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ポートランドより猿丸神社を想う

一年前にはまったく想像もしませんでしたが、いろいろな縁があり、現在ポートランドにいます。

ポートランド

ポートランド(オレゴン)
スチール橋からの景色
赤い橋はブロードウェイ橋

ウィラメット川という川が、街の中心を走っていて、面白い橋がたくさんかかっています。

スチール橋全景
バーンサイド橋
tilikum crossing

跳ね橋だったり、2段になっていたり、トラム、歩行者、車、自転車がうまく通行できるようになっていたりと、橋だけでも楽しめます。話をするとキリがないので、次へ。

ポートランドは西海岸側の都市です。
先住民以降の移民してきたアメリカ人の歴史としては、19世紀初頭から始まります。

その頃は、森林が川の両側の土地全体を覆っていたんだろうと想像。
今では、中心部はビルが立ち並んでいます。

パイオニアスクエア

でも、街中のところどころにかなり広い公園がたくさんあります。

ペニンシュラパーク

有名なローズガーデンは、他にもあるのですが、ここにもローズガーデンがあります。

先住民時代からバラは伝統的に薬として使われていたということ、
そして戦時にはヨーロッパから品種保護のためいろいろなバラが送られてきていたということで、ポートランドはバラの街でもあります。

公園を、少し離れた場所から見ると森よのうです。

道路から見たペニンシュラパーク

そこで、何を思い出したかというと、神社です。
これまでも、いろいろな公園へ行って大きな木を見るたびに御神木?と気になることがありました。

ローレルハーストパークの大きな木

金沢でも、神社は街中にあっても、周りに御神木が残っていて森のように見えるところがよくあります。 
例えば、上野八幡神社。

上野八幡神社
図書館から見た上野八幡神社

石川県立図書館から見ると、住宅街の中で森のように見えます。
石川県立図書館については、こちらをどうぞ。

猿丸神社

猿丸神社は、兼六園から続く小立野台地と犀川の間にあたる場所にあります。
このあたりは一面田畑で、街のはずれでした。

加賀国金沢之絵図(加筆)
寛文8年
金沢市立玉川図書館蔵

この神社も、今では、住宅街の真ん中です。
外から見ると森のように見えます。

猿丸神社

ケヤキ、タブを中心とした木々は、金沢市の保存樹林となっています。 

猿丸神社の創立は、千年ほどさかのぼる平安時代といわれています。

本殿は、明治時代に再建されたものですが、拝殿とその手前にある石灯籠は江戸時代後期のものです。

赤戸室石のような灯籠

拝殿の礎石も、赤戸室石のような質感の石です。

そして、上部には、シンプルな雲のような彫刻のされた海老虹梁(えびこうりょう:高さの違う箇所を支える梁で、エビのように曲線のある部材)。

四隅で垂木を支える部分にも、雲の彫刻が施されています。

そして、江戸時代らしい蟇股(かえるまた)の彫刻。もみじです。

このもみじが、御祭神を暗示しているのかもしれません。

御祭神は、三十六歌仙の1人、猿丸大夫

御祭神は、猿丸大夫。三十六歌仙の1人です。
次の歌を詠んだとされています。

もみじも出てくるので、彫刻はこれを表したのではと踏みました。
※古今和歌集では、詠み人知らずとなっています。

奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の
声聞く時ぞ秋は悲しき

小倉百人一首

まだ夏でしっくりときませんが、寂しい印象の歌です。

もみじも散り、秋も終わりにさしかかり冬を迎える寂しい時期。
鹿が相手を求め鳴く声が聞こえる。 

猿丸大夫は、実在したのか架空なのかと議論もある人物です。

不穏な一説では、柿本人麻呂が権力により消されてしまい、政権側をはばかり「人麻呂大夫」とも呼ばれていた人麻呂を「猿丸大夫」の名で呼んだとも。
ただ、これは人麻呂に際立った官位がなかったことから粛清があったとは考えにくいと否定されています。

猿丸大夫について、金沢では、各地をまわり最後に、神社のある笠舞村に居住し、田畑を再開発したという伝承があります。

笠舞の地名も、猿丸大夫のかぶっていた傘が風で舞ったことからつけられたともいわれます。

実際的な活躍が伝えられていて、地元の神様としてのありがたさが増す気がします。

でも、猿丸大夫は、文人の神様です。

拝殿の扁額

もともと本殿にあった扁額は、小野道風の筆によると言われていて、現在の拝殿の扁額もそれに近い字体です。

神社には、文人により奉納された扁額もいくつもあるといいます。
拝殿の中には、絵馬が飾られています。戦の場面を描いた絵馬は、江戸時代のものです。

猿丸神社が、歌詠を祀る神社として認識され始めたのは、江戸時代の文芸復興期。
元禄時代には、金沢の俳人による俳諧選集「猿丸宮」も納められました。

ポートランドで俳句の本を買いました。
ここから、猿丸大夫を遥拝しつつ、少しずつ読んでいきます。

参考
「金沢・猿丸神社の伝承と信仰」
Wikipedia 猿丸大夫

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