マリーアイランガニー(渋谷/スリランカ料理)
Instagramが流行りはじめたあたりから、内装が素敵で、写真に撮った時に「映える」店がもてはやされる。私が思う気軽な「映え」は有名ホテルのアフタヌーンティーで、たとえばアマン東京のアフタヌーンティーはどこから写真をとっても完璧な「映え」。
一方で、映えないレストランも好きだ。たとえば渋谷のスリランカ料理店、マリーアイランガニー。代々木八幡へと抜ける東急本店通り沿い、渋谷東急本店を越えたすぐ先の灰色のタイル張りのビルの5階。エレベーターの入口も分かりづらいし、エレベーターも古くてお世辞にも綺麗じゃないから、5階まであがるのを躊躇する人もきっと多い。5階についたらついたで、開けっ放しのドアの先のアジアテイストな布をくぐって中に入る必要があって、いったいこの先に行っていいのだろうか、そう躊躇させるような、そんな怪しい雰囲気なのだ。
が、勇気を出してその布の先に行くと、ああ、ここはきっといいお店だ、とすぐに感じると思う。いかにもアジアっぽい絵画やタペストリーに交じって70年代80年代のアメリカ俳優のポスターや出たばかりの日本の雑誌、そして頭上にはゴシックなシャンデリアが飾ってある不思議な空間。店内は意外に明るくて、席の見通しもいい。
ひとりで行く時は窓側の席で、ぱっとしない渋谷の街並みを見下ろす。そして食べるは「映えない」カレー。
肉の塊が鎮座しているただ茶色いカレーを白いごはんで頬張りながら、ここで一緒にごはんを楽しく食べられる人が好きだなあと思う。お店に飾ってあるものに目を留めつつ、食べなれないスリランカ料理のどれを頼む、なんて相談をして、そしてお互いに違うカレーを頼んで、料理がきたら途中でお皿を交換して、どれも美味しいねぇ、なんて会話して。そして何の気ない振りをして横顔をじっと観察して。
遠い昔、まさにドキドキしながら、今のパートナーとここでランチをした日のことを思い出す。
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