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志摩旅行記1

2020年、コロナが世界的に大流行して散々な1年の中、いいことがいくつかあって、そのうちのひとつが、宿泊費の補助が出る政府の施策「Goto Travel」だと言ったら言い過ぎだろうか。が、そうでもなかったら、計画段階から「いいな」と思っていたアマネムに泊まりに行こう、しかも子連れで、なんて考えつかなかったからやっぱりいいことだったと思う。

アマネムへの旅(パートナーを説得するにあたり表向きは伊勢神宮への旅だ)はそれはそれでとてもよいものだった。が、旅行前、夕飯を食べる場所を色々調べている中で、「志摩観光ホテル」という名前がひっかかった。2016年に行われたG7サミットの舞台であり、天皇陛下をはじめとした皇族が毎年の伊勢神宮参拝のために立ち寄る場所であり、数々の文豪が定宿とした宿であり、そしてそこにはラ•メール•ザ•クラシックという世界的に有名なフレンチレストランがある。最低でも1人20,000円弱のコースメニューは海の幸をふんだんに使った贅沢なモノ。

その時は、ただでさえ結構なお高い宿に泊まるので、夕飯の候補先からは早々と脱落。ただ「志摩観光ホテル」という名前に何か後ろ髪を引かれながら、次に志摩に行くことがあるなら志摩観光ホテルに、ラ•メール•ザ•クラシックのフレンチを食べに、そう思った。

2021年2月のことだ。映画「東京日和」を久しぶりに観て感激し、きちんとしたこの映画の紹介文を書こうと思い、映画のモデルになった荒木陽子さんのことを調べていたら、映画よりも、彼女の人生や著作物にゾッコンになった。かたっぱしから集めた彼女のエッセイの中に「志摩観光ホテル」に彼女の夫と訪れたものがあって、そしてまさにラ•メール•ザ•クラシックで食事するシーンが登場した。

厳粛に現れたアワビのステーキには緑色のソースがかかっていた。これはブール•ブラン•ソースといって、白ワインとバターで作ったソースで、中にパセリとシャンピニオンとガーリックが入っているそうだ。ゆっくりとナイフで切り分け、口の中に入れてみる。思わず、ウーンと唸りたくなるほどのおいしさである。
柔かいアワビにガーリックのきいたソースがからまったその悦楽的な味わいに、冷たいピノ•シャルドネが加わると、こんなウマイ物食べていいのかしら、という気持ちになってくる。
私は思わずフーッと溜息をついた。これは遠路はるばるやってきてよかった、としみじみ思ったのである。

「愛情旅行」荒木陽子

そこで私は何だか運命を感じてしまった。旅行予約サイトの一休をみると、コロナで苦戦しているから?1泊2食つき、もちろん夜はラ•メール•ザ•クラシックのディナーで思っていたより安い価格設定のプランがあった。

12月に志摩に行ったばかり、しかも志摩は片道4時間という結構な道のり、それでも私は何だかもう絶対行く、以外に考えられなくなった。そんなこんなで3ヶ月振りの志摩旅行とあいなった。

自分の人生を好きだなあと思うのはこういうときだ。ひょんなキッカケで強烈に惹かれるモノを見つけて、衝動的に行動する。それを成し得るだけの気力と体力と、そしてお金が、今はある。

パートナーからは行ったばかりなのに?あんなに遠いのに?と呆れられる。が、それでいい。それがいい。

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