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推し映画25-「TENET」とクリストファー・ノーラン監督作品について

2020年9月18日公開の「TENET」を観てきました。
まず、何度かの延期を経て、無事に劇場公開に至ったことが本当に喜ばしいです。ずっと楽しみにしていたクリストファー・ノーラン監督の新作。よもや配信での公開になんてなった日には…と怯えていましたが「映画館で映画を観ること」にこだわり続けたノーラン監督の想いに、1ファンとして心から感謝しています。
このnoteのトップ画像は、「TENET」のフライヤーの裏面に書かれていた、今年3月21日にノーラン監督がワシントン・ポスト紙に寄せたメッセージです。
映画館で映画を観るということ。何処でも映画を観れる時代になったからこそ、多くの人が集う機会は希少で慎重を来さなければならなくなった時代だからこそ、改めてその価値を広く知らしめなければならない。
このタイミングでノーラン監督の新作が公開になったのは、映画界にとって暁光だったと、改めて感じます。

先行上映を観たトム・クルーズのテンションの高さ、大好きだ!

それにしても、先行上映を観た方々の感想を避け続ける日々、なかなかつらかったです…笑

※もしこれを読んでくださっている方で、まだ「TENET」を観ておられない方は、読まずに閉じていただけますようお願いいたします!できれば一切の知識を仕入れず、「無知のままで」観ることをお勧めします。


公開初日の今日、「TENET」を観てきました!期待通りの新世界と、想像を上回る映像の凄さに没入した、興奮しっぱなしの150分間でした。最高です。
初見では「?」な点が多く、特にクライマックス付近は考えることを放棄したレベルなので、3回は観るつもりです。2回目は考察後の答え合わせ、3回目はIMAXで映像を楽しみたいと思います!
「TENET」の感想を…と思いましたが、まだまだ考察し足りないので、勢いだけの感想テキストに加え、ノーラン監督作品の好きポイントを綴ってみます。


クリストファー・ノーラン監督作品について

ノーラン監督の作品を観るたび「この新世界を1,900円で体験させてもらっていいのだろうか!?」といつも思います。現代の魔法使いか…

ノーラン監督の作品は、複雑かつ精緻な構造、まだ誰も観たことがない映像、人間のエモーショナルな機微…の3点が、いつも完璧な要素として織り込まれていると思っています。

初見はいつも“何が??どうなって???”と混乱するのですが、その混沌の渦にダイブするのが、最高に気持ち良くて!
かつ映像がわかりやすくエキサイティングでなおかつ美しく、ああこんな映像が観れるなんて凄い!とアドレナリンが出まくり、なおかつ必ず、強烈に心揺さぶられるエモーショナルな場面がある。複雑さ・精密さとエンターテイメントとエモーショナルを見事に両立させるノーラン監督は、本当に凄いと思います。

この構造・映像・エモさの3要素に分解して、好きなノーラン作品について語ってみたいと思います。「TENET」については、あと2回は観ないと把握できなさそうなので、初見およびパンフレットから拾った薄めの感想のみです。

※以下、ネタバレあります。特に「TENET」未見の方はご覧にならないでください※


「TENET」2020年公開 ※ネタバレあり※

「現在から未来に進む“時間のルール”から脱出する」というミッションを課せられた主人公が、第3次世界大戦に伴う人類滅亡の危機に立ち向かう姿を描く。(映画.comより)

構造:時間と空間が入り乱れて心地よい混沌の渦に落とされる。脳が興奮しすぎていて、鑑賞後にパンフレットを読みこんだ後、少し頭痛がしたほど(知恵熱的な…)。クライマックス、0地点に向かうシーンあたりから本当にわけがわからなくなって、もうどうにでもしてくれー!と五体投地な気持ちでした。考えるな、感じろ。ほんとそれ。3回は観ないとわからない。むしろ何度でも、プロデューサーであるエマ・トーマスのように50回でも観たい。パンフレットを読んで「えっあのシーンのXXはXXなの!?」という驚きもあったので、考察サイトや監督のインタビューを読みこんで早く2回目を観ないとという気持ち。

映像:逆行と順行が入り乱れるシーン、本当どうやって撮影したんだ?という。ボーイング爆発シーンも凄いけど、私的に一番くらったのは2度のカーチェイスシーンなんですが、あれは一体どうやって撮影してるんだろう…!?フリーポートでのアクションもやばいです。ほんとどうやってあの動きを???観賞後、外に出て、道路を順行で進む車を見て、ちょっと違和感おぼえました。世界が変わるってこういうことか…と。

エモーショナルな場面:ラストのニール(ロバート・パティンソン)が全部持っていきました…ニール…おまえだったのか…!いつもいつも名もなき男(ジョン・デヴィッド・ワシントン)を助けてくれたのはおまえだったのか!あの最後の場面で、名もなき男とニール、お互いが素の表情を見せ合うのが、本当たまらないです。名もなき男、ずっとクールなタフガイだったのに、最後の最後、ニールとの対話でうっすら泣いてるのがたまらんかった…最後にエモさの爆弾に被弾したって感じです…やられた…!

そしてキャット(エリザベス・デビッキ)、美しかった…!彼女にしか出来ない役でしたね!憂いが付き纏う表情も、不自由な日々の中でも抑鬱されたエネルギーが沸騰寸前の目の光。何より立ち姿が壮絶に美しい。世界を救うキーマン的ポジション、ほかのどの女優さんが演じても、彼女のすらりとした姿が発するオーラには敵わないでしょうね。過去?未来?の彼女が「自由で羨ましい」と言っていた「クルーザーから飛び降りた女」は彼女自身だった…とわかったシーン、ちょっとぞくっとくるほどエモかったです。

*パンフレットは読み応えがあって最高でした!ノーラン監督のインタビューや逆行の図解もありがたかったのだけど、個人的に大ヒットだったのはセイター役のケネス・ブラナーのインタビューです。マイケル・ケインの一言おもしろすぎる笑笑


「ダンケルク」2017年

史上最大の救出作戦と言われる「ダイナモ作戦」が展開された、第2次世界大戦のダンケルクの戦いを描く。ポーランドを侵攻し、そこから北フランスまで勢力を広げたドイツ軍は、戦車や航空機といった新兵器を用いた電撃的な戦いで英仏連合軍をフランス北部のダンケルクへと追い詰めていく。この事態に危機感を抱いたイギリス首相のチャーチルは、ダンケルクに取り残された兵士40万人の救出を命じ、1940年5月26日、軍艦はもとより、民間の船舶も総動員したダイナモ作戦が発動。戦局は奇跡的な展開を迎えることとなる。(映画.comより)

構造:陸海空の3つのシーンが、速度を変えて(映像上では)同時進行する複雑さ。初見はただただ圧巻の映像に呑み込まれていましたが、「重なる!」と気づいたシーンの鳥肌感といったらなかったです。クライマックスで3者が重なる場面、堪らないです。

映像:やっぱりスピットファイアの戦闘シーン!この作品だけ、大阪のエキスポシティ109のIMAXで観たのですが、まさしく新世界というか、自分も空と海の狭間で飛んでいるような錯覚をおぼえました。鳥肌モノ。

エモーショナルな場面:ドーソン氏(マーク・ライランス)が「スピットファイア。英国が誇る戦闘機だ」とつぶやいた瞬間に背後からスピットファイアが頭上を抜けていくシーン。たまらないですね…。ボルトン海軍中佐(ケビン・コスナー)が双眼鏡を覗いて「HOME.」と答えるシーンも痺れます。

そして最後の汽車での場面。新聞に掲載されていた、チャーチル首相のあの有名な演説を、トミーが読み上げるシーン。最後のシーンが、本当に最高なんですよねノーラン監督は…!

*と言いつつ、一番好きなシーンはスピットファイア乗りのコリンズ(ジャック・ロウデン)が助けられた第一声で「Good Afternoon.」と笑うシーンだったりする。


「インターステラー」2014年

世界的な飢饉や地球環境の変化によって人類の滅亡が迫る近未来を舞台に、家族や人類の未来を守るため、未知の宇宙へと旅立っていく元エンジニアの男の姿を描く。主演は、「ダラス・バイヤーズクラブ」でアカデミー主演男優賞を受賞したマシュー・マコノヒー。共演にアン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、ノーラン作品常連のマイケル・ケインほか。(映画.comより)

構造:地球と宇宙のみならず、次元をも表してしまうのが最高です。自分が知覚している世界、以上のものがこの世にあるのかもしれない、未知への期待。好奇心。興奮を呼び覚ましてくれる、特別な作品です。「ゴースト」と言っていた誇りまみれの部屋の謎が、実は主人公自身だったっていう…ゾクゾクする展開、最高です。

映像:本棚が、主人公ジョセフ・クーパー(マシュー・マコノヒー)と娘のマーフ(ジェシカ・チャステイン)を繋ぐ次元の間にあるシーン。美しいですよね…たしかCGでなく実写で撮影したとどこかで読んだのですが、本当に驚きます。「インセプション」といい…こだわりが凄すぎる。 

エモーショナルな場面:たくさん、たくさんあるのですが(なんせ展開が、これでもか、これでもか!!と波乱万丈すぎる)、一番エモかったのはやっぱりラストシーン。主人公は犠牲にならざるを得ないか…仕方ないとはいえ、無念すぎる、と思っていたら生還できて、しかも娘と再会できたシーン。神様…!と思いました。本当に素晴らしい場面です。あと、反抗期だった息子が、ずっとビデオメッセージを贈り続けるのが最高に泣ける。

*心残りは、今夏のノーラン祭りにおいて上映された「インターステラー」IMAX版を見逃したことです。悔しすぎる…!上映していた映画館が遠くて断念。。。一生引き摺るかもしれないこの悔しさ。


「インセプション」2010年

人が眠っている間にその潜在意識に侵入し、他人のアイデアを盗みだすという犯罪分野のスペシャリストのコブは、その才能ゆえに最愛の者を失い、国際指名手配犯となってしまう。そんな彼に、人生を取り戻す唯一のチャンス「インセプション」という最高難度のミッションが与えられる。(映画.comより)

構造:第4階層まである夢の入れ子構造。最高です。ルールは複雑で難解かもしれないけど、物語の大枠そのものは、ノーラン作品の中ではわかりやすい気がします。「ありうるな」と思わせる設定、スリリングな展開。大好きな作品です。

映像:テストされるアリアドネ(エレン・ペイジ)が、夢の中でどんどん街を作っていくシーン。ぐおーっと街が垂直、そして天上に聳える構図が衝撃すぎて。美しさと迫力が共存するのはノーラン作品ならではですよね…“誰も観たことのない映像”を観せてくれる魔術師だなと思いました。あと、第二階層にいるアーサー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)が、ぐるぐる回転するエレベーターフロアで戦うシーンも最高です!メイキング映像観て半端ないなと思いました。酔いそうだ。

エモーショナルな場面:実はコブ(レオナルド・ディカプリオ)とモル(マリオン・コティヤール)が第三階層で50年も暮らしていた、と知った時の衝撃たるや。私はインセプションをラブストーリーだと思っています。「ずっと一緒にいるって約束したのに!」というモルに、コブが「ずっと一緒にいたじゃないか」と返す。夢の中で、ふたりきりで、皺々のおじいちゃん、おばあちゃんになるまで連れ添っていた…とわかる場面。これまで観てきた映画の中で、最高のラブストーリー的クライマックスだと思っています。切なくて、美しい。


ダークナイト・トリロジー(3部作)

「バットマン ビギンズ」公開日:2005年6月18日
「ダークナイト」公開日: 2008年8月2日
「ダークナイト ライジング」公開日:2012年7月27日

「ダークナイト・トリロジー」の中で、唯一映画館で観たのは2作目の「ダークナイト」なのですが、3作目の「ダークナイト ライジング」の方が好きなんですよね。3部作いずれも、構造自体はわりとシンプルだと思います。なんせ原作があるし。

エモーショナルな場面としては、やっぱり最後の、カフェにいるアルフレッド(マイケル・ケイン)がブルース(クリスチャン・ベイル)を見つけて、お互いに微笑むシーンが最高ですよね。切なかった妄想が実現したのがもう、ハッピーエンドすぎる。アルフレッドが「ダークナイト」で、ブルース宛の手紙を燃やしたことを、「ライジング」の中盤で話して解雇される…という展開が、仕方ないにしてもすごく辛かったので…救われました。


どの作品も、まるでクリストファー・ノーラン監督の頭の中を覗かせてもらっている気分に陥ります。実写の映像として具現化してしまうところが凄い。しかも”まだ誰も観たことがない映像、世界観”をエンターテイメントとして昇華できているから大ヒットになり、潤沢な予算でまた凄い新世界を具現化できる…という好循環なのですよね。

最高のフィルムメーカー。同じ時代を生きることができて幸せです。映画を好きになってよかった!


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