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35/100 ガルシア•マルケス著「百年の孤独」/Aesop以前、Aesop以後

Gotoトラベルの恩恵で西新宿のパークハイアットに泊まった時、アメニティとして置かれていたのがAesopだった。

Aesopといえば、友人の誕生日プレゼントにしたり、引っ越し祝いにしたり、以前の私の中では、普段使いには高い、だから誰かのお祝いにちょうどいいブランド。
ハンドクリームはAesopを愛用していたし、他の製品にもともと興味はあった。ただちょっと手が出ないなあ、普段使いするには高すぎる、そんな風に思っていた。

ところがアメニティのシャンプーとコンディショナーを使った時、たかが髪を洗っただけだというのに驚くほど気分が華やいだ。元々好きなベルガモットと強めのミント、それに加えて少しスパイシーなローズマリー。リラックスとリフレッシュ、それに加えてエネルギーが、泡立てるたびにチャージされる感じで軽く興奮。
髪の洗い上がりは普段使っているシャンプーの方が、正直いい。ただそれ以上に「香り」に癒され励まされ勇気づけられ、そしてたかがシャンプーでここまで気分が変わるのかと、驚いた。
「こんな高いシャンプー、どんな人が使うんだろう?」と思っていたそれを先日とうとう手に入れた。それ以来、めでたく夜のたびに香りに癒される毎日だ。

以後、自分の買い物の仕方に疑問を持った。欲しいものがあったとして、何となくの予算があって、その範囲内でいちばん良さそうなものを見繕う。だけどそのやり方では、未知のAesopとは出会えない。

よく考えると「高い」とはいっても飲み会1回ちょっとの値段で、それは今よりずっと収入が少ない時でも、手に入れようと思えばできたはず。飲み会1回のお金でこんなに豊かな気持ちになるのであれば、もっと前に試してみたらよかったのに、と今なら思う。

ただそんな気持ちで意気揚々と、去年から気になっているブランドのコートの値段をみたら、思っていた値段の3倍で。さすがにそれはとすごすご帰る。

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「百年の孤独」は不思議な本だ。ブエンディア一族の200年弱のはじまりから終わりの歴史が淡々と綴られているだけ、と言えばそれだけだ。更に登場人物達は概して「いいひと」ではなく、偏屈だったり浅はかだったり浮気性だったり嫉妬深かったりと、何かと問題がある。
そんな本の何がいいのか?というと、「愛する者の死」や「発狂」、「理不尽な虐殺」、「大失恋」など、それは色々な不幸がこの一族には降りかかるのだけど、登場人物たちがそれを飄々と受け止めることだ。どんな不幸な、不愉快な出来事さえも、ブエンディア家の歴史の中ではいずれ「ああそんなこともあった」という軽さになることに、私は何だか励まされる。

どの土地に住もうと、過去はすべてまやかしであること、記憶には帰路がないこと、春は呼び戻すすべはないこと、恋はいかに激しく強くとも、しょせんつかの間のものであることなどを、絶対に忘れぬようにともすすめた。
ガルシア=マルケス「百年の孤独」

本当は結びの文章がたまらなくいいのだけど、ネタバレになるのでこちらの箇所を。この先の人生でどんな辛いことがあったとしても、強くありたい。「百年の孤独」の登場人物たちの強さとシンクロしていたい、そんな心持ち。

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