ノ智と
偶然ここで出会えたことは嬉しい驚きだった。
プレイバックシアターや音楽をしているHikari。
落語や朗読をしている蛙。
フォーラムシアターや合気道をバックボーンに持つT。

「ファシリテーターとして、必要以上に引き出さない」

「セラピーの場では、ベストは尽くすが、安心安全なんて保障できない。
自分の身は自分で守れるようになることを目指す」

「人との関わりにおいて、どんな声で関わるのか重要。
 大抵の人は声に注目していないようだ。
 コミュニケーションにおいて内容の方が重視される。
 判断*は声でしている。からだが変わると声が変わるので、
 大事に思っている。」
(*判断:ほんまのこと言っているのかなあ?などと思った時の判断材料。)

 M子は二人の師から、多くの智慧を伝授されていく。
 そして、仲間からもインスパイアされる。
 以下は彼らのジャーナルの一部である。

「私」が他者に何か良きことをするのではない。「私」を通して、良きもの(それは野生なのか、霊性なのか、直感なのか、わからないが)が発現されることを目指すのだ。「私の力」の発現ではなくて、私を通して、あるいは場そのものから、良きものが生じることを目指すのだ。目指すというのは、自己を整えるだったり、解放するだったり、そういう方向になりそうだ。

Tジャーナルより

自分は「起こった対立」に当事者同士、その場にいる他の人々も含めてが「後腐れ」が無い様に進められるファシリテーターになりたい・・とつくづく思った。今回ユーリーの姿勢から学んだ:「それはどういう意味なのかを聴き」「落ち着いて自分の考えを説明する」「自分の立場から逃げない」・・ということを大切に保持して行きたい。

Hikariジャーナルより


年明けから始まった講座は、あっという間に2か月が経過し、
いよいよM子主催のワークショップ開催日が近づいていた…

(つづく…)

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