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魚料理のハードル1

シンガポールで魚料理は難しい。

スーパーで売っているパック詰めの魚は、みんな、鮮度をチェックするために、上からぐいぐい指で押すので、逆に鮮度が悪い。
市場で買うのが鮮度・値段共によし、とされるが、たくさんのハードルがある。

1  魚の名前がわからない
2 鮮度がいいかわからない
3 さばき方をどう伝えたらいいかわからない
4 適正値段がわからない
5 もちろん料理法もわからない


1  魚の名前

サーモン、エビ、イカは見たらわかる。でも、アジっぽい魚、スズキっぽい魚、マナガツオっぽい魚が氷の上にドサドサッとたくさん乗っているだけで、
「奥さん、今日はなんにしましょう?」
の返答に困る。
自信を持って答えることができるのは、
「サバ!」
だけ。鯖はこちらでもサバで通じる。
ある日、答えが決まらなかったので、
「安くて美味しい、おすすめの魚をください」
と言ってみたら、
「それは答えられない。何が食べたいか決めてから来て」
と、魚屋のにいちゃんに冷たく突き放されたように見えたが、店先でウンウンうなっていたら、
「シーバスならどんな料理でもいけるでしょ」
とおすすめされ購入。塩焼きにして食べて、ま、普通。


2  魚の鮮度

これまでは、
「この魚、新鮮?」
「もちろん!」
という会話でしか、鮮度を確認できなかった。たまに、全然新鮮じゃないのに、「もちろん!」と答えた店には、2度と行かないことで対応。
冷静に魚屋を見回すと、魚の陳列台の手前に、マグカップ大のバケツに水が入ったものが吊り下げられている。みんな、魚の尾の部分をぐいぐい押したり、エラ蓋を開けて、エラの色を確認したりした後、「これちょうだい」と店主に頼み、バケツで指を洗っていた。
フィンガーボールって、レストランで出てくるだけじゃないんだな。

魚のさばき方用語

市場は基本、一尾買いが多い。ウロコと内臓は何も言わなくても取ってくれる。
2枚おろしも、
「2層にして」
で乗り切れた。
問題は、3枚おろし。
最近、町の噂で「fillet, please」でいけるということを知ったが、これが本当に難しかった。
「3層にして」
と試しに頼んでみると、魚屋のにいちゃんは困惑気味。そんなに薄くできるわけない、と顔に書いてある。
「骨はいらないのよ」
と頼んでみたら、にいちゃんはハッとした顔をして
「バタフライ?」
と聞いてきた。蝶々……。それかも!ということで、
「イエス、バタフライ!」
と頼んでみた。
数分後、体長25cmのシーバスは、特大ホッケの一夜干し開きのような姿に。確かに骨はないが、で、でかい!そして、フライパンには、まったく入らない。
「大きすぎるから、半分に切って(半身にして)」
と頼むと、魚屋のにいちゃんは、とてもとても悲しそうな顔をした。
推測するに、バタフライ(腹側からの開き、骨なし)は、魚のさばき技術の中で、1番職人泣かせなのかもしれない。渾身の技術でつないだままにした左右の身を、「大きすぎるから」の理由で切らされる悲しさ。
その後、この魚屋のにいちゃんは、私の注文に
「さばき方は本当にそれで確定ですね?」
と毎回確認してくれる。

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