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枯れ木の合間にサクラサク

都内にはいくつか好きな場所があって、そのうちのひとつが代官山の西郷山公園だ。自転車だったら行きやすい距離なのもあって、子どもを連れてもたまに行く。

その日も祝日の過ごし方を思案した結果西郷山公園へ、となり、そうしたら思いがけず桜が咲いていた。

枯れ木に囲まれ一木だけ揚々と咲く桜には色気がある。思いがけず咲いていたのもあって、それこそ余計に。

年末の二回目の緊急事態宣言で私はまたもや旅行の予定をキャンセルしたり、更に医療崩壊なんて言葉を何度も目にして心がキュッとなった。自転車で家族で移動しながら、もしここで事故を起こしたら助からない、そんな緊張感を普段よりももって暮らしていた。
だから感染者数が以前より減り、事故に遭っても助かる確率がきっとあがり、更にこうやって桜を見られるというのは、本当に素敵なことなのだ。

当然子にはそこまで珍しくない光景で、桜よりも遊具にご執心。そんな子の姿越しに私は桜をじっくりみた。

梶井基次郎という作家の作品に桜の美しさはきっと樹の下に屍体が埋まっているから、そう訥々と語るものがあって、桜をみると何となくそれを思い出す。屍体が埋まってるから美しいというロジックにそこまでピンとは来ないのだけど、誰かのレクイエムとしての桜、というのはさもありなん。

その後ランチを食べ、彼と子と別れてから目黒川沿いを少々歩く。桜が咲いた目黒川は最高に素敵で、あと1ヶ月後のこの場所が今からとても待ち遠しい。

春、もうきっとすぐそこに。

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