小声コラム#12 春を上書き保存してやる

春一番が吹いたらしい。
春が近づいてくると、いつもゾワゾワとします。

ちょっと気に入っていた一文を消して、正しいと思う言葉で上書き保存する罪悪感みたいな。そんなゾワゾワです。

ウィルスが世界中で騒がれはじめて、ちょうど１年くらいになります。
怖いね〜。なんて言っていたのが嘘みたいに、今は、怖い。
流れていく日々が怖いです。怖いね〜。なんてものじゃなく、怖い。

稲川淳二だって、怖いな〜 じゃなく、怖い って言うレベルには怖い。

「日常にもどってほしい」「平穏な日々を取り戻したい。」と言われていることに違和感を感じるのは、“非日常”が日常にすり替わってしまったような気がするからでしょうか。これまでの方が“非日常”だったんじゃないかと感じてしまうからでしょうか。


それでも、また春が来るんだなと、無機質な風が教えてくれました。
桜が咲いて、その下に浮かれた顔で集まる人間がボクは好きです。
気が早いかな。
でもそれくらいにはゾワゾワしていて、昨年は書けなかったお気に入りの春の描写を、上書き保存してやりたいです。





#12 春を上書き保存してやる