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ボイジャーの旅

 科学雑誌「日経サイエンス」の最近の号に、宇宙探査機ボイジャーの話が載っていました。だいぶ昔に打ち上げられて、木星や土星やその惑星の鮮明な写真を送ってきたあの船です。木星の衛星に火山があったり、氷に覆われていたりが判明して太陽系の概念を書き換えることになったあの写真です。

 この探査機が打ち上げられたのは1977年。その計画は慌ただしく立てられ、探査機は大急ぎでつくられました。ある人が、1970年末から80年代初めにかけて、地球、木星、土星、天王星、海王星が一線に並ぶことに気がついたのです。これは176年に一度しか起こらないまれな出来事なのです。
だからどうだと言うのか?


 探査機が巨大惑星のそばを通過するたびに、その重力を利用して加速できるので(スイング・バイ)、海王星への到達期間を30年から12年に短縮できるのです。

 「フォルクスワーゲンほどの大きさの」その探査機は二つ作られました。当時の探査機の打ち上げはとても失敗が多かったので、二つ作るのが習わしになっていたとのことです。探査機に搭載されたコンピューターの記憶容量は69キロバイト。皆さんお持ちのスマホの容量は何バイトですか? ○ギガバイトでしょう? キロの1000倍がメガ、メガの1000倍がギガです。
 そんなボイジャー1号と2号は15日ほどの間隔であい継いで打ち上げられ、1979年に木星に、1980年に土星に接近し、数万枚の写真を送って来ました。

 その後ボイジャー1号は黄道面(太陽を回る惑星の軌道面)を離れ、宇宙空間に飛び去りました。ボイジャー2号は1986年に天王星に接近してその姿を撮影、1989年には海王星に接近してその写真を送って来ました。その後2号も黄道面を離れて太陽系から遠ざかって行ったのですが、なんと1号も2号もいまだに機能していて、太陽系外縁の情報を地球に送り続けているそうなのです。
 それらの機能はプルトニウム崩壊の熱を電気に変えることにより作動しています。この出力は年間4ワットずつ低下しているので、いずれ機能は停止するでしょうが、2030年までもたせるために計器の選別がされているそうです。

 ボイジャーには金色のレコード盤(打ち上げ当時のデータ伝達手段)が積んであって、それには遠い宇宙で出会うかもしれない存在に向けてのメッセージが記録されているそうです。
 「画像は子供やイルカ、ダンサー、日没の風景など。音としてはコオロギの鳴き声、雨の音……バッハのブランデンブルグ協奏曲第2番やチャック・ベリーのジョニー・Bグッドなど90分の音楽が収められている」
 突然涙が出てしまいました。ジョニー・Bグッドは昔、私の大学のロックバンドが演奏し、みんなで踊り狂った曲なんです。その歌が今も宇宙のはてを旅しているなんて。
 世界には音楽は無数にあるのに、バッハとチャック・ベリーを選んだ当時のアメリカ人たちって、なんでしょうねえ。

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