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TVドラマ「9ボーダー」9話実況じみた感想(3/4)


ATTENTION

※2024春ドラマという、遥かかなた昔のドラマ感想です。
・当方、1話で辛くなって一度は脱落し、6話から出戻りました。
・1〜3話は視聴済み、4~5話は公式ダイジェストであらすじだけ知ってます。
・最終話は未視聴です(9話の感想に上書きされてしまいそうだから)
・この記事は100%オタクの主観であり妄想であり欲望です ←※重要
・『』は登場人物の台詞、《》は音声解説を表現しています。
・ストーリーに入れ込みすぎてネガティブ気味です。

開店当日

スモークカフェバスハウス

行列ができていると陽ちゃんが言っていたのは誇張ではないようで、いい感じに盛況です。

レモネードはもちろんフードメニューもきちんとあるんですね。
七苗がサーブしてい席には、赤と白のチェックなランチョンマットの上にハンバーガーがあったので、アメリカンダイナーのイメージでしょうか。

まあそういう地域的な縛りはなく、燻製とまきびに合うものはなんでも取り入れていくんでしょうね。『まきびステーキ上がりました~』って八海も言っていますし。

そしてここでMV2曲目来るんかい!!!!!!
今回は「tears」という曲のようです。
ここでも映画風の~という音声解説が流れてこないので、YoutubeにMVとして上がることはないのかな。がっつり挿入歌扱いかもしれません。

初めは嫌いだった
君が僕を嫌ってそうだったから
君も同じだったと
訊いたのはそのずっとあと

調子はどうだい 飯は美味いかい wi-fiはあるかい
返事がないから 無いんじゃないかと思っているけど
無視してるならタダじゃおかない
僕もいつか行く予定だけど 君がちゃんとガイドしてくれよ

SEKAI NO OWARI「tears」より

歌はこの後も一気に続くのですが、シーンが変わるので文章はさみます。
遅れてやってきた千尋はじめ、KURAメンバーが集結します。

「嫌いだった」
そうだよ、KURAにいてガシガシ仕事を頑張れば頑張るほど苦しくて、でもあの時KURAで得た経験とか人脈とか全部使って今があって、だからなんかもういっかなって思える。

モヤついていた過去をこんなふうに消化できたら最高だな。

ご存じの通り面倒なとこがあるから 未知の食べ物はよく腹を壊すんだ
トイレはちゃんと綺麗かい
笑い事じゃないんだ

SEKAI NO OWARI「tears」より

八海と六月がサーブする相手は久美子さん。
選べない時に全部頼んじゃうの、さすが大人の買い物です。こういう明るさというかエネルギー?が、六月とずっと働いてこれた秘訣なんだろうな。

そして、当たり前のように松嶋くんのことを聞くから場転するのに繋ぎが大変スムーズ。
(そう、だからやっぱり9ボーダーで繋ぎが急だなって思うときは意図があるってことなんですよ)

思い出すのはさ
君の笑顔なんかじゃなく
悪い顔だったりするんだ
涙が零れた
君に出逢えて良かったと思う度に
woah
tears
woah
cheers

SEKAI NO OWARI「tears」より

正規メンバーなのにウメケンちゃんとここまで対等にコメディ張り合える松嶋くん、いや、ここでは井之脇さんと呼ばせていただきますが、井之脇さんほんと変幻自在な役者さんだな。

『酵素風呂師としての歴が浅いんだもん。いきなりお客さんじゃ、ドキドキしちゃう』っていうウメケンちゃんの上目遣いに『なんか、僕も、ドキドキしてきました』っていいながら浴衣?の襟元正す松嶋くん。

なんだろう、台詞だけだと妖しげなのにただひたすら笑える。悪友っていうほどがっつり仲良しシーンはないけど、おおば湯のファンになったって言っていたコミュ力お化けの松嶋くんのことだから、当然ウメケンちゃんともそれなりに仲良くなっているはずで。

「悪い顔」はウメケンちゃんかな。それを悪ノリで返せちゃうコンビ、いい。

9話に2人がいてくれて本当にありがとう。

言葉になれなかった
この僕の想い達は
わざわざ言わなくても
解るだろ兄弟

SEKAI NO OWARI「tears」より

はい、意外ではないけど久美子さんもコミュ力お化けだった。
普通にKURAメンバーと相席してるし、ごろちゃんのこと普通に「むっちゃんパパ」とか親しみこめて呼んじゃってるし、ごろちゃんに半ば誘拐されてきたヤマちゃんにもしれっと「頼み過ぎたので」ってお食事ご一緒するし。

なに、成澤会計事務所って2/3コミュ力お化けなの?

長い長い長い道を この列車で

SEKAI NO OWARI「tears」より

盛り上がっているカフェを愛しそうに見ている久吾、ここに来るまで長かったね。

大人になってしまえばたかが17年。でも、17歳の少年にとって17年は人生の全て。長かったね。これからも道は続くけれど、もう迷惑かけないようにとか1人で頑張らなくちゃとか、いらない荷物は捨てていいんだよ。

君に何らかのボーダーがやってくるまで、甘えていいんだ。そんでボーダーがやってきたら、その時考えればいいんだ。

この日は野球部の練習を休んだのかな。ワークライフバランス大事だからね。この場合どっちがワークか分からないけど。

あと、銭湯だからコーヒー出さないのかなって思ったけど普通に提供してますね。さっきの黒板にreccomendって書いてあった気がするから、あれはあくまでおすすめメニューだったのか。

そしてこの後もノリのいい歌詞が続くかと思えば、ちょっと不穏なBGMで挿入歌は唐突に終了。

さっきおおば湯の入り口に立っていたスーツ男と思しき人物がカフェに入ってきて、かと言って何か言うでもなく七苗の『こちらどうぞ』に『はい』と従う。

なんだ……なんだこれは……?

カフェの雰囲気と似合わないスーツ姿を見ながら一言、陽ちゃんが『来ると思ったんだけどな』。

牛タン食べた日に聞いた七苗の話を聞いたら、ラフなトレーナーじゃなくてスーツで期待しちゃうのは当然の流れ。

そして、その当然の流れからスーツ姿のコウタロウへと流れるの……どう考えても場転の天才。

副社長室

ああ~~~~コウタロウが見ているSNSの投稿にばっちりメニュー名載っていましたね。
投稿文を追いかけていくと、

(見切れ)リニューアルオープンします!(クラッカーの絵文字)
(見切れ)E BATHHOUSEが開店(コーヒーの絵文字)
(見切れ)のおすすめメニューは…(手でメモする絵文字)
(見切れ)焼きビーフのハンバーガーwith燻製フライドポテト
✓国産牛の薪火ステーキwithピヨちゃんポテト
✓自分で注げる!ととのうクラフトビール

皆さまのお越しをお待ちしてお(見切れ)

ハンバーガーは上部の写真を見ると「看板メニュー!薪焼きビーフの~」が正式名称のようですね。

試食会でいろんな食材を試していましたが、結局肉を焼いてポテトを燻製するのが良かったか。

《八海と六月の写真入りのおすすめメニュー紹介を見てほほ笑む。スワイプすると、七苗の写真。笑顔が消え、何かを思う》

このSNSの写真が絶妙~にリアル。
なんだろう、盛れてない?変に加工してないから、彼女たちが女優として見せる普段の美しさが全然伝わってこないし、メニューもおいしそうなんだけどプロのインサートではない。

あくまでも手作りです!っていう感じで、これは好みが分かれそうです。
でも古民家カフェとか興味ある人なら絶対行くと思う。私は行きたい。古民家カフェ行ったことないけど。

コウタロウが六月と八海を見てほほ笑むのに七苗を見て笑えないの、苦しいな。大庭家としての楽しい思い出と、七苗から拒絶されている(と感じている)今がごちゃ混ぜになって、重たい。

閉店後・女湯

彼氏がいるだのいないだの、デートは年間100回だの言っていた1話とはまるで違う建設的な反省会です。

八海がSNS周りの提案をする中で、七苗がハンバーガーの提供方法に触れているのが感慨深い。
『あ、看板メニューの薪焼きビーフのハンバーガーあれもっと目玉にしよう。例えばぁ、お客様に出すときに、煙を出す演出をするとか』

1話でも、演出方法にこだわっていたような。あの時は石焼でしたっけ。
レシピ周りのことは八海が一手に引き受けている分、やっぱり七苗が踏ん張りたいのは魅せ方。
それぞれに役割があって、でも完全な縦割りじゃなく意見を求めあう。

規模が違うとはいえ芝田家も大庭家も家族経営なので、このあたりのコミュニケーション密度が顕著に対比されているのが巧いです。

開店1週間後

清澄白河駅前・スモークカフェ

まっ、そうなるよねえ……というビターな展開です。

七苗は駅前でビラ配り、カフェには常連4人とカップをすする松嶋くん。
松嶋くんのそれがコーヒーなのか紅茶なのか気になるけど、それより成澤事務所は会計士2人ともこっちにいて大丈夫なんですかね?
久吾がいないから平日かなって……思うんですけど……。

個人経営って自由だなぁ(遠い目)

くたびれた様子でビラ配りから帰ってきた七苗に反応してカバンから何やら取り出す松嶋くん。

お?人を喜ばせるのが大好きなワンコ男子・松嶋、何か考えておるな?

『僕、昔の旅仲間に宣伝しておきました』

彼にしかできないことあった~~~~~!
なんたって清澄白河と羽田空港は車で30分、電車でも乗り換え1回で40~50分あれば着く距離です。 ※東京モノレール、京急どちらも調査済み

地理的には、日本人の一時帰国であろうと海外で知り合った友達の観光であろうと行動圏内です。

でもやっぱり松嶋くんは松嶋くんだった。

『イベントやって集客するのとかどうですかね。僕知り合いにいるんですよ。ギター弾きながら歌える、コウタロウさんみたいな人が』

おっそろしい顔で見ているのが六月、シッ!って声で制するのが八海。

というか八海、神戸ビーフの下りでも平気で松嶋くんの背中叩いていたけど、一回り年上の男性にそれができちゃうってすごすぎません?

もちろん、松嶋くんがそれを許容できるような人格であるのは前提ですけど、こういうところからも「陽ちゃんとは年が離れているけど対等にやっていけるのかな」と思わせてしまう。

『あっ、あっ、なんでもないです。はい~』

最後のはい~は完全にやすこちゃんですけどアドリブですか?

忙しいから忘れてたなどと供述している七苗氏、六月の『何の連絡もないの?』には素直に答えてますね。
そう、七苗が無視しているだけで、コウタロウからは何度も連絡している。

『やっぱり気にしてくれてるんですね』

やっぱりという言葉が出てくるあたり、やっぱり松嶋くんはコウタロウの心が大庭家にあることを信じている。

『でも、もう話すことはないから。とにかく、元の生活に戻れるよう祈ってる』

七苗のこれは、虚勢だけど多分本心でもある。
百合子さんに深々と頭下げられちゃったら、そういう思考にもなる。

フィクションだってノンフィクションだって、記憶喪失した人は記憶を取り戻して「元の生活に戻れる」ことこそハッピーエンド。それが常識。

それが彼の幸せだと信じているんでしょう。

コウタロウの話を聞いてないし、聞こうともしていないから。

芝田家

はい、では「元の生活」に登場していただきましょう。酒井家との会食です。

『最近、ようやく悠斗が職場復帰しましてね。何とか形になりましたが、ひとえに百合子さんのおかげです』

自分のしたいことを成し遂げるためなら頭だって下げちゃう系おやじ、末恐ろしい。

謙遜する百合子さんに、彼女の父親が言葉を継ぎます。

百合子の父親『最初は、状態を聞いて正直心配ではありましたが、それを聞いて安心しました』
百合子の母親『百合子も、当初の予定通り結婚式を行えたらと』

音声解説、なぜか酒井家両親の名前は出してくれないんですが。芝田家との扱いの差はなんですか?1話ぽっきりだからですか?

百合子さんの『悠斗さんさえ、よければ』は極めて慎ましい一言ですが、ここでこの一発は強烈すぎまっせ。

相手に決定をゆだねているようで周りの協力を巻き込み願い通りに事を運ぶ。(小生、専攻が社会学だったものでこういう相互行為論大好きなんでござんす)

問題は、この技巧を百合子さんが意識的に使ったのか、無意識で使ったかなんですよね。
彼女は作品中ずっと「いい人」という評判で通っているので、素直にとれば後者なんですけど……。

でも、どっちにしろ怖い人ではあります。
現にほら、コウタロウは両家のご両親の期待に満ちた目を前に『良くないです』なんて言えないじゃないですか。

でも言いかけるんですよ。それがどれだけ勇気のいることか。

コウタロウ『ですが、や――』
カツヒサ『やー、ありがたい!もったいない話です。ほんとに、なんとお礼を申し上げてよいか。ありがとうございます』

そして、それを踏みにじるカツヒサ父さんがどれだけ残酷であることか。芝田悠斗は芝田カツヒサにとって駒でしかないんだなと、ここでもまざまざと見せつけられる。

《笑顔を作る百合子。コウタロウを気に掛けるナオキ。》

あ、最初に音声解説なしで見た時には気づかなった。百合子さん、笑顔を作ってたんですね。誰に対して作っていたんだろう。

でも、ここでちょっとだけ光が見えてきました。
芝田家にも、コウタロウを気にかけてくれる人がいるんだって。

それは皮肉にして必然、芝田家に居場所のないナオキ。

中庭

ナオキ氏が両手に缶ビール持って『飲む?』に対するコウタロウの『ありがと』

そっか、ナオキには敬語外れたんだ。百合子さんに対してはどうだったっけ。この回、特にオフィスシーンを見返すの辛いので深追いやめておきます。

というかナオキ氏、とにかく声が好きです。優しくてやわらかくて、『飲む?』の中にちゃんと選択肢がある。多分彼になら、コウタロウは「飲まない」とか「飲みたくない」って言える。

年下だからとかそういうんじゃなく、それだけナオキ氏がフラットなんでしょうね。かつ、この空気感が大庭家やバルに存在していた普通だった。

そんなナオキがコウタロウのことをじっと見つめて、『何?』って言われたら、

《にやにやしているナオキ》

公式でにやにやしてるって言われてますよナオキ氏!!

『前はこんなふうに話す時間もなかったなーってさ。兄貴はごりごりの仕事人間だったから』

そっか、ナオキは嬉しいんですね。
兄が自分を覚えていないのはもちろん寂しいと思うんです。
けど、DMで赤の他人に自分も写った写真まで送って『会いたいです』って伝えた。そして会えた。仕事はしているけど、話す時間が持てた。それがにやにやしちゃうくらい嬉しかった。

良かった。芝田悠斗になり切れていない彼のことをありのままに愛してくれる存在が神戸にもいたんだ。

『俺が?』
『だからか、よく百合子さんと喧嘩になってたよ』

「よく……喧嘩になってた」。ほう、第三者の意見は気になりますねえ。

『俺は、百合子さんとは……』
『親同士が知り合いで、家族ぐるみで交流があって。入社当時は、事業部で兄貴と一緒のチームで働いてたらしい。上司にはっきり意見が言える、自分がある人だって言ってた。親の勧めもあって付き合うようになって』

ナオキの地頭の良さがよくわかります。書き起こしだけだと伝わらないんですけど、決して早口ではないんです。それでいて一言一言に無駄がない。伝聞と自分の見聞きしたことを正確に分け、会食時の異様な盛り上がりについてもそれとなく説明できる。

絶対、彼も仕事ができる人間なんだけどな。ナオキの人生がすごく気になる。

『でも兄貴、いつも百合子さんのこと気にしてた。忙しくても連絡とって、なるべく会う時間作って。3年間、ちゃんっと好きだったと思う』

《視線を下げるコウタロウ》

『だから大丈夫。2人はきっとうまくいく』

私はそうは思わないけどな~~~~~~(抗弁)

でも、芝田家において父親の言うことは絶対で、ナオキは今回の結婚が覆られないと思っている。

そんな状況でナオキにできることは、できるだけポジティブな見方で事実を伝えて、少しでも兄貴を安心させてあげること。

だいぶナオキにほだされてる気もしますが、彼が芝田家において1番普通、コウタロウが身につけてきた普通に近い人だと思うんですよね。

『ほんとに感謝してる。こんな俺を気遣ってくれて。仕事の面でもサポートしてくれて。でも……』
『向こうに、誰かいるの?』

たぶん9話で私が1番聞きたかった台詞かもしれない。

神戸についてから、誰1人としてコウタロウのことを知ろうとしてこなかった。東京でどんなふうに過ごしてきたか、どんな人にお世話になったのか。

《答えず、下を向いたままのコウタロウ》
『どんな人?』

もーう!おばちゃん泣いちゃうじゃん!
コウタロウのことを知ろうとしてくれる人がやっと現れたんだ。

これから最終話にかけてナオキがどういう動きをしていくのかは正直わかりません。両親の影響力が強すぎて、目立っては手も足も出ないかもしれない。

でも、『向こうに誰かいるの?』『どんな人?』と聞いてくれたナオキのことを、コウタロウはこの先ずっと感謝すると思います。

『よく食べてよく笑う。一生懸命な人』

やっと上を向いて話せたね。

清澄白河駅前

はい、そしてしっかり繋がって、一生懸命な七苗が今日もビラを配っています。

ドリンク半額クーポンか。銭湯入ってくれないとカフェだけじゃ赤字じゃないかな。

ビラを見ると、さっきのポスターで見えなかった文字がくっきり読めてきました。
Tel 03-561-999

でもウェブサイトのURLは読み切れない。httqsなのは笑ったけれども。いやそこはhttpsでええやん。

メニューも1品判明しましたね。
写真だけなのでメニュー名は不明ですが、ピヨちゃんとハンバーガーに挟まれて和風スパゲッティ色のパスタが載っています。

可愛いなあ。

そして同窓会のお知らせ。送ってきたのは浦井奏……高校時代の友人は初出のはずなので、誰が送ってきたかに意味はなさそう。

清澄中学校3年1組、中学校でも同窓会するんだ!
どの学校においても同窓会なるものに参加したことがないので、全てが「へえ」って感じです。

メッセージによると「10月18日開催、場所はまだ未定。」

じゃあおおば湯を会場にしてしまえと。

聞くところによると(?)同窓会って節目で開くらしいので30歳になる年で開催されるのは何もおかしくないらしい。そこに乗っかって起死回生を図ろうと。

物語の偶然と必然とを絶妙に搔い潜る快感です。

おおば湯・同窓会

乾杯の音頭とるのは陽ちゃん。
いや、会場提供している七苗はともかく、幹事おるのにお前が仕切るんかーい!
もう根っからの陽キャ過ぎてワタシ 理解 デキナイ……。

八海『すみません手伝ってもらっちゃって』
あつ子『いいえぇ。八海ちゃんの上達具合をチェックしに』

ちょっと悪そうな顔でほほ笑むあつ子さん、いい。
相手に気を遣わせない、でも気遣われてるって伝わるコミュニケーション。

あつ子さんは陽キャとかコミュ力お化けとかそういうジャンルではない気がするけど、本当にただただあったかい人だ。

あと、ちゃんと幹事に浦井って名前がついていた理由も判明しましたね。
よくもまあ家族(妹)や彼氏(とみんなが思ってる)の前で口説けるねえ……。

八海、あつ子さんの解説をよく聞いておきな。10年後はああなるそうです。

二次会

カラオケで歌っているのはMONGOL800さんの「小さな恋の歌」。

タンバリン鳴らして何人かで歌っていて、どっからどう見ても2次会。そしてセンターはやっぱり陽ちゃん。

カラオケで歌っているだけなので挿入歌ほどの音ハメはないんですけど、熱唱しているサビのところを陽ちゃんが歌っていると思わせている演出はなかなか意味深です。

ほら あなたにとって大事な人ほど すぐそばにいるの
ただ あなたにだけ届いてほしい 響け恋の歌

MONGOL800「小さな恋の歌」より

どうとでも取れてしまう……。

そしてアルコールも入った2次会で当然のように始まる下世話な恋バナ。

まあ、こんな美男美女の幼馴染とか普通に気になるよね。

『でも、陽太って七苗のこと好きだったよね』
『えっ?』
『私も聞いた。陽太に告った子がそう言ってた』

同級生2人による証言は強い。

でも2番目の証言は本当ですか?いや、疑ってるわけじゃないけど、これが事実なら陽ちゃん相当青い春じゃん。そんなこと言ったら不本意な形で本人に気持ちが伝わりかねなくないですか?不器用か?不器用なのか?

七苗の先にいる陽太、さっき口説くの失敗した涌井に1番モテる感じの曲教えろとか言われてさ。やっぱりモテてたんだ。

それで気持ちが傾くとかそんなんじゃないけど、約20年越しの事実だから単純に衝撃ですよね。

少なくとも就職した後には彼氏がいて、別れてずいぶんたってからコウタロウに出会って付き合って、その間も七苗の前で笑っている陽ちゃんは変わってない、ように見えていた。

七苗は今好きな人と「会えなくて苦しい」けど、陽ちゃんは好きな人に「いつでも会えてしまう苦しさ」を感じていたんだよ。
酔いのまわった七苗がそこまで感じ取れたかなんて、わからないけれど。

《サワーをぐいっと飲む七苗。その様子に気づく陽太。》

陽ちゃんの視野、草食動物ですか?

『連絡したのに誰も迎えに来ない』

春奈ちゃんはわりと骨太でしっかりした体格の女性で、対する木戸さんは比較的線の細い印象ですけど、やっぱり陽ちゃん男性なんだなって感じる。

八海や六月はいまさら「ごゆっくり~!」みたいなテンションではないだろうけど、家族だからこそ七苗が酔った時の面倒くささは知っていそうだから単純に知らぬが仏なのかもしれません。困ったら高木陽太。間違いない。

『てか。あたしのこと好きだったの?』

動揺するよね。でも、陽太はずっと足を止めない。

『そうだよ。誰よりも、七苗のこと知ってる自信があった。でもきっと、1番の親友なんだと思う。腐れ縁寄りの、親友』
『ありがと』

ここの陽ちゃんの表情が、というか木戸さんの表情にぐわっと心を持っていかれます。

しょーがねーなって。でも、諦めではないし、切なさも感じない。

恋をして愛になって、そういう立場には2度となれないってわかってる。コウタロウから奪いたいなんて微塵も感じてない。

でも1番は譲らない。親友部門の1位はコウタロウにだって渡さない。俺は何があってもお前の味方だから、心配すんなって。

他担狩りにもほどがある。これで陽ちゃんのファン何人増えたんですか?

副社長室

多分、夜遅い時間。たくさんの本とノートを広げて、ノートPCとモニターがあって、自分だって休めてない。

それでも困っている百合子さんの頼み事に『僕でよければ』って返して、それから彼女にかけた言葉は、今までの芝田悠斗には多分考えもつかなかった言葉。

『少し休む?』
『えっ?』
『もしよかったらお茶でも』
『じゃあ。紅茶を』
『いつものオレンジペコ?』

百合子さんはわかっています。コウタロウが記憶を取り戻したわけじゃないってことくらい。
でも、好きだった人にこんなこと言われたら、もうそんなのどうでもよくなっちゃいますよね。

結婚は決まったけど、コウタロウが乗り気じゃないのはわかっていた。記憶が戻らない限り心は東京にあるんじゃないかって、会食の時に笑顔を作っていたのは、そういう不安からきていたのかもしれない。

でも、コウタロウが歩み寄って、分からないなりに芝田悠斗になってくれれば、何なら前よりいっそう柔らかくなって、百合子さんが欲しかった言葉をくれる。

他の作品だったら希望のシーンなのにな。


続きます。次で最後です。

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