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スナックの木偶の棒

急に思い立ちスナックの面接を受け、
晴れて採用していただくことになりました。
昼は社畜をしております。会社には勿論秘密だぜイェーイ。

さて勤務初日になり、失禁しそうな位緊張して参りました。
冷静に考えると、飲酒している面識のない方と何をお話したら良いのか。乱暴されないかしら。
面接を受けた過去の自分にノーザンライトボムを仕掛けたいし、
初めて仕事から逃げたいと思いました。

21時からのお仕事なので、
念のため20分前にお店に着くように自宅を出ました。既に帰りたい。
扉を開けると、面接の時とは違ってムーディーな照明に妖しく照らされる店内。
1人の男性客とママ、そして綺麗なお姉様が迎え入れてくれました。
「おはようございます」と一礼して、軽めの自己紹介。
この時点で私の耳はほぼ使い物になっておりません。緊張すると耳が聞こえなくなるらしいです。

汗もスプリンクラーのように溢れだして、
皆さんが緊張を解そうと色々話しかけてくれても
変な反応しかできず。情けない限りです。

なんとか男性客とデュエットさせてもらい、
お酒と偽ったソフトドリンクをがぶ飲みして過ごしておりました。
お手洗いに立つタイミングすら分からず、ずっと我慢していたら気づいたママから
「大丈夫だから、好きな時にお立ちなさい」
と耳打ちされ速攻駆け込みました。
ママは偉大なのであります。

お酒も飲めない、スナックのお作法に則ってお酒を作ることもできない私は完全に木偶の棒と化しておりました。

誰かと話したかと思えば、
すぐに別の席へ移動を促されグルグル回転しまくり。
自分が今何をしているのか、本当に分からなくなってきました。
唯一の救いは女性客が非常に優しく接してくださったこと。
足向け出来ません。おば様万歳なのです。

記憶に残っている会話は
千代の富士の引退会見のモノマネと、
貴闘力の現役時代の話をして笑ってもらえたこと位でしょうか。
会話の引き出しも少ない。本当に情けないです。消えたい。

退勤の時間になり、ママから帰宅を促された木偶の棒。心底ホッとした瞬間であります。
帰り道は自分の役立たず加減を振り返り自己嫌悪です。
夫と約束していた自宅近くの公園で合流し、
ファミマのナポリタンを啜る夫に懺悔しておりました。通報されなくて良かったです。

そんなこんなで、初日は世界で一番役立たずの木偶の棒と化しておりました。自己嫌悪ヒュー!
私がもし20代でこの状況を迎えていたとしたら、恐らくこのまま辞めていると思います。
しかし40代の木偶の棒は20代よりも少し逞しく、図々しいのです。続く。

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