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スマホ時代のすれ違い ~新旧『東京ラブストーリー』比較~3話・4話

フジテレビ『東京ラブストーリー』2020、3話。一夜を共にしたリカとカンチだったが、カンチは「この人は俺をからかっているだけなんだ」「俺の手に負えるような人じゃない」とリカを遠ざけようとする。「あの時まで時間を巻きもどそっか。私も全部忘れるから、カンチも全部忘れて」。その言葉を置いて、リカは姿を消してしまう。オフィスの席は空いたまま。カンチは戸惑いと寂しさを隠せない。「リカに会いたい」とLINEを送ろうとするが、送信ボタンを押す前に消してしまう。

2020版の東京ラブストーリーには、LINEの画面が頻繁に登場する。無音でストーリーが進行していくので、画面を見ていないと何が起こっているのか分からない時がある。公衆電話からスマホへと通信機器は進化を遂げたが、「ダイヤル回して手を止めた」が「送信ボタンを取りやめた」に変わっただけで、恋する心は今も昔も変わらないのだ。会えない時間が愛を育てるのだ。

結局、意を決して「リカに会いたい」と送信したカンチは、リカと本当の意味で結ばれる。恋人同士になったのだ。ニューヨークから帰って来たリカを空港で出迎えるシーンは、必見。伊藤健太郎くんの渾身の告白シーンは圧巻ですよ。そして、石橋静河さんの笑顔が本当に素敵。「リカに会いたい、リカがいないと寂しい」といつの間にか思っていたのは、カンチだけではなく、視聴者である私も同じだったのです。こんなお芝居ができる石橋さんに拍手を送りたいです。ここまでが第3話。

さて、今日のテーマは「スマホ時代のすれ違い」。第4話。三上と付き合いだしたさとみはある日、三上のスマホ画面に女性からの新着メッセージが表示されているのを偶然目にしてしまう。「昨日はごちそうさま。お寿司美味しかった」。

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さとみは表示されていた名前「naoko_nagasaki」で検索をかける。インスタグラムのアカウントがヒットする。写真をスクロールしていくと、お寿司の写真。そして、知的な美人「長崎尚子」の写真が目に飛び込んでくる。「この人には到底敵わない…」さとみはそう感じてしまう。

さとみのこの行動を、「暴走」「令和のさとみもやっぱりヤバかった」とレビューする向きもありますが、私は普通だと思います。今時、気になる人のSNSアカウントがあるかどうか、調べない人います? ましてや相手は彼氏の浮気相手かもしれないんですよ? 

この後、北川亜矢子先生の神台詞が降臨するのです。さとみの同僚、トキコがスマホ片手に、「○○のヤツ、SNSのフォロー申請してくるの、やめてくれないかなあ。まったくどこで見つけてくるんだか」と言うのです。そう、今は「そういう時代」なんだよ、とでも言うように。この前作との比較を意識した台詞を差し込んでくるのが、本当に神だと思います。本当に丁寧な脚本。

スマホが普及して、平成版の「連絡がつかない」「電話をかけたら違う人の電話番号だった」などのすれ違いはなくなったけど、スマホとSNSの時代だからこその「すれ違い」がある。

気になる人の投稿写真を見る。ひとり暮らしだと思っていた人の部屋に、可愛い雑貨が写りこんでいると、胸がかきむしられる。綺麗な服を着ていると、誰が選んでくれたのだろうと心が曇る。

SNSもそうですが、スマホ時代のすれ違いといえば、やはり「LINEの既読無視」が一番でしょう。さとみも、「おはよう」「今日は学校?」などと三上に何度もLINEを送るが、返事が返ってこない。「テスト勉強が忙しいのかも」と自分に言い聞かせるが、不安で何度もスマホを見てしまう。メッセージを読んでいるはずなのに返事がないのは、電話が繋がらないよりも不安になる。

ところで、2020年の「関口さとみ」を演じる石井杏奈さんなのですが、1991版の有森也実に漂うメンヘ…「壊れたガラス」のような雰囲気がないんですよね。とっても健康的。それもそのはず。E-girlsのパフォーマーなんですって。ダンサーだもの。鍛えてるもの。健全な身体に健全な精神が宿ってる感じするもの。

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有森也実の「関口さとみ」は、清純さの中に女の嫉妬と情念が見え隠れする情緒不安定さが見た目からして滲み出ていて最高だったのですが、それと比べると石井杏奈さんは今のところ「健康的な」印象なのです。

でも、第一話で三上と結ばれた翌朝、満足げに三上に寄り添う表情はちょっとヤバい感じがして良かったです。結ばれる前はあんなに頑なだったのに、結ばれた途端「カノジョ顔」に変貌するあたり。これからどんな風に変わっていくのか、楽しみです。「キオスクでガム買って」は果たして出てくるのか…?

#ドラマ #東京ラブストーリー #有森也実 #石井杏奈


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