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53.ムンクの「叫び」が来るらしい。

 ムンクの「叫び」が来るらしい。
 ぼくは10年ほど前にオスロのムンク美術館で見た。あのテンペラ・油彩画の「叫び」は、初来日だそうだ。
 で、とある筋から、ムンク展と同時にムンクにインスパイアされた作品でニュームンク展を構成するという大胆な企画に、参加しないかとの依頼が来た。
まさかとは思うが、1982年の池袋サンシャインシティーでのステージを観た人がスタッフにいるのだろうか?
 あの時確かにぼくはムンクの「叫び」の恰好を真似ていた。それは「雨のミュージアム」と言う曲の冒頭で、名画を真似たパントマイムをメンバーがそれぞれしたのだった。
 あるいはまさか、あのオスロにある橋を何回も渡ったことがあることを知っていたのだろうか。ノルウェー人のドラマー、トーマス・ストレーネンは、ぼくを幾度もオスロに呼んでくれて、近郊の町に演奏に行くことがあった。
「近くに来たら教えてね」と、トーマスに伝えること数回。いつも寝ているか、忘れてるか、残念ながら「叫び」を真似た写真を撮ることができていない。
 絵画が歌に登場すると言えば、代表曲は「モナリザ」だろうか。1950年にナット・キング・コール = ナッキンコールが歌って大ヒットした。
 今回の企画で、参加者の誰かが『叫び』を歌った歌ができるかもしれない。楽しみである。
 ぼくは、12分ほどの3パートになる音楽を録音した。ひとつめは、Abelton Live で打ち込んだアンビエントに声と口琴、コルネットを重ねた。口琴はノルウェーのムンハルプを使用した。ふたつめは、MoogのMother-32と声のパフォーマンス。少しだけラップランドの歌唱であるヨイクのコブシが入れてある。みっつめは、セリエフルートのソロである。柳の笛ことセリエフルートは、ノルウェーの民族楽器である。タイトルは、「炎の舌」にした。これはムンクの日記の中にある言葉から引用した。

私は2人の友人と歩道を歩いていた。太陽は沈みかけていた。突然、空が血の赤色に変わった。私は立ち止まり、酷い疲れを感じて柵に寄り掛かった。それは炎の舌と血とが青黒いフィヨルドと町並みに被さるようであった。友人は歩き続けたが、私はそこに立ち尽くしたまま不安に震え、戦っていた。そして私は、自然を貫く果てしない叫びを聴いた。

 ムンク展―共鳴する魂の叫びには、100点の作品が来ると言う。他の作品も充分に堪能できるに違いない。
 そしてニュームンク展。こちらでインスパイア系を、体験してみてほしい。

2018.

巻上公一



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