(98)ローズ・リング ~日本橋高島屋開店90周年に寄せて



今年、開店90周年を迎えた日本橋髙島屋さんの期間限定ショップ(5月3日より9日)出店に合わせて、
昨年来薔薇指輪を制作をしています。

思えば、私の欧州生活は常に薔薇に彩られていました。



ロンドン在住時代、プリムローズヒルから、リージェントパークのクィーンメアリーズローズガーデンまでは至福の散歩コースでした。
今くらいの季節から、「イングリッド・バーグマン」「プライド・オヴ・イングランド」「ノスタルジア」などと名付けられた多種多様の薔薇がまるでこの世の楽園のように香り高く咲き、人々の癒しスポットになっていました。



パリに移動して、慣れない土地での生活を慰めてくれたのも、バガテル公園の美しい薔薇達でした。

昨夜、ふと思い立って、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大卒業生に送る演説を聞き直してみました。
[英語スピーチ] スティーブジョブズ 2005スタンフォード大学卒業式演説| スティーブジョブズスピーチ | steve jobs | 日本語字幕 | 英語字幕 | Full speech - Bing video
”Stay hungry! Stay foolish!”のフレーズで有名なその演説で、彼が話した3つの大切なこと。

自分が今つけるDOTS「点」が将来なにかに繋がると信じること。
自分が心から好きで全力を尽くせる仕事を探すこと、直感を信じること。
「死」を前にすると、おのずと何を優先するかみえてくるということ。

薔薇は、私の中にあった「点」の一つであり、
指輪という形になったのは、繋がるべくして繋がった仕事のひとつなのだと、そんな風に思えてきました。

星の王子様に登場する薔薇は、傲慢の象徴のような存在ですが、「大切に思う気持ち」に気づかせてくれた存在でもあります。
「自分は主役」と咲き誇る薔薇は、以前は必ずしも好きな花ではなかったのですが、どういう心境の変化でしょう、散歩道に自然のままに咲く薔薇に親しむうちに、いつの間にか、特別な存在になっていました。

指輪にしようと思い立った時、驚くくらいすべてがタイミングよくスムーズに進みました。







既にDiorなどのグランメゾンでキャリアを積み始めていた旧知のSegoleneが昨年からフリーランスになり、デザイン提供が可能になったこと。
昨年知り合い意気投合したRyntblueさんが、Segoleneのクロッキーを型に起こし、制作に携わってくれたこと。 リーフレットの紹介文は、友人のジャーナリスト石澤季里さんが快く薔薇の物語を寄稿してくれたこと・・・。


使用する石を自ら選び、職人さんと話し、どうプレゼンテーションしていくかの構築をはじめ、
ひとつの作品を世に出す一連の作業に関わり、
それぞれの分野の才能ある人達との出会いや久しぶりのコミュニケーションが、
あまりに順調に進むので、これは世に出るべくしてでるものだと思えてきます。



今回のプロジェクトを進めていくうちに、「私が動くことによってそこに関わる人に対価を還元していきたい」という思いが、モチベーションの源の一つだと再確認できた気がしています。

そんな経緯もあって、薔薇の指輪には以下の副題を付けました。
ROSE RING
La vie en roseラ・ヴィ・アン・ローズ(薔薇色の人生)
Carpe Diem カルペ・ディエム(今この時を摘め)

薔薇は、イシスやアフロディーテのアトリビュート(持ち物)であり、豊穣・美・情熱・愛の象徴。
歴史上の数々のドラマを飾ってきた薔薇の気品に包まれ、
「本来の自分を見つめ直し、愛おしむ。一瞬一瞬を大切に生きる。」

そんな思いで手にした方の「腹心の友」となるジュエリーとなりますように。


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