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43/100 小川洋子「ことり」/できすぎたカフェ

恵比寿から渋谷方面に自転車で、となると、明治通りに出てそこからまっすぐ行くのが近いように思うけど、その日は何となく恵比寿の五叉路から鶯谷町へ。最近、土曜の子連れランチの後は、15時までが私の自由時間。新しいカフェを開拓してそこで読書を、と思ったのに、何度も来たことがあるPORT OF CALL に寄ってしまった。ここは渋谷の駅からも代官山の駅からも、そして恵比寿の駅からも不便で、カフェが好きな人か地元の人か、それか私みたいに自転車で移動するような人しか行かないような。そして1回訪れると、何だか病みつきになる。

表に看板は出ているものの、入口から入ってしばらくはサーフ系ブランドのセレクトショップ。レジの後ろに小上がりがあって、その先がカフェになっている。

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大テーブルを皆でシェアする席と、4人用のソファ席が2つある。ソファ席の座り心地はなかなかよいものの自重してテーブルの方へ。

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座席から見渡す先はどう撮っても絵になるから、毎回来るたびにできすぎたカフェだなーと思う。

難点は横が線路なので、電車の音がガタゴトと煩い。

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が、ちょうど読んでた本が小川洋子さんの「ことり」という、静けさが時折苦しくなるような小説だったので、定期的に鳴り響く電車の音が逆に良かった。

午後にかけてお客さんが増えて、特に女子3人連れでお茶しに来た子達がとても楽しそうだった。
そうだよなあ、私も大学生の時にこんなカフェ見つけたらすごく楽しかったなあ。いや、その頃の私は夜行性で、お茶する習慣なんてちっともなかったか。

本のページををめくるのをやめ、まわりを見渡して、そんなことを途中で考えたりしながら、「ことり」を一気に読んだ。唯一の身寄りだった兄と死に別れ、独り身になった「子父さん」が慎ましく暮らし、そして死ぬまでの話で、私にはしんとした寂しさがずんと残る、哀しい話だった。毎日の中、ほんのちょっとしたことが小父さんの中でキラキラしているから、日常の美しさ・素晴らしさに気づく話でもあって、読んでよかったかといえば迷うことなくYES!なのだけれども。

ちょうど読み終わったあたりに子が「ママどこ」と聞いてくると彼がLINEで教えてくれた。

帰り道、待っててくれる人がいる幸せを、ヒシヒシと。



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