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金沢のわき水と小立野台地

金城霊澤

金沢の地名の由来は、金城霊澤。
芋掘り藤五郎が芋をこの沢で洗っていたところ、砂金が見つかったという伝説もあります。

金城霊澤

ここは、金沢城の向かい、兼六園のすぐ隣にあたります。小立野台地の端っこです。

出典 : 国土地理院地図

この霊水は、小立野台地からのわき水だと考えられています。

先日、「金沢の家」という心惹かれる名前の建築を見つけ、訪ねたのがちょうど小立野台地の下の笠舞という場所でした。

個人宅なので、内部は見学できませんが、外観は見ることができます。 

金沢の家

モダンな外観で隣の伝統的町家とのコントラストが不思議な雰囲気を醸し出しています。
大きな屋根は、急角度で北陸の雪対策に効果的です。

ここまで来たら、この近くにあるわき水スポット、笠舞の大清水(おおしょうず)を見に行きましょう。

笠舞の大清水

住宅街の細い通りを入ると、清水があります。

笠舞の大清水

秋なので、トンボも遊びに来ていました。

看板に止まるトンボ

水を触ってみるとかなり冷たく、夏にくればよかったなぁとやや後悔。

水中の植物

以前来たときには、ご近所さんが水の中のもの様な植物の清掃をしていました。
昔はここで、野菜を洗ったりしたよと言っていました。

この辺りは、15種類ある加賀野菜、ヘタ紫茄子の産地です。崎浦地区と呼ばれるため、崎浦茄子とも呼ばれます。

地元で取れた野菜を洗い、井戸端会議をここでしていた様子が目に浮かんできます。

先の地図上では、大清水から次のわき水まで何もありませんが、この崖下は小立野のわき水群があると言われています。ついでに、他のわき水も探してみましょう。

ゆうやかな勾配の道

住宅街の道を抜けていきます。
でも、この坂は善光寺坂といい登ると、台地に登ってしまいます。

善光寺坂上からの景色

今回は登らず、左へ曲がります。
崖下から見ると、小立野台地にも家が立ち並び2段状になっているように見えます。

笠舞から見る小立野台地

小立野のわき水群

奥の道を進んでいくと、水が流れていたのではないかと思われる水路がありました。崖下から続く水路。

崖下の水路

ちょうど近所の人がいたので、尋ねてみると、昔は水がよく流れてたけど最近はあまり見ないとのこと。
残念ですが、次へ進みます。

崖からのパイプ

道沿いにパイプはちょくちょくありますが、水が流れているものにはなかなか行き当たりません。 

崖からの水の圧力を和らげるための、水捌けとしてのパイプでもあります。
実際、この辺りで、1階が駐車場として作られている家には、駐車場の奥の壁にパイプがあり、雨が降ると水が流れてくると言っていました。

雨の時には道沿いのパイプからも水が出ているはずですが、今日は晴れです。

歩き続けていくと、ありました。

マンション脇から流れる清水

ここにも、たまたま水を汲みに来ている人がいました。
何に使うのか聞いてみると、植物にあげるということです。ほかには、畑にまくひともいるし、鮎を育てるのにもいいといいます。

崖からのわき水なので、土地の中の成分が養分になるのかもしれません。
ここの水は、大清水よりも暖かめでした。

近くの水路を見ると、大清水と同じような植物があり、つながってはいないけど、元は同じ水なんだなとふと思いました。

大清水まわりと似た植物

さらに進んで行くと、住宅の間にパイプや水路が多くなってきます。狭間から、ときに小立野台地の上の家が見えがくれしています。

住宅の間に水路やパイプ

石引で、金沢城の戸室石の道を追ってきたときに辿り着いた亀坂の近くのわき水に再会です。

わき水

途中で、面白いガラスブロックの利用をしているところを見つけました。石垣の上に、デザイン的ラインとして並べられています。

石垣上にラインをつくるガラスブロック

笠舞あたりには、ガラスブロックを使ったマンションがチラホラ。

ガラスブロック建築もいいなと思いつつ、通り過ぎてきたところだったので、ご縁を感じます。 
亀坂へは登らず、突き進むと旧長谷川町の清水です。

旧長谷川町の清水

ここでも近所の人がいて、飲めるかどうか聞くと、飲んだことはないと言っていました。

「金沢のわき水」によると、昭和63年小立野・古府線が完成する前には飲用としても、その後は、洗濯、消雪、植栽などに用いられているとあります。

左は、地下からのわき水をホースで出していて、右のパイプは崖からの水を流しているそうです。 

この後ろの道路の擁壁ですが、下部は段上になっていて構造的にも強そうですが、外観がきれいです。

道路の擁壁

ここも水が、土から抜けるようにしてありますが、近づいてみるとペットボトルが使われています。

ペットボトルの排水口

エコフレンドリーです。 
壁の模様はどことなく金沢城の石垣風。

石垣風の擁壁

道路自体は昭和63年につくられたものですが、ここは近年整備された気配があります。

上の道路へ登ってみると、道路の反対側にも崖地対策で段上になっている箇所がいくつかみられました。

道路から清水へ降りる階段があり、そこから今は住宅街が見渡せます。
奥には山が見えますが、小立野台地の裾野は一面農地で緑が広がっていたのだろうと感慨にふけってしましました。

小立野台地からのわき水は他にも

日も暮れてきたので、今日は詣でませんが、小立野台地の笠舞とは反対側、北側にも、わき水があります。

馬坂不動尊のわき水

椿原天満宮の近くにあり、天神町にある旧街道沿いの街並みも見られるので散策におすすめです。

中心市街地の石浦神社の境内にもわき水があります。

兼六園、金沢21世紀美術館と金沢の観光名所に挟まれた寄りやすい場所です。
わき水にも思いを馳せてみると、固定化された金沢と違ったものを感じ取ることができるかもしれません。

参考
「金沢のわき水」金沢市編
「金沢のわき水」中川耕ニ 文/金沢市環境部環境保全課
「さきうら」

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