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矛盾を束ねて ~新旧『東京ラブストーリー』比較~6・7話

東京みたいに気まぐれで、刺激的で、毎日表情がクルクル変わるリカに惹かれたカンチ。原作の漫画では、カンチはリカのエネルギーの強さにだんだんと疲弊していき、最後には幼馴染のさとみと、ふるさとのような穏やかな日々を送りたいと望むようになる。さて、令和版『東京ラブストーリー』では?

以前つきあっていた和賀部長とどうして別れたのかと尋ねるカンチに対して、リカは「私を所有しようとしたからだよ」と答える。「それだけ好きだったってことじゃないのか」とさらに詰め寄ると、リカは「いくら好きでも、相手を所有していい理由にはならないよ」と答える。苛立ったカンチは、三上に「さとみに無理させんな。お前さ、永遠に自分のものにならない相手、好きなる気持ち考えたことあるのか」と八つ当たりしてしまう。

リカは知人から誘われたレセプションにカンチも同席してほしいと誘う。「カンチは私の恋人だから」と言われて、子犬のように喜ぶカンチ。カンチは愛にちゃんと名前をつけたいタイプなのだ。レセプション会場で海外のアーティストと物おじせず、流ちょうな英語で会話するリカを見て、カンチは「俺とは違う世界の人」「堂々としていてブレない凄い人」と表現してしまう。「みんなそう言って私から離れていく」とリカは寂しそうに言う。

カンチの誕生日は、さとみをめぐってすれ違いが起こったが結局仲直り。「(さとみちゃんが)いまさら取りに来ても遅いもんね。カンチは誰にも渡さないっ!

リカはレセプションで会った海外のアーティストから、ニューヨークで一緒に働かないかと誘われる。そのことをはじめて和賀部長から聞かされたカンチは、「なんでそんな大事なことを相談してくれなかったんだ」「リカにとって俺は何? ただ今が楽しいだけだったらそれでいいのか」と怒りをぶつける。

カンチはリカと話し合おうとするが、リカは拒絶しつづける。待ち伏せしてやっとリカをつかまえたカンチは、「リカは俺じゃないとダメだと思う。俺もリカじゃないとダメだから」と言う。するとリカは、「だったら、24時間抱きしめて、24時間愛してるって言って!」と、原作でも平成版(5話のラスト)でも出てきた名言を放つのだ。

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「俺は逃げない。俺はリカから逃げない! リカは絶対オレじゃないとダメだから!」

6話から7話にかけて、とにかくカンチがリカに対して一生懸命で、こんないい彼氏、他にないわってくらい魅力的です。目まぐるしく変わる伊藤健太郎くんの表情の魅力をとうとうと語りたい気持ちをグッとこらえて、ドラマの作りを見ていきます。

リカはなぜ、その時々で言うことが変わるのだろう? 「いくら好きでも相手を所有していい理由にはならない」と言っていたのに、「カンチは誰にも渡さない」「24時間好きって言って」これは、台詞が矛盾していないだろうか? 4話では「私は安心なんていらないけどな。私といる以外の時間は、その人のものでしょ。だから、私といる時以外に他の誰かを好きでも、それは相手の自由だ。二人でいる時に心も身体も100%くれれば、私はそれでいい」とさえ言っているのです。

矛盾する行動の真ん中には、かならずそれを束ねる理由があるはずです。もしかしたら、「みんなそう言って私から離れていく」という台詞に謎を解くカギがあるのかもしれません。本当は強い愛への渇望があるけど、過去の喪失体験から、執着がないように振る舞っている。

それならば、カンチが三上に相談する形で、「リカはあの時はこう言ったかと思えば、その次はこう言う。まるで考えが読めない」と、視聴者の疑問を代弁する形にすれば良かったのではないか。矛盾や違和感をそのままにせず、一言でもいいからエクスキューズを入れると、ドラマは説得力を持つのではないかと思います。

#ドラマ #東京ラブストーリー

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