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「切ない」という感情が苦手だったのに



夏目友人帳3巻10話について

ここからはネタバレを含むので、知りたくない人は読まないでほしい。

最近、夏目友人帳という漫画を読み始めた。ずっと友人や旦那さんからおすすめされていたけれど、なぜか読まずにいたやつ。だけど、ONE PIECEを一気に最新刊まで読んで、漫画ロスだったので「読んでみようかな」と何となく手に取った。

正直、「あれ?思ってたよりもハマらないかも…?」なんて思いつつ3巻目まで読んでて、10話目のホタルのお話でグッと心を掴まれた。

※以下、ネタバレ

主人公の少年と同じく妖怪が見えた男性とホタルの妖怪の恋物語。妖怪が見えるせいで一人ぼっちだった男性に、ホタルの妖怪が話しかけ交流を深めていく。徐々に2人とも「恋に落ちていく」にもかかわらず、突然、男性は妖怪が見えなくなってしまう。お互いを想い合っているのに、通じ合えない2人。どこまでもお互いを想い合う姿に美しさすら感じる切ない恋物語。

切ない、という感情が苦手だった

読み終わったとき、切ないけれど美しい、そう思った。

男性とホタルの妖怪の恋は実らない。だけど、男性がホタルの妖怪に恋してたこと、ずっとその妖怪のことが忘れられず、数人の女性と付き合ったがダメだったこと。それを主人公の夏目と大人になった男性との会話でホタルの妖怪は男性の気持ちを知ることになる。本当にホタルの妖怪のことが好きだったんだなぁって心が温かくなったけれど、同時に好きな人が突然見えなくなったことに対する失望、悲しさを強く感じた。「俺のこと嫌いになった?」って、そりゃ思ってしまうよ。「だから俺の前からいなくなってしまったの?」って。そんな中、やっと心から愛せる女性に出逢えた男性には「良かったね」という気持ちと「ホタルの妖怪の気持ちを考えると、素直に喜べない」みたいな両極端な気持ちも浮かんできた。

この素直に喜べないところが、切ない。胸がきゅって締め付けられる。この感覚が苦手なんだよなぁ。なんか、上司とかに怒られるときも胸がきゅっとするし、自分たちではどうにもできない理不尽さだと、もう、ね。受け入れるしかないんだろうけど、受け入れたくない、みたいな。どうにもできないもどかしさを感じるのが嫌で、「切ない」という感情はなるべく感じたくないなぁと思う。

美しい切なさ

それでも、このお話は好きだった。どう頑張っても、2人の恋は実らない。だけど、それでもお互いを想い合ってることが伝わってきたし、それぞれが前を向いて生きてく姿に美しさを感じた。ホタルの妖怪の気持ちを考えると、とにかく切なさで胸が痛くなる。好きなのに、男性に自分の気持ちを伝えられない。しかも、自分のことをずっと想ってくれていたとはいえ、最終的には別の女性と結ばれるわけでしょ。いくら人間と妖怪という違いがあるとはいえ、すぐに男性の結婚を素直に喜べたとは思えない。というか、わたしだったら無理(笑)。なんなら、どんな女の人なのか調べちゃいそう。だって、男性には幸せになってほしいからね。それはさておき、ホタルの姿になったら命が短くなることを承知で、男性の結婚を祝うためにホタルの姿に戻ったシーンはすごく素敵だった。何よりも、そのホタルを見たときに、男性の頭の中にホタルの妖怪の姿がよぎったこと。直接言葉を交わさなくても伝わる想い。最後の最後までお互いを想い合う2人は切ないけれど、どこまでも美しかった。「切ない」という感情は苦手だけど、こんな「切なさ」ならもう一度経験したい。

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