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TVドラマ「9ボーダー」9話実況じみた感想(1/4)


ATTENTION

※2024春ドラマという、遥かかなた昔のドラマ感想です。
・当方、1話で辛くなって一度は脱落し、6話から出戻りました。
・1〜3話は視聴済み、4~5話は公式ダイジェストであらすじだけ知ってます。
・書いた時点で最終話は未視聴です(9話の感想に上書きされてしまいそうだから)
・この記事は100%オタクの主観であり妄想であり欲望です ←※重要
・『』は登場人物の台詞、《》は音声解説を表現しています。
・ストーリーに入れ込みすぎてネガティブ気味です。

前回までのあらすじ

今までになく息つく間もないダイジェスト…

動画バズり~"婚約者"百合子さん登場~『コウタロウさんとはバイバイ』~『また後悔するの?』

久吾の台詞の前半が陶芸教室なんですよね。2人が過ごした1番最後の幸せな記憶。

そこからの、最初は俯きながら最後は七姉の目を見て『だめでも、むだでもいいから伝えなよ』と話す久吾の真摯な気持ちにおばちゃんこの時点で泣きそうです。

そこから飛行場へコウタロウを追いかけるも七苗は間に合わず、七苗が保安検査場に来た時点で20:30。

保安検査場を通るのは、出発時刻の約20分前だそうですね。ここ10年ほど飛行機に乗っていないので、JALの公式ウェブサイト調べました。

ということは、コウタロウはおそらく20:10まで待っていた可能性が高いです。七苗は全然間に合っていなかったんです。

あらすじで語るようなことでもないですけど、9話はとにかくしんどすぎたのでこういう細かいことに注目しながら気を紛らわせていこうと思います(?)


本編(オープニング)

羽田空港

え、そこで諦めちゃうの?神戸空港だったら、探せば20:30より後でも1便くらいあるんじゃない?

と先週思ったので、今さっき7月末で検索かけました。
結論、LCC含めても本当に20:30が最終便でした。今月なら22時台もあったんですけど、この辺のリアルさがすごい……。

つまり、やっ飛行機はぱり諦めざるを得なかったんです。

とはいえ、8話のようにうじうじ引きずっている七苗じゃありません。

空港で会えなかった~fin~、じゃなく、空港からの高速バスっていう展開がアツかった。

ドラマの都合上たまたま神戸行きが目に留まったけれど、これが大阪行きとか仙台行きであっても七苗は神戸行きを探してたんじゃないかな。あるいは大阪行きからの電車移動とか。

想像ですけど。

《吸い寄せられるようにバスへ向かう。徐々に駆け足に。》

皆がスーツケース、身軽でもボストンバッグくらいは持っている乗客だらけの中スマホ1つで乗り込む29歳。

七苗の表情は、喜びや希望とまではいかない、でも決して諦めてはいない顔。

最高にかっこいい。

大庭家・夕食

七苗がLINEを送ったのは六月なんですね。というか、三姉妹グループLINEかな?スマホが近くにあったのが六月というだけなのかもしれません。

六月は七苗を気にして早めに仕事切り上げてきたし、空港焚きつけたメンバーの1人でもあるし、そりゃあ気になりますよ。

前回の試食会では八海がDMを気にしてスマホを手元に置いていましたけど、この時はスマホを取り出す様子はなし。逆に六月は、試食会の時はスマホを触る描写なし。
この家族、食事中にいつもスマホ触る系女子というわけでもなさそうです。上品というか、そこは家族の食卓を大事にしてるんだなって伝わってきます。

さあ、今回も食卓を分析していきます!左手前から、
ごろちゃん 八海 六月 久吾

4人の円卓あるあるかもですけど、ごろちゃん・八海と六月・久吾ペアそれぞれの距離がやや近め。

今は久吾の隣には常にお姉ちゃんがいる状態で、こういう心のずきずきする展開の中でも心を温めてくれます。

『いーじゃん七苗ァ。ん、ん、久吾、これ食べていいぞ』

ごろちゃんは久吾を連れ戻しにふらっといなくなるタイプの親父なので、七苗の行動力を全肯定。

そしてごろちゃん、なぶり箸しながら七苗のために取り分けておいたご飯を当たり前のように久吾に譲る。いい。

いや、なぶり箸が良い訳じゃないけども。よくいる親父の、育ち盛りの息子に対する自然な扱い。本当にもう、できることなら早くお母さんに何度も頭下げて2人を呼び戻してほしかった(泣)

そして、七苗が当日帰ってくる可能性も見越してちゃんとご飯を用意して、お茶碗とお味噌汁のお椀は伏せてある。

主菜は何かの揚げ物で、千切りキャベツとトマトが添えてあるのかな?そこに、中身の見えない小鉢が1つ。

食卓に1つおいてある大皿には雑におかれた箸立てと調味料のようなものと、たぶん小鉢の中身と思われるお惣菜が深皿に入っている。久吾だけグラスに入っているのは水出し緑茶で、後の3人は麦茶。
(ごろちゃんがお酒飲むとしたら缶開けると思うので、現時点では素面の可能性が高い)

家族それぞれにお茶作るのって意外と面倒じゃないですか。夏場の麦茶なんかすぐ腐るし。5人家族でたくさん作っても消費するから2種類作っているのか、それぞれの好みに合わせてティーパックがあるのか。

みんなで同じもの飲んでいてもいいんですけど、こういうところに好みが表れているのもいい。

この静止画だけで「あー、ここん家のご飯食べに行きたいな」ってなる。

このドラマの消え物大好き人間がいまさらこんなこと言っても説得力皆無なんですけど、結局食事って、何を食べるかじゃなく誰と食べるかなんだろうなって思わせてくる。

『コウタロウのこと、追っかけたんだ』

ちょっとうれしそうな久吾。え、ちょっとあんたコウタロウ呼ばわりかい。

六月がコウタロウにさん付けするのはちょっと意外だったけど、まあ妹の彼氏程度の付き合いで大人同士ならそうなるかってなる。八海は同僚だし異性との垣根低そうだから呼び捨ても納得。

久吾は何がどうしてどうなったんだい????
じゃあ陽ちゃんのことは何て呼んでるんだい???兄ちゃんって呼んでいいんだぞ???

驚きまくっている八海ちゃん、そりゃそうだ。八海があれだけ言いまくっても頑として「いいの」って言っていた七苗が、帰ってきたら空港行ってて、ご飯食べてるうちに高速バス乗ってるって聞いたら、ねえ。

そして六月の名言パートきました。

六月『八海も覚えとくといいよ。人は年を重ねるとね、自分のことを守んのがうまくなって、傷つくことを上手に回避するの』
ごろちゃん『事故防衛ってやつだな』
六月『でも七苗は、傷ついても、恥をかいても、追いかけるって決めた。すごい覚悟だと思う』

六月の方がうれしそうな顔なの、いい。
六月自身は40手前にしてようやく捨てたものを、七苗はもうすでに捨てようとしている。そこに嫉妬じゃなく誇らしさを感じている。

六月の言葉とかぶせるように七苗の乗車シーンが描かれています。

意外と乗客少ないな……いや、まあそこはいい。七苗の表情が何ともいえず晴れやかです。

コウタロウに確実に会えるとわかっているわけじゃないのに、この晴れやかさ。
大好きな人に会えるうきうき気分とは違う、殻を破った自分に対する喜びかな、なんて空想してみたり。

芝田家


高速バスの発車、からの神戸の夜景とタクシー降車。相変わらずカメラの切り替えがスムーズです。

《モダンな邸宅を見上げるコウタロウ》

はい、コウタロウ。大庭家では馴染んでいたカジュアルな恰好がやたらと浮いております。
スニーカーだって綺麗だし、ちゃんとおしゃれです。だって9ボーダーだし(?)

ただただ、住む世界が違う。8話で百合子さんが大庭家に来た時のように、とにかく浮きまくっている。

とはいえ、出迎えに来た家族は私が身構えていたよりははるかにラフな恰好でした。まあ夜遅いですしね。

弟のナオキなんかTシャツに半袖シャツの重ね着ですからね。見た目がいいのと仕立てがいいので何とかなっていますが、文字だけ書き起こしたら大事故おこしかねない私服です。

私がずっと不信感を抱いていたお父さんも厳めしい感じはなく『体調はどうだ』とシンプルに気遣う感じ。というか、この人が地元密着型企業を大きくしたのか?というくらい普通なおじさんです。すごい偏見でいうと、課長クラス(偏見)

でもこういう人が結構、大きな組織回してたりするんですよね。現実は。

《しゃれたインテリアが彩るリビング》

今回は8話ほどあんまり音声解説書き起こしていない……と自分では思っているんですけど、公式でこうも芝田家を語られちゃうと、「ここは違和感覚えるところですよ~覚えていいんですよ~」と念押しされているようでやっぱり書いてしまいます。

『あ……かりん?』

犬は正直ですね。コウタロウのところに走ってくる。
俳優犬すごいな。

ナオキの『思い出した?』に対して『いや、事前に聞いてたので』は、「いつものオレンジペコ」と同じですね。芝田家ファミリーにとってはちょいつらい。

『写真を見せたんです。それで』

とてつもなく嬉しそうな百合子さん。かりんが走ってくる前のやり取りで、悠斗母から感謝されたときに『全然』と謙遜していましたが、やっぱり努力の結果を感じてますね。

七苗を応援する視聴者としてはムムムと思いますが、まあ失踪した恋人を見つけたとしたら当然の反応とも言えます。

そして百合子さんやお母さんが嬉しそうなだけ、弟ナオキの浮かない顔が気になります。

ちょっとこのあたりから、8話で感じていたナオキ氏への印象が変わってきました。

だって、最初にSNSでコウタロウもとい芝田悠斗を見つけたのはナオキですよね。そのことがまるで無かったかのように、百合子がすべて事を整えて芝田悠斗を連れ帰ったかのようになっている。

百合子さんが大庭家に来た時、ナオキは仕事だったから自分が無理言って……と話していましたが、だんだんそれすら怪しく思えてきました。

ナオキ、あなたは本当は自分が行きたかったんじゃないの?
そもそもあなた、その日仕事あったの?

そしてお母さんが気を取り直してごちそうブースへとご案内。
あ、これだけお金持ちでも食事はお母さんがおつくりになるんですね。それとも会食とか多めで時々作る的な?清掃はさすがにハウスキーパーさんいないと間に合わなそう。

富豪の生活スタイルがわからない……。

『悠斗の好きなもん全部作っとうから』

今になって思ったんですけど、神戸弁って『~しとう』って響きなんですね。

かなり古いデータですが、東京弁の「来ない」を関西の人々がどう発音するかという地域分布図で、大阪は「来(け)えへん」、京都は「来(き)いひん」、兵庫は「来(こ)おへん」と聞いたことがあります。四国や中部の方ではまた変化があるようですし、関西弁って深いなあ。
そんでもって、全部好き。

そして9ボーダースタッフが全精力傾けて作ったであろう富豪メシです。
長いテーブルに大皿に料理がデンとあって、1人1人に大きめのお皿と茶碗蒸し、グラスが並んでいます。もちろんランチョンマット付き。料理の群れにも縦長のマットが敷いてあって、ド庶民の私に言わせると「これから会食でも始めるんか?」という勢いです。

お酒詳しくないのが悔しいけれど、お酒はワインじゃなくてシャンパンかしら?グラスが細めで、ビンは深めの容器に浸かっています。

メニューは8話の試食会以上に自身ありませんが、
・ローストビーフ(薄くスライスしてきれいに盛り付けられている)
・天ぷら(具がいちいち大きい)
・お刺身
・餃子?(茶色っぽい……けど隣の煮卵はなんだ)
・もっとわからないピンク色の何か
・お鍋

《テーブルには、上品な手料理が並ぶ》

やはり音声解説はメニューまで教えてくれなかったか……(当たり前)

でもはっきりわかるのは手料理だということ。お金だけじゃなく、1つ1つに時間とエネルギーがこもっています。
芝田悠斗が“愛されて”きたことが明確に示されています。

《コウタロウは料理を見るが、ピンとこず、》
『綺麗ですね』

ですよね。そりゃそうなる。
だってコウタロウには芝田悠斗の記憶がないんですから、バルと大庭家で育った舌の前に食べたことのないもの出されて「あなたが好きな料理です」と言われても困るわけです。

すごく厳しい言い方をすると、コウタロウからすれば自分が好きなものを決めつけられている感覚になってもおかしくない。

《意外な言葉にショックを受けるハルミ》

あ、さっき省いてしまいましたがお母さまはハルミさんとおっしゃるそうです。

というか、さっきからいちいち両親と弟のショックが大きいんですけど。もしかして百合子さん、記憶喪失の程度について話してない疑惑あります?

ご家族がかわいそうすぎるし、何よりもナオキのいたたまれない表情がいたたまれない……。

カツヒサ『まずはゆっくり休んで。明日、この辺を見て回ったらええんちゃう?会社にも顔出して』
百合子『私、付き添います』
ナオキ『仕事は?大丈夫?』
百合子『うん、大丈夫』
カツヒサ『それから、悠斗のことはくれぐれも』

《言葉にひっかかるコウタロウ》

ここ、私もちょっと引っかかったんですけど、引っかかって正解だったようです。

「まずは~」のところで穏やかで優しいお父さん像を醸し出しつつ、「それから~」のところで急にビジネスマンの顔になる。

だって、何か月も失踪していた息子ですよ。
その息子がやっとはるばる関東から帰って来て、夜も遅くて、しかもどえらい記憶喪失で自分たちのことすら覚えていない。そんな人を、その翌日から仕事に送り出します?

うん、8話で感じた違和感は続行。やっぱりこのおやっさん信用なりまへん。

おまけに、本来この場面では(コウタロウを別にして)3人家族に百合子さん1人が飛び込んだ構図のはずじゃないですか。なのに、なんだかナオキ1人取り残されている印象を受けます。

なんたって芝田ご両親、百合子さんとばっかり話していてナオキとは一言も口きいていないんです。

家業を継がず、自由に音楽の道を歩んでいる次男坊。

その代償が、この関係性なんでしょうか。それとも、最初から期待されていない身分を使ってナオキは自分の進路を決めたのでしょうか。

せめて後者であってほしいと願います。そうじゃなきゃ、芝田家にはあんまりにも救いがない。

《家の一角にやってくるコウタロウ。ソファに座らず、床に座り、七苗を想い、夜空を見上げる》

そうだよね、大庭家の居間は座っていたものね。

高速バス

一方七苗は、コウタロウとの水上フェリーデート動画を見ています。
私が脱落していた時期なので本編見られていませんが、MVだけでも十分多幸感あふれる時間でした。

《コウタロウを想い、夜空を見る》

夜 空 を 見 る

六月と松嶋くんのスカーフ1つで盛り上がっていた人間が、こんな遠距離シンクロ見せつけられて騒がないわけないですよね。さあ祭りだ。

それと、多分これまでBGMには1度も触れてこなかったんですけど、このシーンのキラキラしたピアノがまたいい。
喜びとも不安ともつかない絶妙なラインを攻めていて、ハラハラとはまた違う、でもこの先どうなるか分からない心理を煽ってきます。

芝田家

《スリーピーススーツを着たコウタロウ。姿見で自分の姿を見て、浮かない表情》

もー公式の音声解説がガンガン攻めてくる。

お母さんから新しいスマホ渡されてますね。お母さんが『必要な番号は登録しとうたから』と言っていますが、待って。待って。

お母さんが「必要な番号」が何か判断、かつ把握してたってことですか?それともこれは言葉の綾で、秘書にあたる人が管理してたってことですか?

いや、どっちにしろ登録したということは、単なるバックアップの復旧ではないわけで。

コウタロウにプライバシーもへったくれもなかったことが分かって、こんなところでもげんなりしてしまう私。

がんばれ私!9ボーダーはそんな話じゃない(はずだ)ぞ~!

そして、朝から黒塗りの車で運転手のお迎えが来るのは想定内でしたけど、やっぱり百合子さんいるんですね。お美しい満面の笑み。

いや、お美しいんですよ。大政絢さん演じる百合子さんは間違いなくお美しいし麗しい。

でも、やっぱり引っかかってしまうのは百合子さんの視野の狭さなんですよ。

だって、コウタロウが記憶を取り戻せていない以上、彼はまだ芝田悠斗ではない。芝田悠斗ではない以上、百合子さんに対しては何の感情も持ちえない。この先ずっとそんな状態かもしれない。

そんな状況でこの笑顔だとしたら、そのシビアな現実が見えていないか、見てないふりをしているか。

あるいは、その現実を無視してでもコウタロウを芝田悠斗にさせるのか。

他の恋愛が絡んだ記憶喪失モノだと、記憶のある方、今回だと百合子さんの立場にある人が歩み寄って、記憶がないコウタロウ側の人とゼロから関係を構築しようとするのが定石、だと信じていました。
だから、こういう関係性ってすごく新鮮です。

メタ的視点でいうと「まー、こういうカップリングは破綻するよね。大丈夫大丈夫、最終的には七苗だわ」と安心する一方で、現実的に考えると「これコウタロウも百合子さんも幸せにならないパターン……」って軽く鬱になれます。

そして会社に着いてもコミュニケーションがすれ違う。

《近代的なビルを見上げるコウタロウ》
『ここが職場?なんかちょっと別世界過ぎて……』
『行きましょ』

話聞いて、百合子さァん……。ここまでくると、あの日披露宴の食事で揉めた時も、仮に2人で話し合っていたとしても同じ結果だったのかもしれないとさえ思える……。

もうここからは不穏な空気のドミノ倒し。

『社内では、出張先で体調不良で倒れたってことになってる』
『え?』
『お父様の配慮で』

カツヒサ父さんが百合子さんに念押しした「くれぐれも」の正体はこれですね。この建前が崩れないようにせよ、と。

8話の感想でも書いたのですが、やっぱり気になるので再掲。

『お義父様は、何もかも嫌になって姿を消したんじゃないか、って。なので、警察に相談に行くのも遅れて』

カツヒサ父さんにとってコウタロウって何なんでしょう。

まあ、失踪=記憶喪失っていう発想は出てこないにしても、事件・事故に巻き込まれて意識不明……くらいは思い至ってもよさそうじゃないですか。

警察に相談に行こうとしなかったのは、体調不良で倒れたという理由づけは、百合子さんのいう通り「配慮」なんでしょうか。

それとも、自分のビジネスを盛り立てる都合の良い駒を使い倒したいのでしょうか。

副社長室

ほら~~~~~~賞状の芝田悠斗また笑ってない~~~~~~!

私今回ずっと文句言ってますね、すみません。作品に文句言ってるわけじゃないんです。むしろ作品に入り込みすぎてるからネガティブ発言多いだけなんです。

もう手遅れかもしれませんが、ご気分害されたらいつでもブラウザバックしてください。

そして腕時計のアラームが、ついに「本来あるべき場所」で8:30を告げます。

芝田悠斗なら、その音は生きがいでもあった仕事の始まり。やる気スイッチをONにする音。

でもコウタロウにとって8:30のアラームは、大庭家に泊まっていた間みんなにコーヒーを淹れていた時に鳴っていた音。ぱさぱさの髪で出てくる愛おしい彼女(とはいっても春奈ちゃんは24時間KAWAII)を眺めた日々を思い出すトリガーでしかない。

今回は8話と同じく回想が多いです。ただ、芝田悠斗を回想していた前回と違って9話は大庭家での回想が多い分、悲痛さマシマシです。

その悲痛さを誰も気に掛けることなく、皆が皆の思う「普通」をコウタロウに要求してくる。

ふと思ったんですけど、別にこれ、コウタロウに限らず芝田悠斗の時からそうだったんじゃないでしょうか。ただ、芝田悠斗は生まれたときからそういう環境に育って「そんなもんだ」と思ってやり過ごしてきただけで。

でも芝田悠斗は記憶を失い、コウタロウになって、知ってしまった。

自分で感じること、自分で決めること、そうして得たものから喜んだり笑ったり悲しんだり傷ついたりすること。
自分で自分の人生を決めること、松嶋くんがカフェで話したところでいう「ボーダー」を越えること。

だとしたら、コウタロウに求められているのは単に見ず知らずの御曹司を演じることだけじゃありません。その御曹司に集まった要求と期待という名のタスクを消化し続ける生き方まで求められています。

会社受付

そこそこの企業に勤めていた七苗なので、副社長に対して私服アポ無しの厳しさはわかっていたでしょうに……本当にけなげだなあ。

『申し訳ありませんが、面会のお約束がないとお取次ぎできないとのことです

ふ~~~~~ん、誰に言われたんでしょうね?
まあ副社長なので、マニュアルがあって「~お取次ぎできません」って言われるのはまだ分かるんですよ。まだ。

それとも、最近は受付がそういう言い切り口調しちゃうとクレーマーが「受付の分際で……!」みたいな感じになっちゃうんでしょうか。

いや、でも、待合スペースで待たされたんですよね。いや、出待ちか。さすがに百合子さん疑いすぎですね、私。

で、せっかくコウタロウを見つけたのに七苗は声をかけられません。

コウタロウは居心地の悪さを感じながらスリーピーススーツを着ている。でも遠くから見ているだけの七苗からしたら、彼はすっかり馴染んでいるようにも見える。

すれ違いはアンジャッシュで十分です……。

『……大庭さん?』

ここで百合子さんが七苗声をかけたのは偶然だったんですね。やっぱり疑ってすみませんでした。
改札みたいなところ通っていたからどこか用事があったでしょうに、応接スペースで話すくらいの時間はあるのか。

まあ、「いい人」なんですよね。

『突然すみません』
『いえ。悠斗さん、今日は1日いろんな場所を見て回る予定で』
『あの、記憶の方は』
『まだ、何も』

七苗は勢いに任せてバスに乗り込んできましたけど、別に百合子さんみたくコウタロウを奪還したかったわけじゃない。
ただ、コウタロウが神戸に行く前「会いたい」と思ってくれていた、その想いに応えたかった。

コウタロウが、神戸に帰ってからこれから先を決めると言っていたことも思い出していたかもしれません。
コウタロウが何を思い出し、何を考え、何を決めたのか、彼自身の言葉が聞けたら、それだけで良かったんじゃないですかね。

『来週、精密検査を受けることになりました。まずは、ここでの生活に慣れて、少しずつ、元の自分を取り戻してもらえればと思っています』

七苗の浮かない表情に対して、8分咲きの笑顔で返す百合子さん。

別に七苗のことをライバルとも認識してないんでしょうね。百合子さんが大場湯に来たときは七苗はキャリアウーマン辞めてましたし。

『大庭さんには、感謝しています。これまで良くしていただいて。でもこれから、カウンセリングも始まります。どうか今は、そっとしておいてください』

そんでもって気になるのがこの台詞。
男女のプロトタイプでいう「男性が女性をモノ扱いする」みたいな思考が混じっているような気がして、非常に心地が悪いんです。

夫婦ならいいのかっていう話もありますけど、まだ彼女は婚約者ですよ?いいんですかここまで口出しちゃって?
お義父さんの意思に沿っているからいいんですかね。

でもそれって、コウタロウ、芝田悠斗、いや名前はどっちでもいい、少なくとも記憶を失っている「彼」には向き合ってない。

《深々と頭を下げ、》
『この通り、お願いします』
《頭を下げ続ける百合子に、下を向く七苗》

七苗にマウント取ろうとか、そんなドロドロした感情はない。芝田悠斗を愛していて支えたいと思っている。心から。

誰をも傷つけるつもりがなく、誠実であっても、自分に見えている現実しか見えていない限りいろんな人を傷つけていく。

開始10分経たずして大切な教訓をいただきました。

会社の近く


おやおや、七苗のスマホに登録されていない電話番号から電話がかかってきます。

080-532-912

実在する携帯電話の番号に9桁は存在しません。なるほど、ぱっと見れば電話番号だし、変にXXXXとマスキングするよりよほど本物っぽいですね。メモメモ。
あと、ここで数字自体に意味を見出すのは諦めます。

『はい』
『七苗ぁ?』

甘い、とろけるように甘いコウタロウの声。
でもそれは、七苗を安心させるためじゃない。七苗に助けを求める子どものような声。私にはそう聞こえました。

『元気?』
『……うん、元気だよ』
『これ俺の番号』
『いま神戸?』
『うん。家で家族に会ったり、会社に行ったり、街中見て回ったり。でも全然思い出せなくて』

百合子さんにあんなん言われたら、私も神戸にいるよ!なんてとても言えません。

でも、通り過ぎた背中は芝田悠斗じゃなくて間違いなくコウタロウだった。いっそ芝田悠斗に戻ってくれていたら、突き放してくれていたら七苗は楽になれたんでしょうか。そう考えたんでしょうか。

『帰るから。一通り、こっちでいろいろ向き合って整理できたら、そっちに――』
『こっちもバタバタしてるから』
『えっ?』
『今やることたくさんあって。ほら、おおば湯のリニューアル。あの話進んでて。もう大変で。だからコウタロウさんもそっちで頑張って。じゃ』

《七苗の様子に驚くコウタロウ。電話を切った七苗。こみ上げる想いを抑えるように息を吐く》

コウタロウ驚いたんですね。コウタロウに余裕がないことが本当によくわかります。

私が1話脱落したきっかけなのでn万回擦りますけども、コウタロウは虚勢を張る2度目ましての女性相手に「うそ。ほんとは寂しい?」って訊いた男なんです。

七苗の声は明らかに上ずっていて、七苗をよく知らない人でさえも「あっ、この人限界だな」って気づけることを、コウタロウは気づけなかった。

だって、コウタロウは七苗に助けてほしかったんですもん。百合子さんみたいに神戸に乗り込んでこなくていいから、「うん、待ってる」って一言くれれば、その一言で頑張れたはずなんです。

七苗がコウタロウを思っていった言葉は、もしかするとコウタロウにとって1番言われたくない、1番傷つく言葉だったのかもしれない。

さっきの百合子さんから感じた教訓が天丼してます。

というか、コウタロウは七苗の電話番号を記憶していたってことですよね。まさかハルミお母さまが七苗の番号を「必要な番号」として再登録してくれいたとはとても思えませんし。

電話帳にすべてを託し、自分の番号すら時々空で言えなくなる私からすればもう……もう……どんだけ好きなんだってことなんですよ。

電話を切った後にコウタロウが乗り込んだ車と七苗が交差して、それぞれが物思いにふけって視線が交わらない演出、ベタだけどそれがいい。


今回もオープニングで10,000字を越えたので、やはりここでいったん区切りとします。

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